15.温泉旅行(4) Sideレティシア
前回の話
イスラとレティシアは温泉旅行の最中である。
※この話は主人公のイスラではなく、レティシアの視点での話です。
「イスラちゃん、イスラちゃん」
「……うん?」
「寝ちゃったかな?」
「……ううん」
今日の夜はイスラちゃんとベッドの中でおしゃべりをしようと思って寝室に連れてきたけれど、イスラちゃんはベッドで横になると今にも寝てしまいそうな状態になってしまった。
今日は色々あったから彼女も疲れたのだろう。
「仕方ないか」
おしゃべりができないのは残念だけど、私ももう寝よう。
イスラちゃんを寝かせたキングサイズのベッドに私も横になった。
イスラちゃんは穏やかな顔で規則正しい呼吸を繰り返していた。
いつもはしっかり者のイスラちゃんだけど、今は年相応のあどけなさを感じる。
「やっぱりイスラちゃんは可愛いな」
初めて会った時から思っていた思っていたが、イスラちゃんは可愛い。
しかし実際に話をしてみると、彼女はその愛らしい見た目からは想像もできないほど知的で大人びた女の子だ。私も時々彼女が年下であることを忘れてしまうことがあるほどだ。
そんなイスラちゃんだけど、私と二人きりの時は焦ったり慌てたりすることがある。
私はそういったいつもとは違うイスラちゃんの顔が見たくて、つい困らせるようなことを言ってしまう。
「イスラちゃんは私のこと、迷惑に思ってる?」
「………………」
返事は返ってこない
イスラちゃんはもう寝てしまったのかな。
それともあえて返事をしていないのかしら?
イスラちゃんが起きてるかどうか確かめようと、サラサラとした黒い髪をそっと撫でてあげるとイスラちゃんはおもむろに私の体にしがみついてきた。
「あら、イスラちゃんってば大胆」
「……ん」
昼間に温泉で胸を触られた時のようにからかおうと思ったが、どうやら無意識の行動のようだ。
「イスラちゃんは甘えん坊だね」
「…………うん」
イスラちゃんは本当に眠りかけているみたいだ。
これ以上彼女を起こすようなことをするのはやめよう。
(今日のためにいっぱい頑張ってくれたんだよね?)
今回の旅行もイスラちゃんが私のために全て用意してくれた。
おかげで私は今日とても楽しい時間を過ごすことができた。
今までも楽しいことはたくさんあったけれど、今日の楽しさにはとても及ばない。
明日でこの旅行が終わってしまうことに寂しさを感じるくらいだ。
だけど、イスラちゃんはどうなのだろう?
私はとても楽しかったけれど、イスラちゃんは同じように楽しかったと思ってくれた?
「ねえ、イスラちゃんは今どんなことを考えてるの?」
彼女はもう寝ているのだから返事は返ってくるはずはない。
ほとんど独り言のつもりだったが、イスラちゃんはぼそりと呟いた。
「……このじかんが、ずっとつづけばいいのに」
「えっ!?」
イスラちゃんが起きたのかと思ったけれど、目を瞑ったまま静かに寝息を立てている。
どうやら寝ぼけて返事を返しただけのようだ。
だけど寝ぼけていてもそう思うくらいにイスラちゃんもこの旅行を楽しんでくれていたんだ。
「うん、そうだよね。イスラちゃんも同じだよね」
イスラちゃんも私と同じ思いを抱いていることが今はたまらなく嬉しい。
私はいずれアバン王子と結婚して王妃となるだろう。
だけど、せめて今だけはこの少女との絆を大事にしたい。
イスラちゃんは私にしがみついたままだが、私も彼女の背中に手を回して抱きしめてあげた。
イスラちゃんの背中から彼女の温もりを感じる。
(こうしていたら夢でも会えないかしら……?)
私もそっと目を閉じると段々眠くなってきたので、そのまま睡魔に身を預けた。
今日だけは幸せな夢を見られることを祈りながら。
次回投稿日は未定です。
ストックがすっからかんなので、3日以上は空くと思います。
なるべく早く投稿できるよう頑張ります。
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