14.温泉旅行(4) Sideイスラ
前回の話
イスラとレティシアは温泉旅行の最中である。
その後俺たちは宿の周囲を散策したり、夕食を楽しんだり、再び風呂に入ったりと旅行を満喫した。
レティシアは終始上機嫌であり、この温泉街を大層気に入ったようで
「私、お父様にお願いしてあの宿を買い取ろうかしら」
などと言っていた。
1泊金貨10枚の部屋を擁する宿を買い取り………?
金持ちのスケールが違い過ぎる。
しかし、レティシアが本当に宿の買い取りを行うにしてもそうでないにしてもナスル商会に話をすることにはなるだろう。
今回の旅行の手配でナスルには散々迷惑をかけたが、公爵家との関係を作るきっかけを与えたと思えば少しは借りを返せそうだ。
気が付くと夜も深まり、俺は激しい眠気に襲われていた。
ここ数日はこの旅行の手配も含めてとても忙しく、睡眠時間を削っていた上に、今日一日はレティシアとずっと一緒だったので、粗相があってはならないと気を張っていなければならなかったが、そろそろ限界が近い。
一方レティシアはこの時間でも元気そうだ。
「イスラちゃん、夜だよ」
「うん」
「夜はベッドの中で寝るまでおしゃべりしましょう」
「うん」
俺はもはや生返事しか返せていないのが自分でも分かった。
レティシアが無礼講を命じていなければとても失礼な振る舞いだったと言わざるをえない。
俺はレティシアに手を引かれて寝室に移動し、気が付いたらベッドの上で横になっていた。
ああ、ようやく寝られる。
そう思った時には俺はもうほとんど意識を失っていた。
レティシアの声が聞こえる気がするが、もはやまともに返事もできない。
レティシアのことは明日考えよう。
そして俺はフカフカのベッドに体を沈めて目を閉じた。
高級な宿だからだろうか、近くには手ごろな大きさの抱き枕が用意されていたので試しに抱きしめてみた。
柔らかく、温かく、そして良い匂いがする素晴らしい抱き枕だった。
今までで一番といっても過言ではない幸せな眠りだ。
(この時間がずっと続けばいいのにな)
そんなことを考えながら俺は眠りに落ちた。
今回の話は前編です。後編は本日夜に投稿予定です。
温泉旅行(4) Sideレティシア:今日の夜(多分午後11時過ぎ。ずれる可能性有)
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