残されたもの フキノトウ
急展開です。
この話は少々グロいので注意してください。
あと、この話は自殺を推奨するものではありません。
…時間、間に合った?これ。
◆◆◆◆◆優斗視点◆◆◆◆◆
僕が住んでいる所は普通の一軒家。
そしてこの町も特に何もない普通の町。
都会とも言えないし、田舎とも言えない。
開発途中で、鉄骨が剥き出しの建設現場があったりする。
そんな中途半端な、よくある街。
空を見ると灰一色に覆われている。
今日の天気はあまりよくないようだ。
待ち合わせ場所にいこうと、家を出て、道路まで出る。
だけれど、僕にはどこで待ち合わせなのか、何をするのか
時間は十時って言われたから九時半に出たはいいけどどうしよう。
悩んでると大通りの方から快斗と月花らしきヒトが歩いてくるのが見えた。
呼びかけながら手を振ると月花が気付いたようだ。
月花は僕がいることを快斗に話しているみたい。
快斗は、僕の方を見た。
その顔は驚愕と、困惑をぐちゃぐちゃに混ぜたような感情で染まっていた。
快斗が全速力で走ってくる。
そのまま僕を掴んで「大丈夫?!体調は?!」
なんて言い出した。
そのまま僕に「朝ご飯は食べた?自分のことをどう思ってる?」
とかわけのわからないことを言い始めた。
質問だと理解して、聞かれたことに正直に答える。
ここで正直に言わなくてもごまかしたり、嘘をついたりできたはずだけれど、僕に質問をかぶせるときの気迫に負けて反射的に本当のことを言ってしまった。
聞かなくても僕の考えなんて誰でものぞけると思うけど。
数問答えた後に月花がやってきて、
「快斗、そこまで。いったん落ち着いて。」
と快斗を宥める。
快斗は落ち着いてきたのか「ごめん」と素直に謝る。
「いいよ。でもなんでそんなことを聞いてきたの?」
僕は不気味に思った。
朝ご飯を食べてないっていうと快斗はいつも、呆れてそれぐらい食べなよって簡単な説教が始まる。
でも、今はそんなことに一切触れず。
ずっと何かを考えている。
考え事が終わったのか顔を上げて僕を見る。
「…はあーーじゃあ、いこっか」
僕の疑問には答えず、いや聞いてなかったのかも知れないけど。
「月花にどういうこと?」
と尋ねても、月花は知らない、わかんないの一点張り。
諦めて、先に歩いて行った快斗を追いかけた。
お出かけは特にイベントもないし、普通にショッピングをして、遊んで、終わり。
途中で快斗が誰かと話に行っていたけど、それだけ。
そのまま二人と分かれて僕は家に帰る。
分かれる前に快斗がくれたジュースを飲み込む。
「*****」
なにか聞こえたような気がした。
さあ、帰ったら何をしようか
「なんで楽しんでるの?」
頭が急に痛くなる。
ガンガンと頭の中で音がする。
そこで、僕は、ボクハ、ゼンブ、オモイダシタ。
灰色ノ鉄骨ハツメタイ
◆◆◆◆◆警察官視点◆◆◆◆◆
俺は灰田義博。
この街で働く、ちょっと不思議な経歴を持つ警察官だ。
俺が警察官になろうと決意したのは数年前、とある夢を見てからだ。
白い部屋で、幼い少女が生贄にされて、生贄にしたやつが死んで、俺だけがスープを飲む夢。
その夢がとてもむしゃくしゃした。
俺はあの少女よりも年上なのに助けられなかった。
だから、たくさんの人を助けられるこの仕事になった。
なったあとも不思議でよくわからない事件に巻き込まれることがよくある。
その度に二人の子らが俺を手伝ってくれて、事件を解決する事が出来ている。
そんな、たまに起きる摩訶不思議な事件を俺が担当させられる事が多いのだが
今日は休日だった。
天気もいいので公園でゆっくりしていようかと考えていた。
なのに、あいつらに呼び出され、いろいろやることが増えたり、半日潰れたりと散々な日だ。
帰りついでに住宅街のパトロールをしていると前からエプロン姿の女性が走ってきた。
今は午後9時57分。こんな夜に外に出かける姿ではない。
明らかに異常事態だ。
その女性を呼び止め、事情を聴く。
女性曰く息子が帰ってこないとのことで、そこで俺は協力するから特徴を教えてくれ
と言った。
特徴を聞いていくと今日あいつらと一緒にいた友達らしき人と一致していく。
写真もあるということで見せてもらうと、その友達そのままだった。
名前は一ノ瀬優斗。
その名前に少し違和感を覚えるがそんなことを気にする時間は無いと思考を切り替える。
あいつらならなにか知っているかもしれないと急いであいつらに電話をかける。
その結果はわからない。だった。
あいつらもいなくなったことは知っており、捜索しているが見つからないらしい。
あいつらは大通り付近と住宅街を捜索するから、俺は開発地区を探せと命じて電話を強制的に切る。
不服に思いつつ言われた通りに開発地に向かう。
当然、こんな時間にまだ成人していない子供が外にいるのは危険だが、俺はあいつらの強さを知っているので仕方なく聞いていないふりをする。
開発地区はたくさんの建築中の建物が所狭しと並んでいる。
この場所は管理がずさんなところが多く、子供が工事現場に入っている所を発見されることも少なくない。
一つ一つ見ていくがどこにもいない。
ここじゃなくて他の場所にいるのではないか。
他の場所を探した方がいいのではないか。
10時14分
そんな時、電話がかかってきた。
最初はあいつらかと思ったが、どうやら俺の部下からの電話のようだ。
なんでこんな時に!
愚痴を心の中で吐きながら電話に出る。
「なんだ!今忙しいんだが!」
「灰田巡査部長!自殺者らしき人が建設中のタワーに入っていくのが監視カメラで見えたんです!巡査部長の家は」
「俺は今、開発地区にいる!あのタワーだな?!了解!すぐ行く!」
タワーというのはこの街のシンボルになる予定の場所だ。
高くまで登れる仮設のエレベーターがある。
いつもは警備がそこそこいるのだが今日に限って警備の人数は少ない。
嫌な予感がする。
嫌な予感に従い、部下に命令する。
「あと、今から俺が言う特徴とカメラの人物があってるか答えろ!」
「は、はい!」
案の定、自殺者らしき人は一ノ瀬優斗本人だった。
あいつらにそう伝えると
「ヤバい!あいつの精神状態はもう廃人になっててもおかしいぐらいだ!決して刺激するな!僕らもすぐ行く!」
それだけ伝えて切ってしまった。
また、部下から電話がかかってくる。
「警官が今、エレベーターに乗って、上まで行ってるようです!」
「絶対に刺激するなと伝えろ!」
「それが、無線が繋がらなくて!」
「くそっ」
走る速度を上げる。
10時32分
タワーにつき、エレベーターに乗る。
上につくまでじっとしなければいけないのがもどかしい。
エレベーターが上に到着する。
一人の新人の警官が近くに立っている。
鉄骨の先には一ノ瀬優斗が立っている。
その目に宿すのは狂気と恐怖だ。
新人が叫ぶ。
「早くこっちにこい!話を聞く必要がある!」
精神が不安定な奴に命令形なんて完全に悪手だ。
新人を無視して、一ノ瀬優斗に向かって走り出す。
一ノ瀬優斗は嗤う。
「そうだよね。犯罪者は捕まえないと。殺人犯には死刑を与えないと。」
一ノ瀬優斗は後ろに倒れる。
手を伸ばす。
だが、その手は空気をつかむだけだった。
グシャ
そんな音が聞こえた気がした。
4月讌ォ蠕日10時56分
解説
優斗が正気に戻ったように見えますがまったく違います。
むしろ他の症状も出ているので、悪化しています。
彼は殺人犯は死刑じゃなければいけないと思っているようです。
元は違う考えだったのかもしれませんがそれはもう、わかりません
裏話
今回出てきた灰田義博。
この人は物語に関わらないモブと言ってもいいです。
ですが、彼の人生はだいぶ不思議なものです。
何せ彼は探索者ですから。
元ネタがわかる方は是非コメント欄へお書きください。
一言?
彼の考えは彼のものです。
誰しも人の考えを覗いたりはできないし、言葉にしてもそれはすべてではない。
本当のことは本人ですらわからないでしょう。
彼のやったことは絶対に世間では認められないでしょう。
でも、彼は不慮の事故で仲間を死なせてしまった。
それ自体に彼に非はないでしょうが彼はそう思いませんでした。
待望した死という罰も薬によって先延ばし。
でも、処罰は行わなければならないのです。
だから、この話は彼にとって必然だったのでしょう。
フキノトウの花言葉
「待望」「仲間」「愛嬌」「処罰は行われなければならない」