閑話 無防備な眠り姫(レオン視点)
短いですが本編に入れづらかったので小話程度に。
一仕事を終えて夜中に帰宅すると、自室に見知らぬ気配を感じた。
最初は暗殺者かなんかかと思えば、滅多にお目にかかれない美少女が俺のベッドの上で気持ち良さそうに寝ていた。
くぅくぅ寝息を立てる彼女の無防備さに、警戒するのも馬鹿らしくなって肩の力を抜く。なんだこれ、夜這いにしてはお粗末だし、何より知らない顔だ。
年齢は俺よりいくつか下……15か16ってところか。毛布を被っているので断定は出来ないが、そこそこメリハリのある身体つきをしている。少なくとも手足が長くて胸もそれなりにある。
そんでもって顔はとびきり良いとくれば、完全なる据え膳なわけだが……さて。
隣の部屋の婆さんに事情を聞いてもいいが、俺は俺でかなり疲れていた。
眠気と面倒な事情把握を天秤に掛けた結果「まぁ明日起きてからでいいか」と、眠る彼女につられるように、外套や靴を脱いでベッドに上がる。
仮に暗殺者だろうが、返り討ちにする自信はあった。
しかし予想に反して、彼女は横になった俺の方へ暖を取るようにすり寄ると、居心地のよい位置に収まってくる。丁度、俺の胸元辺りに顔がきて寝息がくすぐったい。
目を閉じていても分かる顔立ちの良さを至近距離で拝めるのは平時なら役得だが、今の状況では困惑の方が先立つ。
「……ホント、なんだこれ」
思わず独り言を漏らしながら、俺は俺で開き直って彼女を抱き枕代わりに包み込む。
柔さと温かさとほのかに香油の混じった彼女自身の匂いを感じて、貴族の娘かとあたりをつけたところまでが眠気の限界だった。
思いの外極上の抱き枕に満足しつつ、俺はそのまま眠りへと落ちていった。
彼女が起きたら、どんな声で、どんな顔で話しかけてくれるか、少しだけ期待しながら。
……次の日の朝、彼女に起こされるまで完全に寝入ったことに関しては俺の立場的には結構な失態だったが、まぁよしとしよう。




