【コント】『ざまぁ』好きオタク
A:ざまぁ好きななろう好き、ボケ
B:友人の隠れなろう好き、ツッコミ
場所ーー放課後の教室
Aは俯きがちに椅子に座っている。
そこへカバンを持ったBが走り寄る。
B「Aー! 帰ろうぜー‼︎ ってどうした? なんか元気ないね?」
A「……オレはもう……耐えられないんだ」
B「な、何が?」
A「隠したままじゃ……いられないんだ……!」
頭を抱えるA。
その必死の訴えに、Bは戸惑う。
A「オレ……オレは……実はな」
B「えっと、何? なんか悩み?」
A「そう、隠された願望が……もう抑えきれなくて……」
B「な、なんかヤバい話? ……とりあえず言ってみ?」
促されたAは、顔をガッと上げて勢いのままに言う。
A「〜〜〜〜(小声で何か言っている)」
B「いや勢いの割に声ちっちゃ⁉︎ その感じなら大声で来ると思うじゃん⁉︎ 何言ってんのか全然聞こえないよ⁉︎」
A「そ……そんなことはできないっ! どこでどんな反感を買って、敵意を向けられてるか……わからないだろ!」
B「お前、悪の組織とでも戦ってるの?」
Aの顔をぶんぶんと振り、周りを確認する姿にBは呆れる。
B「いやもう、お前がうなだれてる間にほぼ帰ったし……何を警戒してるか知らないけど、大丈夫じゃない?」
A「そういうふうに見せかけて、見えないところから見ているのは定番なんだ……!」
B「ストーカーじゃねーかっ⁉︎ え、マジで大丈夫?」
A「そして仕返しの時を狙っている……!」
B「お前がまずストーカーしてたのか⁉︎」
A「そしてオレが追放されるまで終わらないんだ……!」
B「警察呼べばいい? 救急車呼べばいい?」
A「しかたない、耳を貸せ!」
B「ん⁉︎ お、おう」
勢いに流されて、Bは戸惑いつつAに耳を近づける。
Bは口元を手で覆い、こそこそ話す。
A「オレ……ざまぁが好きなんだ‼︎」
しばし2人は固まり、沈黙が流れる。
B「……あ、まって。聞き間違えかもしれない。もう一回言って?」
A「ざまぁ小説が好きなんだ‼︎」
B「聞き間違えじゃなかったわ。時間損したー」
A「お前、ざまぁ小説を知っているのか……⁉︎」
Aが目を見開いて驚く。
B「なんでそこで驚くの? いや……あれでしょ? 最近『小説家になろう』で流行ってる、酷い事されてそれに仕返しする話だよね?」
A「宣伝は基本!」
B「待って。今の宣伝要素あった?」
A「説明は基本!」
B「うん……うん? まぁ説明しないと伝わらないし……」
A「なろうは基本!」
B「え……うんと、web小説と言えば、だよね。書籍化や漫画化やアニメ化作品の宝庫だし」
A「オタクは基本!」
B「んー……好きになったら一直線だから、アニメからでも他に遡って作品読んだりするよね。だから原作小説とか超燃える」
A「なろうの基本!」
B「えっと……ランキングと、タグ付け見とけば流行りは押さえられるよね」
A「オタクの基本!」
B「自分が好きなものへの語りが止まらない……ってなんなんだよこの話はっ⁉︎」
Bは怒りのあまり机を叩く。
A「オレがなろう小説が好きだと言う話だ」
B「そんな話だったか⁉︎」
A「そしてオレとお前が、なろうオタクだと言う話だ」
B「絶対違ったよね⁉︎ それ後から発覚したことだよね⁉︎」
A「お前なんか疲れてないか?」
B「お前のせいだよーーーー‼︎」
B、全力で叫ぶあまり肩で息をする。
B「……で? そのざまぁ好きなのがどうしたの?」
A「お、お前! それを大声で‼︎」
B「いやもう、気なんか遣わないから。遣うだけ無駄だから」
A「その余裕……まさか!」
B「ん?」
A「チート能力持ちなのかっ⁉︎」
B「は?」
A「お前が……オレにざまぁする者なのか⁉︎」
B「あん?」
A「オレがお前に、散々迷惑かけてきたから……!」
B「あ、自覚あるんだ」
A「その復讐に、オレをざまぁしようと……!」
B「うん。今急にざまぁしたくなってきたわ」
Bの真顔の発言に、Aが端にドタドタ逃げる。
B「はぁ、冗談だよ。小説読みすぎだろ。そんなことしないって」
A「は、はは……そうだよな。お前に限ってそんな……」
B「まぁ次はもっと上手くやるけど」
A、戻ってきていたところを引き返す。
B「……冗談だって。お前『なろう』読みすぎだよ」
A「そ、そうだよな……オレとお前に限ってそんな……」
B「殺意沸いたのは本当だけど」
A、すっ転ぶ。
B「はぁ……迎えに来てそんなことするわけないだろ」
Bは面倒そうにAへ手を差し伸べる。
A「お前イケメンか⁉︎ これはジャンル違いだぞ⁉︎」
B「……跪いて赦しを請え(ドス声)」
A「ざまぁが始まった⁉︎」
B「跪いても許さねぇ」
A「ざまぁだ‼︎」
B「なんで喜んでんだよ‼︎ ドMか⁉︎」
A「違います」
B「じゃあ何⁉︎」
Aはキリッとした顔でBを見つめて。
A「『なろう』好きのざまぁ好きです」
B「……ならざまぁらしくオチつけろよ」
Bに冷たく言われ、Aはしばし考えた後。
A「またオレ何かやっちゃいました?」
B「それはざまぁじゃねーーーー‼︎」
終わり