泥中の光
夜の帳が降りる。月光が優しく包み込むように照らす下を幽鬼のようにふらふらと歩く。
ー何者にも成れることの無い絶望、失意、諦め自己嫌悪にまみれている癖に自己顕示欲の強い空気の読めない人でなしー
其れが私に対する自己評価だ。碌でなしだった。性能が駄目でも誰もに愛される心美しく成りたかった。違う性能が駄目なんじゃあ無い。私が『努力』をしなかったせいでこうなったんだ。進学校に通っているというなけなしのプライドが崩れる。いや、とっくに壊れていた。あそこは優しい人ばかりだった。漫画でよくあるような勉強が出来て人を見下すような人はいなかった。優しく、一癖もある才能が有り、努力を怠らず中堅レベルから1位に成った人だっている。私は何もしていない。あれだけ出来る時間があったのに無意に無闇に消費して、浅ましい、醜い本性が照らされて、私はあの場所に相応しい人間ではなかった。息が苦しい。希望が無い。展望が無い。何となくで漂って親の金を食い潰す穀潰し。自己嫌悪の渦。
ー空を眺めるー
美しい星空だった。月も綺麗で…柔らかな風吹き、周りの喧騒など気にならない。あぁ、この世界は美しい。本当にそう思う。私には大きすぎて抱えきれない。そのまま駅のホームに入ろうとした瞬間。
衝撃、胸に激痛走る。強引に引き抜かれる感覚、どうやら私は駅で刃物を持って暴れ回っていた暴漢に気付かず、刺されてしまったらしい。立つことも出来ない程の激痛、今まで体験したことの無い痛みに思わず蹲りのたうち回る。『心臓を貫かれたら3秒くらいで死ぬんだっけ?』などとおぼろげになる意識の中、私なんかの為に身を粉にして働いてくれた母親への申し訳なさと解放されることに安らぎを覚え意識を手放した。
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