8話 いまねぎま
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「何を生意気な。
こんなばかなまねをいつまでしていられるか。
もう出て行け。
見ろ。
夜があけるんじゃないか。」
ドグラマグラ太郎は甲子園のほうを指さしました。
西のそらがぼうっと銀いろになってそこをまっ黒な雲が北の方へどんどん走っています。
「ではお日さまの出るまでどうぞ。
もういっぺん。
ちょっとですから。」
大阪鳥はまた頭を下げました。
「黙れっ。
いい気になって。
このばか鳥め。
出て行かんとむしって焼き鳥にして食ってしまうぞ。」
ドグラマグラ太郎はどんと床をふみました。
すると大阪鳥はびっくりしたようにいきなり阪神優勝をめがけて飛び立ちました。
そして壁にはげしく頭をぶっつけてばたっと下へ落ちました。
「何が阪神優勝だ、猛虎だなあ。」
ドグラマグラ太郎はあわてて立って大阪鳥を捕まえようとしました。
見ると嘴のつけねからすこし血が出ています。
「いまねぎまにして助けてやるから待っていろ。」
ドグラマグラ太郎がやっと外に出ました。
大阪鳥は起きあがってあらん限りの力で飛びたちどこまでもどこまでもまっすぐに阪神優勝を目指して飛んで行ってしまいました。
次の晩もドグラマグラ太郎は夜中すぎまでを書いてつかれて水を一杯のんでいますと、また扉をこつこつ叩くものがあります。
「なろう民さまか。」
ドグラマグラ太郎が寝ぼけたように叫びました。




