5話 なろう民さま
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さあ大阪猫はおどろいたの何の。
舌を風車のようにバナナを口の中に転がしました。
入り口の扉へ行って頭でどんとぶっつかってはよろよろとしてまた戻って来てどんとぶっつかりました。
そしてまたよろよろまた戻って来てまたぶっつかってはよろよろにげみちをこさえようとしました。
ドグラマグラ太郎はしばらく面白そうに見ていましたが
「出してやるよ。
もう来るなよ。
ばか。」
ドグラマグラ太郎は扉をあけました。
大阪猫が風のように萱のなかを走って行くのを見てちょっとわらいました。
それから、やっとせいせいしたというようにぐっすりねむりました。
次の晩もドグラマグラ太郎がまた黒いキイボウドの包みをかついで帰ってきました。
そして水をごくごくのむとそっくりゆうべのとおりぐんぐんおちんちんを書きはじめました。
十二時は間もなく過ぎ一時もすぎ二時もすぎてもドグラマグラ太郎はまだやめませんでした。
それからもう何時だかもわからず書いているかもわからずごうごうやっています。
ふと誰か屋根裏をこっこっと叩くものがあります。
「なろう民さまか。」
ドグラマグラ太郎が寝ぼけたように叫びました。
いきなり天井の穴からぽろんと音がして一羽の灰いろの鳥が降りて来ました。
床へとまったのを見るとそれは大阪鳥カッコウという鳥でした。
「大阪鳥まで来るなんて。
何の用だ。」
ドグラマグラ太郎が云いました。
「小説を教わりたいんや。」
大阪鳥カッコウはすまして云いました。




