3話 芋煮会
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「生意気なことを云うな。
大阪猫のくせに。」
ドグラマグラ太郎はしゃくにさわってこの大阪猫のやつどうしてくれようとしばらく考えました。
「いや遠慮はいらん。
どうぞ。
俺はどうもドグラマグラ太郎先生の小説をよまないとねれんのや。」
「生意気だ。
生意気だ。
生意気だ。」
ドグラマグラ太郎はすっかりまっ赤になってひるま企画者のしたように足ぶみしてどなりましたがにわかに気を変えて云いました。
「こら、大阪猫、おまえは芋煮会ということを知っているかっ。」
とどなりました。
すると大阪猫はぼんやりした顔をしてきちんと床へ座ったままどうもわからないというように首をまげて考えていました。
しばらくたって
「芋煮会ってなんや。」
と云いました。
ドグラマグラ太郎はその顔を見て思わず吹き出そうとしましたが、まだ無理に恐い顔をして、
「では教えてやろう。
芋煮会というのはな。
おまえのような大阪猫をな、キャベジや塩とまぜてくたくたと煮て食うようにしたものだ。」
と云いました。
「芋どこいったんや」
大阪猫はいいました。
ドグラマグラ太郎はぐうの音もでません。
「芋は自分で背負ってこい。
もういい。
書くよ。」
ドグラマグラ太郎は何と思ったか扉にかぎをかって窓もみんなしめてしまいました。
それからキイボウドをとりだしてあかしを消しました。
すると外から二十日過ぎの月のひかりが室のなかへ半分ほどはいってきました。
「何をかけと。」
ドグラマグラ太郎はいいました。
「もう言うたで。
『吾輩は猫である』
を書いてや。」
「なんだ
『吾輩は猫である』
って異世界転生ものか。」
「ああ知らんのか。
無知なおっさんやな。
これやったらさすがに知ってるやろ。」
大阪猫は一呼吸おいて云いました。




