12話 普通のドグラマグラ太郎
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それからあの猫の来たときのようにまるで怒ったエレファントのようないきおいでドグラマグラを書きました。
ところが読者はしいんとなって一生けん命読んでいます。
ドグラマグラ太郎はどんどん書きました。
モヨコが切ながってぺちぺち壁を叩いたところも過ぎました。
何べんもチャカポコした所も過ぎました。
小説が終るとドグラマグラ太郎はもうみんなの方などは見もせずちょうどその猫のようにすばやくキイボウドをもってマイペエジへ遁げ込みました。
するとマイペエジでは企画者はじめなろう仲間がみんな自信作を投稿した後の評価を待つような眼をしてひっそりとすわり込んでいます。
ドグラマグラ太郎はやぶれかぶれだと思ってみんなの間をさっさとあるいて向こうへ行きました。
人を駄目にするソフアへどっかりとからだをおろして足を組んですわりました。
するとみんなが一ぺんに顔をこっちへ向けてドグラマグラ太郎を見ました。
みんなやはりまじめでべつにわらっているようでもありませんでした。
「こんやはおかしな夜だなあ。」
ドグラマグラ太郎は思いました。
ところが企画者は立って云いました。
「ドグラマグラ太郎君、よかったぞお。
あんな雑な小説だけれどもここではみんな読んでいたぞ。
一週間か十日の間にずいぶん雑だが仕上げたなあ。
十日前とくらべたらまるでプチトマトとミニトマトだ。
やろうと思えばいつでもやれたんじゃないか、君。」
なろう仲間もみんな立って来て
「雑でよかったぜ」
とドグラマグラ太郎に云いました。
「いや、からだが雑だからこんなこともできるよ。
普通のドグラマグラ太郎なら死んでしまうからな。」
企画者が向うで云っていました。
その晩遅くドグラマグラ太郎は自分のうちへ帰って来ました。
そしてまた水をがぶがぶ呑みました。
それから大阪鳥カッコウの飛んで行った遠くのそらをながめながら
「ああ大阪鳥。
あのときはすまなかったなあ。
でもお前らの生態は業が深すぎるんだ。」
と云いながら親子丼を食べました。




