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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集共

元低レベルやりこみプレイヤーの異世界生活~命がけの縛りプレイなんてやってなれないハズなのに~

作者: 資笑

「いい加減、倒れてくれ……」


羽島 郁斗(はじま いくと)は、VRMMOゲーム【ファンダズム・クロニクル】のストーリークエスト制覇者のみが戦える、いわゆる裏ボスに対し愚痴る。


プレイヤーが350万人を超えるこのゲームにおいて、討伐者が100人に満たないこの裏ボス、もちろん討伐者はほぼ、上限であるレベル500である。


「お」


ひたすら攻撃を避け隙をついてカンストに程遠い固定ダメージの消費アイテムで体力を削る作業を繰り返し、かれこれ20時間超、ボス撃破のエフェクトが画面に走り、光の粒子が現れる。


「おっと」


郁斗は、経験値をドロップアイテムに変えるスキルを発動すると、効果音と共に光の粒子が集まり指輪に変化し、郁斗の掌に現れた。


「お、レアじゃん」


メインアカウントでは、2つ獲得していて、プレイ中のサブアカウントで現在も装備している指輪を感慨深く見る。


続いて、リザルト画面とMVP報酬が表示される。そして、少し間をおき喜びを爆発させた。


「おっしゃあ!!見たか?誰もいないけど、いやぁ、出来るもんだなズルして、アイテムと装備メインから持ってきたけど……」


ファンダズム・クロニクルの裏ボスの単独レベル1クリア。未踏の記録ではあるし、メリットもある。


「さあ、称号、称号」


ファンダズム・クロニクルには称号システムというものがあり、セットしていた称号によりレベルアップ時に成長ボーナスが入る。


基本的には1レベルにつき、全てのステータスが3上がり、3レベルで1のスキルポイントが得られる。


裏ボスの撃破報酬の称号【宿業の倒滅者】は貴重なスキルポイントのボーナスがつき、ステータスのボーナスも高水準な最強といわれる称号のひとつである。


「は?【極磨の器(きょくまのうつわ)】?」


一覧を確認すると、見慣れない称号があったので詳細を見やる。


「……なにこれぶっ壊れじゃん」


宿業の倒滅者を上回る成長ボーナスを誇る称号、郁斗は知らないが低レベル裏ボス攻略の報酬であり、これが初の獲得者である。


「とりあえず、付けとこ……」


その称号を付けた直後、景色が真っ白になり、羽島郁斗の意識が消えた。












気がつくと、木々に囲まれた広場に立っており、周りに多数の人が立っている。そのどれもが困惑の表情を浮かべていた。


(なんだ?何が起きた)


勿論、郁斗も困惑しており、辺りを見回した辺りで、その中心に佇んでいた女性が口を開く。


『お気の毒だけど、君達死んじゃった』


「は?」


『あ、私のせいじゃないよ?深夜に雷が落ちて、ゲームサーバーのデータと一緒に君達の頭がトンだだけだだけど、ちょっと死者が多いから、君達の魂をゲームに近いこの世界に呼んでみたんだ、能力はプレイ中のデータをベースにしたから暮らしには困らないと思うよ?でも、レベルが高い人ほどステータス再現が難しかったから、アイテムや装備は低レベルの人達しか再現できなかったけど大丈夫だよね?勿論、不正なもの使ってた人は呼んでないよ?良かったね』


(ん?低レベルプレイヤーだけアイテム引き継ぎ?確かに今の装備はいつもの初期装備に見た目を変えた豪華装備のままっぽいな……)


『あ、戻せって言うなら、戻すよ?植物人間だから目覚めるかわからないないけど』


「ちょ、ちょっと待ってくれ」


郁斗がこっそり、インベントリを確認し始めている間に、立て続けにまくし立てる女性に一人の男が話し掛ける。


『なに?』


「俺は……俺達は死んだのか?」


『うーん、体はまだ生きてるんじゃない?君達の言う浦島太郎になれる確率も数%はあるよ』


つまり、ほぼ死んでいると言う事である。


「っ……あんたは?」


『私?私はあなた達が言うところの女神ちゃん』


「女神様!?」


『ノン!女神ちゃん!あ、別に転移したからって使命とかないから安心して、強いて言うなら、あんまり一気に死なないでほしいな、魂の管理めんどくさいから、という訳で、ばいばい~』


「あ、まっ……」


男の呼び掛けにも応えずに、あっという間に消えた、女神『ちゃん』男は呆然としていると……


「よっしゃあああ!!」


「異世界転移万歳!!」


「俺の時代キター!!」


歓声が響いた。お約束のような異世界転移に概ね好意的な中……


(うへぇ、攻撃魔石、品切に近いじゃん……ポーション類とか大量だし成長強化装飾(グロウアクセサリ)やクエスト10のラスボスに快勝できる化物武装まであるけど……)



レベル1のサブアカウント故に装備とアイテムを唯一全て引き継いでしまった男は、こっそりため息をつく。


女神『ちゃん』が消えて、転移者達で情報交換を行い、ある程度グループがで来はじめ、周りの探索が始まり、近くに街があることがわかり、みんなで移動する事になった。

















「何してるんだ、俺……」


転移から1月がたった昼、郁斗は1人で海釣りをしていた。


「まさか、冒険者にすらなれないとか……」


日銭と身分証を手に入れるためにギルド職員に就職しようとして門前払いをうけ、仕方なく冒険者登録をしようとしたらレベル1なのを咎められ2月の初心者講習にねじ込まれてしまい、課題の採取を終えた後の時間潰しである。


「馴染みのアイテム屋は経営がヤバそうだったし」


郁斗が低レベルクリアに利用していた攻撃アイテムの需要が少なく、開発も進んでいないため専門店の品揃えが悪く経営が危うい状態だったのだが、郁斗が大量の素材と上級アイテムのレシピを渡したため、持ち直したのだが、そのお陰で女店主に信仰に近いレベルで感謝されている事には気づいていない。


「きわめつけは……お」


愚痴を続ける途中で、竿に当たりが掛かる。


「でかいな、よっと」


装備品でステータスを底上げした状態でも手応えがある獲物に興味津々な様子で10分以上竿と格闘する。


「……」


『キサマか我に歯向かう愚か者は?』


「……チェンジで」


『……』


釣り上げ(てしまっ)たのは、【カオスリヴイア】クエスト7のラスボスであり、討伐推奨レベル345の大物である。


『舐めるなよ、下等生物がっ!!』


「レベル1に釣り上げられた、雑魚の癖に」


『しぃぃっねぇぇぇ!!』


「レベル1の俺にすら勝てない雑魚は黙ってろよ」















「……また、やってしまった」

水属性のブレスを、装備の耐性で無効化して、状態異常と固定ダメージを駆使してカオスリヴイアをなぶり殺した後。手元にある水龍槍を見て膝をつく。


「また、無意識にEXPドロップを発動してしまった……」


ゲームプレイヤー時代にレベルを上げないためにモンスターハウスやスタンピードイベントで経験値をドロップに返還するアクティブスキルを脊髄反射で発動するようにした弊害で未だにレベルが上がらない事態に陥ってしまっている。


「流石に、レベル上げないと死ぬよなぁ……」




郁斗のレベルが上がったのはそれから、1月後の事だった








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