ファッティ救出大作戦-2-
「酸素が少ない」
シムが不安げにつぶやく。
「僕もファッティも酸素がなくても大丈夫だけど、タツキ、酸素マスクして」
言われるまま、タツキは酸素マスクをつけた。
「さっきので結構エネルギーを使ってしまった。僕が止まったらタツキは居住区まで一人で頑張って」
「え? シムは?」
シムの提案にタツキは不安になる。
「ご家族には連絡して居住区にいると伝えたから。居住区にさえいればいずれ迎えが来るよ」
「……俺じゃなくて! シムはどうするの?」
「僕はソーラーパネルがついてるから、運がよければ天気のいい日に自動充電する」
運がよければ……?
ということは運が悪ければ? 今のファッティみたいに岩の下敷きになってつぶれてしまうこともあり得るのだ。
タツキは頭を振った。
「シム! ファッティを地面に置いて」
「できないよ、そんなこと」
「いいから! 一回充電してからまた戻ろう。シムが止まったらどっちみちファッティは修理できないだろ」
強引に、タツキはシムの手からファッティを離した。
そして――
タツキはシムを背中に背負い、全速力で飛び出した。
一枚の翼では上手く飛べない。
すぐ、タツキは飛ぶのをやめて走り出した。
「無茶だよ」
「黙れ、喋るな!」
シムは黙った。
タツキは走り続けた。
なんとか居住区にたどり着いた。
息切れしながら、酸素マスクを外す。
背中のシムは止まっていた。
タツキは慌てた。
息を整えながら、だんだん冷静になってくる。
シムはさっきソーラーパネルと言ってた。
それって、光で充電できるってことじゃなかったか――
タツキは、ドームの中にシムを運び、電気をつけた。
これで充電できるだろうか。
やがて、シムは目を開けた。
* * *
ファッティの修理をするシム。
タツキは何か手伝えないかと見守っていた。実質、何も手伝えずただ見てるだけなのだが。
「充電切れてた時、夢見てたよ」
手を動かしながら、シムはそんなことを言った。
スリープモード時には夢を見るようプログラムされているのだが、充電が切れればまったく機能しないし夢を見てるはずもないのだ。
だが、タツキは機械のそんな事情を知るはずもなく、
「へー、どんな?」
と気楽に質問していた。
「なんだか、赤い大きな竜が空を飛んでるんだ。この星全体を見下ろせるぐらい高く空飛んでた」