ファッティ救出大作戦-1-
* * *
二人は爆発のような音を聞いた。
――どこかで火山が噴火したな。
シムは呑気だったが、タツキは違った。
ドーンという響くような揺れが起きる度に、タツキはそわそわ落ち着かなかった。
「ひょっとして、怖いの?」
「んなわけない!」
「そう?」
シムは立ち上がった。
「ゲートに行ったファッティから救難信号が来たから、見てくるね」
「……お、おい?」
タツキはシムの肩を掴んだ。
……怖い、と消え入るような小さな声で言った。
怖がってる自分がはずかしい。
「すぐ戻るから」
シムはファッティが気掛かりだった。
「俺も行く!」
「居住区の外は危ないよ」
タツキはシムの肩にしがみついて離さない。
結局、万が一を考え、酸素マスクを持参して出かけることにした。
居住区の外は、もっと揺れが大きかった。
地面に足がつくのさえ恐怖を感じたタツキの体が浮いた。
片方しかない翼で、シムの肩の高さまではばたく。
タツキはシムの肩にしがみつくようにしながら、飛んでいた。
この時、シムは自分の背中に翼が生えているような奇妙な感覚にとらわれていた。
* * *
ファッティは、岩の下敷きになっていた。
「痛そう」
シムの感想はどこか他人事だ。
タツキはぞっとした。こんな大きな岩が飛んでくるような危険な場所だったのかと改めて驚愕した。
ファッティは顔の部分の電光掲示板が点滅している。
「こりゃ、修理だな」
シムは岩をよせようと力を入れた。
タツキも地上に立ち、シムを手伝う。
なかなか重い岩だ。
「二人がかりでもムリか」
その時、シムの瞳が赤く光った。
「エネルギー持つかな」
シムは不安そうにつぶやく。
シムの力が倍以上に強化され、岩を軽々放り投げた。
「そんなことができるのなら……」
さっさとやってよ、と言おうとしたタツキだが、シムが言い終わる前に反論した。
「エネルギーを多く消費してね。下手したら充電切れになる。急いで帰ろう」
言葉少なく語ると、シムはつぶれたファッティを持ち上げ、歩き出した。
そのシムの肩をつかみ、タツキははばたきながらついていく。
シムは黙り込んでいた。
タツキはシムが怒ってると思っていたが、シムは燃料節約のため黙っていたのだった。