表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

     * * *


「居住区の中は酸素があるからね」

 居住区と呼ばれる地域を歩きながら、シムはそんなことを言った。

「外は火山ガスが噴き出したりしてね、とても人が住める状況じゃないからさ」


 シムの説明によれば、居住区内は温度が一定に保たれ、空気も調整されているんだという。


 居住区の中には畑があった。

 小麦を栽培しパンを作り、果物、野菜もわずかながら収穫できた。


 それを聞いて、危険な地上でも居住区の中は快適そうだとタツキは思った。



 居住区の中は殺風景という言葉がぴったりなくらい物が少ない。


 歩きながら、タツキは黒い岩の上に上がっていた。

 岩のようだが、上が平らでちょっとした段差くらいの高さだ。

 居住区の中にあるからには何か目的があって作られたもののような気もしたが。


「この段差、何?」

 タツキはその岩の上に座ってみた。

「さあ? 溶岩が固まったものかも」

「へえ」

 タツキは感心した。地上のことはよくわからない。



「シムは竜を見たことある?」

 座り込んだタツキはそんなことを聞いた。

 ここは竜の大地と呼ばれてる割には竜らしきものは見かけない。


「ないなー」

 シムが隣に座った。

「まったく見たことない」


「竜の大地って呼ばれるくらいだから、竜ぐらいいてもよさそうなのに」

 タツキはなんとなくシムの肩を抱いた。そうして遠くを見つめ空を見上げていた。




     * * *


 居住区の中は、ドームと呼ばれるおわんを伏せたような住居ばかり。

 そのドームの一つ。

 やけに寒いドーム。

 シムはわざと、そのドームを低温に温度調整をしていた。

 そこを一時的な冷凍室に使っていた。


 そこにかつてタツキの翼だったものがあった。

 

「この翼をなんとかタツキの背中にくっつけないと」




    * * *


 その日、タツキは飛んでみた。

 空ほど高くは飛べなかった。せいぜい地上数メートルがやっとの高さだ。


「なんとか帰る方法を……」

 シムは真剣に考えていたが、タツキはどこか後ろ向きだった。

 天空岩に帰って、シムと別れるのが寂しかったせいかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ