竜繭(りゅうまゆ)
* * *
タツキは、シムの用意した食事を食べていた。
スープにパンに果物。
「機械も、竜人と同じようなもの食べるんだな」
「だって、高性能だもん」
なぜかシムは得意げだ。
「タツキって果物好きなの?」
シムは真っ先にタツキが果物を食べたのに気づいていた。
「うん、まあ……」
「じゃあ、僕のも上げるよ。まだ手つけてないから。本当は僕、機械だから何も食べなくてもいいんだ」
「へ、へえ?」
「なんとなく誰かと一緒に食事したくなって」
と、シムははにかむ。
「そっかー」
タツキはシムを見た。
「ずっと一人でここにいたの?」
「一人じゃないよ。ファッティと一緒だよ」
すると、ファッティがそばに寄ってきた。
ファッティは、タツキの皿にスープのおかわりをよそってくれた。
「いや。でも、これ、ファニィだよな?」
天空岩にも似たようなロボットがいる。タツキも何体か見たことある。
「え? ファッティだよ」
とシム。
「いやいや、ファニィなの」
とタツキ。
「ファッティ」
「ファニィ」
「ファッティ」
「ファニィ」
すると二人は同時に笑い出した。
* * *
夜――
遠くで爆発のような音がした。
「また火山だ。よくあることだし、気にしないで」
シムが笑顔で伝えても、タツキは怖かった。
気のせいか地面が揺れてるような気がする。
地震なのだが、タツキにはその現象がわかってなかった。
恐怖心から、シムに抱き着くようにくっつく。
「僕、もう寝るから」
と、シムがタツキを引きはがそうとすると、タツキは恐々離れた。
「機械なら眠らなくても平気なんじゃないの?」
タツキのその言葉を聞いて、シムは申し訳なくなった。
「だよね。眠らなくてもいいタイプのアンドロイドもいるのに……」
シムの申し訳なさそうな顔を見て、タツキも申し訳ない気持ちになった。
「竜人だって眠るでしょ? この居住区にいれば安全だから」
「今日はもう寝よう。暗いのが怖いなら電気つけたままにしよう」
タツキは頷いた。
シムはベッドに入った。
前に椅子に座ったまま寝てた記憶があるが、正しくはベッドで寝るようだ。
「一緒に寝て、いい?」
「いいよ」
その言葉を聞いて、タツキは毛布を上げ、シムの体を抱きしめる。
「えっ!? 何?」
「竜人はこうやって寝るんだよ」
タツキの体はふわりと宙に浮く。
シムはタツキの体にしがみつく格好になる。
タツキの片方しかない翼が体を守るように丸くなり、バリアのような丸いものが放出される。
「竜繭ってんだ」
竜繭――人間でいうところの布団のようなものだろうか。
翼のある竜人は眠る時、体から竜繭を発し眠る。
驚いたように目を見張っていたシムだったが、やがて眠ってしまった。
安心したような寝顔に、タツキはどこかほっとした。
シムの寝顔を見ながら、タツキも眠ってしまった。