機械の少年
* * *
起きたタツキがまず気づいたこと。
背中の翼が片方無くなっていた。
「ごめんね? 手術ではつかなくて。でも回復魔法でいけるかも」
魔法?
よく考えれば、竜人のタツキも魔法が使えるのだ。
意識が朦朧として魔法を使う気力もなかったが、今なら……
だが背中の翼が治るなんてことはなかった。
シムも手をかざす。結果は同じだった。
「本当、ごめんねぇ」
タツキは、シムが謝るのが不思議だった。
そんなタツキにシムが問いかける。
「なんで、怪我したかわかってる?」
タツキは首を傾げる。
「火山が噴火したんだ」
「カザン?」
「天空岩にいたら、火山わからないか。火山というのは地上から噴き出す火の柱みたいなもの。溶岩やガスや岩、いろんなものを一気に噴き出して、タツキはそれに巻き込まれたんだ」
言葉もなかった。
しばしの沈黙の後、シムが口を開いた。
「タツキの家族には連絡ついたから。一応、無事を喜んでたよ。ただ……」
シムが何を心配してるのか、タツキはわかった。
「いいよ。しばらく帰らないから」
帰らないというより、帰れないが正しい。
「しばらく厄介になるよ」
タツキの言葉に、シムは困ったように頭を掻いた。
「いいけど……。地上には酸素が少ないし。火山もあるし、天空岩に比べて危険が多い」
「じゃあ、なんでシムは平気なの?」
「僕が機械だからかな?」
「機械?」
タツキはシムをまじまじと見た。
「そうだよ。シミュレーションドールって知ってる?」
知ってはいた。
詳しくはないが人間そっくりのロボットだってことぐらい。
「原型を作ったのはドワーフらしいよ。改良したのは人間で、カスタマイズしたのは竜人で…… シミュレーションドールのシムなんて安直な名前をつけられたって思うけど、僕は気に入ってる」
シムは笑顔だ。
タツキは、目の前のこの少年が機械だなんて信じられなかった。
ロボットって、もっと無機質なものだと思い込んでいた。
「本当だよ」
シムは髪の毛をかき分け、中からコードを引っ張り出した。
タツキはそのコードをまじまじと見る。金属のようなゴムのような素材だった。
「地上の探索でもさせかったみたいだけど。他にも色々役割ができちゃって…… 天空岩から落ちてきた竜人を助ける日が来るとは思わなかったけど」
その時、タツキの腹の虫が鳴った。
「食事の用意するね」
どこまでもお人好しな性格のようだ。