迷い人
* * *
その日、タツキは空を見上げていた。
空は青く澄み切っていた。
その時、シムが居住区の外に出ていくのが見えた。
「シム、どこ行くの?」
「すぐそこ」
居住区から五分ほどのところにもゲートがあった。
その時、扉の中から出てきた人物がいた。
タツキは心臓が飛び出るくらいびっくりしたが、シムは平然としていた。予測していたようだ。
* * *
扉から出てきたのは男だった。
がっちりした体形の赤毛の髭の男。
男は二人に気づくと、かなり驚いた様子だった。
「ようこそ、竜の大地へ。僕はここのゲートの管理人のシム」
シムは笑顔で出迎える。
男はしばし言葉が出なかった。
唖然とした表情で、シムとタツキを見ていた。
「ユーテム・テセティアだ。エルフの森に行きたいんだが……?」
それを聞いて、タツキはズッコけてしまった。
この地域には『エルフの森』どころか、森すらない。
森どころか木すら見ないし、ひょっとしたら居住区の外は草すら生えてないかもしれない。
ユーテムは、翼の生えた珍しい少年が大げさなジェスチャーでズッコけたものだがら、ますます怪訝な顔になった。
その表情をどう受け取ったのか、タツキは遅れて自己紹介をした。
「あ、俺はタツキ。見ての通り竜人だ」
するとユーテムは感心したように息を漏らした。
「竜人かー。だから竜の大地か……」
ユーテムは、感動だと呟いている。
タツキとしては、地上に竜が住んでる伝説があるから『竜の大地』と呼ばれてると思い込んでいたのだが……
「そう、ここは竜の大地。つまりお兄さんは来る場所を間違えたんだよ」
とシム。
「エルフの森は全然違うよ」
タツキはいつぞやのエルフの女の子を思い出していた。
「そうか……」
ユーテムは落胆したように、元来た扉へ引き返そうとした。
「お兄さん? 急ぐなら、ゲート繋げようか?」
シムが提案する。
「ん?」
ユーテムは期待に目を輝かせる。
「ちょっとばかし貰うけどね」
とシムも目を輝かせる。
ユーテムはそっとシムに耳打ちする。
「ルウ族のお金だけど、……ぐらいなら払えるが」
「じゃあ、決まり!」




