ついらく
そこは、竜の大地に浮かぶ天空岩。
そこに竜人と呼ばれる者たちが住んでいた。
その日、竜人の少年タツキは空を飛びながら地上を見下ろしていた。
竜人のタツキは背中に翼が生えている。
魔法も使えて、危険を顧みずよく一人で行動していた。
今日はいつになくワクワクしていた。
タツキは地上に何か大きな光のようなものを見た。
――きっと、あれは伝説の竜に違いない。
それが気になって、空へ飛び出し、地上を見下ろしていた。
その時、目の前に巨大な火柱が上がる。
熱と風圧がすごかった。
タツキは吹き飛ばされ、翼のコントロールを失う。
そのまま、地上に落ちてしまった。
* * *
竜人の少年――タツキは空を見ていた。
タツキは大地に仰向けで倒れていた。
竜人である彼の背中には翼があるはずだったが、痛みでその感覚がわからない。
今、彼の翼はどうなっているのか……
空はどんよりした曇り空。
今は昼のはずなのに、薄暗い。
――ここは死後の世界か?
手足の感覚もよくわからなかった。
体が思うように動かない。
タツキは暗い空を見ていた。
暗い雲の上に、自分の故郷があるはずだ。
* * *
「生きてる?」
突如、タツキの視界に子どもの顔が入り込んだ。
「!?」
驚いたが、声は出なかった。
「よかった。生きてた」
子ども……いや、子どもというより少年のようだ。
栗色の髪、茶色い瞳の人懐こい表情の顔だ。年はたぶん同じくらい。
「ここは間もなくガスが噴き出すんだ。痛いかもしれないけど手段を選んでられないから」
栗色の髪の少年は、タツキの腕を掴み、タツキの体を放り投げるようにしてその背中に乗せた。
「ファッティはそっちの翼を持って」
タツキは、その時はじめて自分の翼が落ちていたのに気づいた。
翼は焼け焦げたかのようにぼろぼろだ。
ファッティと呼ばれたのは黒いドラム缶のような物体。
足はキャタピラになっていて、手のようなアームがタツキの翼を持ち上げた。
「ガスが噴き出したら一大事だから、僕は先に行くね」
タツキを背負い、栗色の髪の少年は走り出す。
「大丈夫。絶対助けるから」