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オルドリクスの魔神器  作者: 上総海椰
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1-3 魔法長の敗北

「『オルドリクス』…ここまで…」

ドーラはその白い巨人をただじっと見つめていた。

目の前には氷河と同じぐらいの高さの巨人が立っていた。

白い装甲が橙色の光に照らされ、目だけが赤く光っている。

直後ドーラに向けられ『オルドリクス』は光を放つ。

ドーラは魔法壁ごと背後に吹き飛ばされ、背後の氷の中に障壁ごと押し込まれる。

巨人の前には一人の魔法使いが浮いていた。

「見るがいい」

…そう言ってモルトーアは『オルドリクス』の中に取り込まれていく。

押し込まれた氷の中からドーラはなすすべなくそれをただ見ていることしかできない。

「同化…そんな…」

ドーラはそれを聞いてはじめて絶望的な表情を浮かべた。

こうなればもはやモルトーアを助けることはできない。

「…同化したのは三人の『爵位持ち』に殺されそうになった時だ」

『オルドリクスの魔神器』と同化したモルトーアはゆっくりと語り始める。

「さすがに俺でもアデルフィの差し向けた『爵位持ち』三人を相手にすることは厳しかった。

善戦はしたものの、瀕死の状況に追い込まれた。そこでかねてから考えていた同化の秘術を使ったのさ」

元魔法長候補のモルトーアでも三人の『爵位持ち』相手にはさすがに厳しかったらしい。

ドーラは黙ってモルトーアの言葉を聞いていた。

「…一か八かの危うい賭けだった。ただ、あのまま終わりたくなかった俺はそれを選択する他なかった」

『オルドリクス』となったモルトーアはドーラに向けて語りつづける。

「結果は見ての通りだ。無かったはずの意志を持つことにより『オルドリクス』の回復力は群を抜き、停滞していた復元は加速した。

四百年時間をかけても三割までしか復元しなかったものが今ではこの通りだ」

モルトーアは右手を我が物のように自在に操って見せていた。

『オルドリクス』は指先から光線を出して、近くの氷河を破壊した。それは既に復元が六割を超えていることを示す。

「俺はオルドリクスに認められたのだ」

氷山が白い塵を吐き散らしながら倒壊していく。

「『同化』の術は…」

ドーラが知る限り、それは秘法中の秘法。部外者が容易にそれを知ることはできないはずだ。

「ここのラムードの魔術王の神槍の技術と同じものだよ。魂を契約し、融合させるもの。

その魔術王も『暁の三賢者』からその魔術を授けられたという話だ」

ドーラは苦い表情でモルトーアの言葉を聞いていた。

「ゾプダーフ連邦に伝わる秘法等に系統が似通っていたからな。この俺が編み出すことはそれほど難しくはなかった。

幸い時間もあったしな。もっともそれを自身に使う羽目になるとは思ってもみなかったが」

モルトーアは魔法長候補だった実力者である。

一時期ゾプダーフの禁書を閲覧できる立場にあったし、それを試せる時間もあった。

「終わりだよ、ドーラ。残りの魔力ももうほとんど残されてはいない。

最も残っていたところで、この『オルドリクスの魔神器』には傷一つつけられないだろうがな。

加えてお得意の空間転移も『オルドリクス』の力場の範囲では使えまい」

「それはどうだろうネ」

ドーラがそう言うと彼の周囲の光景が割れる。

光学魔法を使っていたのだ。ドーラは『オルドリクス』の背後で、魔法式を上空に展開し終えていた。

大きさはミイドリイクの十分の一ぐらいだが、とてつもない高密度の魔法式が空に描かれている。

「これで終わりだヨ」

ドーラは掛け声とともにその魔法を発動させた。

「カヘレッサ魔法式 第七式断滅魔『黒葬』」

魔法式が光り輝くと、柱となりその魔法は一瞬で『オルドリクス』のいた空間を黒く塗りつぶす。

それはかつてドーラがミイドリイクにて『パオベイアの機兵』ごと地下の『船』を消滅させた魔法。

異邦ですら禁呪指定を受けているほどのモノである。

それより規模ははるかに小さいが、足場ごとその巨人のいた空間を包み込む。

『パオベイアの機兵』を滅することのできた魔法である。

それは『三次』とよばれるもので次元ごとその質量体を消し去ってしまうもの。

「…これで…」

ドーラは胸を上下させていた。

限られた魔力の中で使える規模を絞って行うというのは、想像以上にドーラの体力を消耗させた。

「お前が光学魔法を使って、何か仕掛けてくることはわかっていた」

その闇の中からゆっくりとそれは姿をみせる。

『オルドリクス』はドーラに見せつけるかのようにその闇の中から現れた。

「『三次』まで無効化するのカ…」

『オルドリクス』が拳を振り上げ、ドーラに襲い掛かる。

ドーラは魔法壁ごと背後の氷壁に叩きつけられた。

魔法壁によりどうにか死にはしなかったのものの、周囲にあった魔力の塊である黒い球はすべて消え失せている。

それはドーラの手持ちの魔力が尽きたことを示していた。

「『オルドリクス』は対神兵器。他の二つの『アデンドーマの三忌』とは全くの別物だ。

例え完全体でないとはいえ、その体は魔法を受け付けない。たとえそれが『三次』であろうとも」

ドーラの周囲の魔法壁が薄くなって消えていく。

それはドーラの魔力が文字通り空になったことを示す。

「…魔力も尽きたか」

今行った魔法をミイドリイクで展開した際には、ドーラは幻獣王ローファから力を借りている。

今回は手持ちの魔力でそれを行った。

範囲は絞り、あの時よりも最適化はしたものの、それでも大魔法には変わりない。

そのために魔力の消費がとんでもなく高い。魔封緘三本などあっという間に消えてしまうほどのものだ。

足音を響かせながら『オルドリクス』はドーラに向かう。

ドーラは膝をついて『オルドリクス』となった友人を見上げる。

「…ああ、僕ではもう君を止められないんだネ」

それは魔力が完全になくなったことで打つ手が無くなったことを示していた。

ここでドーラは自身の負けが動かぬものと悟り、モルトーアは自身の勝ちを確信する。

「これが最後だ。ドーラ、俺とともに世界を変えるつもりはないか?」

『オルドリクス』と同化したそれは最後にドーラに問う。

「変えるのではなく、破壊するの間違いダロ。『オルドリクス』で行えるのは破壊だけだヨ。

そんなことをしても虚しいだけだ。…やめるんダ、モール」

「…残念だ」

それは二人の決別を意味していた。

モルトーアと一体化した『オルドリクス』が指先をドーラに向ける。

「…またあの世で会おう。我が友よ」

直後、『オルドリクス』から放たれた閃光がドーラのいた場所に到達し、ドーラを包み込んだ。

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