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オルドリクスの魔神器  作者: 上総海椰
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エピローグ

「以上が今回の出来事の顛末です」

フィアはエーダへの報告を終える。

「報告ありがとう。まさかこんな事態になるとは…本当に無事で何よりです」

そう言ってエーダは微笑む。

エーダのしぐさは柔和でありながら、どこか気品の漂うふるまいである。

振り返れば今回、魔族の中でも最強の存在と言われる『爵位持ち』が関与し、

さらに『オルドリクス』との戦闘にも参加することになった。

ヴァロは本当によく生き残れたと思う。

「それでヴィズルは…」

「ヴィズルさんはかなり負傷しましたが、槍の力で治りも早いとか。…元気でしたね」

復興事業が山積みの中、理由をつけてはヴァロたちと一緒にミョテイリに行くと聞かないヴィズルを臣下たちは必死に押さえつけていた。

まあこの分だとあの王様は大丈夫だろう。

「それでドーラルイは?」

第四魔王ドーラルイ。先ほどの話ではフィアは巧妙に伏せていたが、エーダはやはりその辺りもお見通しと言うことらしい。

「ドーラさんならまだラムードにいますよ。泣き言を言いながら後片付けをしてました」

あれだけの大規模破壊を何度も行っているために、その後始末で大変なのだという。

聞けばフィリンギに脅されてるのだとかなんとか言ってた。

それに関してはヴァロも同情するところだ。

「あの第四魔王が…」

エーダは目を点にすると、そのあと顔をそむける。

笑いをかみ殺しているらしい。どうやら笑いのツボにはまったようだ。

「ねえ、フィアさん、ドーラルイはあなたの目から見てどうでした?」

しばらくしてコホンと咳払いをしてヴァロたちに語りかける。

威厳などもうあったものではない。

「あの男は第四魔王。その気になれば世界と敵対し、未曽有の災害をもたらすこともできます

それを放置しておいてそれがないと言い切れますか?」

透き通るような声でエーダはフィアに問いかける。

「…」

「俺からもいいですか?」

あの男は死を望んでいた。あの時の言葉は嘘だとは思えない。

「ヴァロ」

クーナはヴァロを制止しようとするもヴァロは構わず続ける。

「あいつは災厄をまき散らす奴じゃない。

あいつは何で人間になったと思います?それは限りある人間の時間を生きるためだ。

長い時間の中で死んでいく友人を見るのが嫌だと言ってた」

あの男ドーラも一人のヒトだ。

あのすべてが終わった後の表情を見てヴァロはそう思った。

「カーナという魔女にやられた時も本当は死ぬつもりだったと話してた。俺にはそれがどうしても嘘には見えない」

カリアやコブリとは戦闘終了後、一緒に倒れるまで酒を飲んだ。

奴らもこの星に住む同じヒトだ。だとすれば人と魔族を分かつ境界線は一体どこにあるのか。

今回の一件を通してヴァロはそれを強く感じていた。

「私もヴァロと同じ意見です。エーダさん、この一件も、ミイドリイクの一件もドーラさんなしでは解決できなかった」

「ミイドリイクの一件?」

「その話ならばラフェミナ様から聞いてください」

「魔王の肩をもつというの?その行為は魔王崇拝者と呼ばれても仕方がないわよ」

クーナの表情が歪む。それはかつて自身の結社がおかした罪でもある。

下手をすれば討伐の対象になりかねない。

だがフィアは引く様子も見せない。

「構いません。ドーラさんは私たちの仲間です」

気まずい沈黙がその場に流れる。

「…この問答も懐かしいわね」

小さく誰にも聞こえないようにエーダは漏らした。

「…あなたには負けました。ミイドリイクの一件はラフェミナ様に聞かないといけないわね。

ドーラルイのことは私は聞かなかったことにします」

ヴァロとフィアは安堵する。

エーダはヴァロに目を向けた。

「ヴァロさんあなたを見てるとかつての私の友人を思い出します。

もし私があのとき友人の言葉に耳を傾けていればもっと違った道があったのかもしれないわね」

エーダは微笑みをこぼした。

どこか悲しげなその笑みをヴァロは美しいと感じた。


「それで五人の魔族は?」

エーダは話題を変える。確かに魔族たちの動向も気になるところではある。

「魔族はコブリ、カリアの二名を残してゾプダーフに戻るとのことです」

今回の後始末に魔族からはもっとも傷が少なかった二人が選ばれた。

アデルフィへの報告と傷を負ってしまったために瘴気の多いゾプダーフで回復した方が早いという。

ヴァキュラの傷の具合はよくわからなかったが、ジーリアは右半身を布で覆っていた。

エドランデに至っては右腕が二の腕までぐちゃぐちゃに潰されたようになっている。

人間ならば右腕切断ものだが魔族たちには残っていれば回復する手段があるという。

そこらへんは詳しく聞かなかったが。

「人間界を侵略する意志はないと」

「はい。彼らには侵略する理由も意志もありません。このまま放っておいても問題はありません」

フィアは断言する。

「どのみち敵対したところでこちらから何もできないんですし。仲介はあの男に頼んでいます」

それが大陸における現状でもある。

違法と呼ばれるゾプダーフ連邦は人間界と国交をもっていない。

ゾプダーフは国交のない隣人なのだ。

「そうそう、フィアさんにはトラードの聖堂回境師の就任式への招待状が来ています」

エーダは懐から一通の手紙を取り出した。

「招待状…」

フィアは少しだけ驚いた様子だ。

「数日前に届いたのですが。新しく聖堂回境師に決まったミョルフェンが是非にと。

それにしてもここにいるのを探し当てて手紙を出してくるとは…ずいぶんと気に入られているみたいですね」

三人は顔を見合わせる。

どうやら帰り道のは西側のリブネントルートではなく東側のトラードルートになりそうだ。

大陸東部の出身者のココルは喜ぶだろうか。

「私からは以上よ。正直フィアさんとはもう少しお話をしたいけれど

すぐにトラードに立たなくてはならなくては就任式にまにあわないでしょう」

にこりと微笑む。

「それとヴィズルさんから言付かってきたのですが…」

「あの人から?」

一瞬エーダの目が輝いたのをヴァロは見逃さなかった。

かなり心待ちにしていたらしい。

「傷が治ったらすぐに向かう。報酬を忘れるなと」

その言葉にエーダの顔が耳まで真っ赤に染まる。

「報酬?」

フィアもクーナも意味が解らず疑問の声を上げる。

それを唯一知っているヴァロは苦笑いをかみ殺しながらそれを聞いていた。

「こちらの話です。と、とにかく今回のことは助かりました」

エーダの恥ずかしがる姿は普段とのギャップもありかわいらしかった。


「そうそう一つ聞いてもよいかしら?」

さりぎわの扉の前でフィアは足を止める。

「フィアさん、あなたの会っていない聖堂回境師はあとだれ?」

「すべて会いましたが?」

質問の意図が読めずにフィアは首をかしげる。

「そう」

エーダはそれを聞いて目を細める。

フィアは一礼するとその部屋から出て行った。


「ラフェミナ様は決めたのね」

エーダはさっきまで話していたその小さな後ろ姿を思い出していた。

「本当にあの子が我々の希望足りえるのかしら?」

エーダは立ち上がり

「どうしてあの子といい、ラフェミナ様といい、ルーシェといい、あの魔王をかばうのでしょうね」

失った友人のことを思い出し、どこか寂しげにエーダはつぶやく。


ヴィズル王と南方より来たりし八人の英雄譚。

二人の魔法使いと一人の魔剣使い、そして五人の魔族たち。

それらとラムードの人々が協力し、北の地にやってきた魔神を倒したという。

それはやがて吟遊詩人たちが好んで口ずさむ一節となっていく。


『オルドリクスの魔神器』編終了。面白かった。

ヴィズルとかヴァキュラとかまた大暴れさせたいなぁ。

今回に関してはオルドリクス相手でヴィズルは本来の強みを出し切ってない。

ジーリアの『魔弾』もかなり応用効くんだけどねー。

エーダとヴィズルの恋の行方も…書きたいけどかけないやw


次からようやく魔王戦争編に突入です。

復活するのは第五魔王ポルファノア。

黒狼や人間界の魔族たち、『真夜中の道化』やあと一人とんでもないのが加勢します。

ある意味でその戦いは今回以上の規模になるという。

大陸全土を巻き込んだ戦いがはじまろうとする中、フィアの出す答えとは?

クファトスサイドもいよいよ動き始める。激動の魔王戦争編。

さあ楽しむぞー。

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