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オルドリクスの魔神器  作者: 上総海椰
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7-1 聖剣の力

開いた空間の裂け目から無数の光により雪原は焦土と化していた。

地面からはいくつもの煙が立ち上り、その周囲には赤茶けた土しかみえない。

魔術王の吹き飛ばすという選択は間違えていない。


一つ誤算があったとすれば、同化した魔法使いは一流の魔法使いだったということだ。

…モルトーアは魔法長筆頭候補。

それを取り込んだ『オルドリクス』は魔力さえあれば、巨大な力を持つ自身を移動させるほどの転移式を編むことは可能だったということ。



ヴァロたちは『オルドリクス』の前に立ち塞がる。

「行くぞ、ラウ」

ヴァロが剣を大地につきさすと、魔剣ソリュードがその力を解き放つ。

剣を大地に刺した場所から『棘』を持った蔦が大地を覆っていく。

その蔦はすごい勢いで『オルドリクス』を包み込んでいく。


ここへ来る少し前のことだ。

「ヴァロお前何か言いかけてたよな」

カリアが走りながらヴァロに聞いてくる。

「…ああ」

「言ってみろ。無策で『オルドリクス』の前に飛び出すよりははるかにいい」

カリアとコブリは足を止める。

ヴィズルやヴァキュラですら『オルドリクス』に歯が立たなかった。

今の三人でとても歯が立つとは思えない。

「この魔剣ソリュードはカフルギリアの力を受け継いでる。

聖剣カフルギリアの力をひょっとしたらその力も一部使えるんじゃないか?」

カリアははっとした顔でそれを聞いていた。

「…いけるかもな。ミイドリイクから異邦に帰ってから調べたんだが、

『棘』の聖剣カフルギリアはかつて拘束用の力を持った魔剣だったのだそうだ。

カフルギリアの力は魔王軍にも脅威だったと文献にあった。巨獣マーデリットもそれに倒されたのだとか」

「拘束して倒すのか?」

コブリが疑問を投げかける。

「文献にはそう書いてあった。実際に見たもので生き残っている者はいない」

いまいちわからない。拘束してどうやって倒すというのだろう。

「とにかく拘束出来るってことはあの『オルドリクス』に対して有効な手かもしれない」

『ミイドリイクのアレか』

ラウが語りかけてくる。

ミイドリイクで一度聖剣『カフルギリア』は『パオベイアの機兵』の拘束に力を使っている。

解放後、聖剣カフルギリアは消滅したが。

「ラウ…できそうか?」

『やってみる』

ヴァロは地面に足をつけると立ち止まり目を閉じ蔦のイメージする。

するとヴァロの魔剣から光でできた蔦が作り出された。

「おお」

『…ヴァロ、そのまま剣を地面に突き刺せ』

「わかった」

ヴァロがラウの言った通りに剣を地面に突き刺すと、その光の蔦が無数に現れていく。

それは勢いよく周囲に広がっていく。

ドーラがどうして魔剣の調律を行ったのかわかった気がした。

ドーラはこれを見越して調律を行ったのだ。

「ヴァロ、剣を抜け」

カリアが遠くで叫ぶ。

カリアとコブリはヴァロから距離を取っていた。

「出来そうか?」

『ヴァロにまかせる、ただし慣れてないし、あの魔神を拘束するほどのものとなれば力の残量から見ても一回だけだ』

「わかった」

ヴァロはラウの言葉に頷いた。


『オルドリクス』に傷こそ与えられないものの、足が止まる。

ヴァロの持つ魔剣は『棘』の聖剣カフルギリアのそれと同じモノを再現していた。

『オルドリクス』は振りほどこうともがくもそれを振りほどくことはできない。

その蔦の中から抜け出すことが不可能とわかると『オルドリクス』は口元辺りに力を凝縮し始める。

それはヴァロではなく、天に向けられていた。

何かとてつもない攻撃が来ることをヴァロたちは予感する。

『いいか、聖剣の力は不完全だ。蔦は剣を抜いたら消える』

「わかった」

ヴァロは剣とともにその場にとどまる。


「カリア、コブリ。魔剣が大地から離れないようにしてくれ」

カリアはヴァロの周囲を『魔装』で包む。

「了解」

コブリは接近して攻撃を打たせまいと拳打を繰り出す。

接近しているために『オルドリクス』の拘束の薄い右腕の攻撃をまともに受けている。

「まだまだぁ」

血まみれになりながらもコブリは『オルドリクス』に必死に打撃を加え続ける。

傷は与えられないものの『オルドリクス』はそれにより光が放てない。

だがコブリの抵抗もむなしく『オルドリクス』がそれを天に向けて放つ瞬間は訪れた。

口から空に無数の光線が空に向けて放たれる。

それは先ほど空間の亀裂から攻撃してきたものだ。

『オルドリクス』が何をしようとしているのかヴァロたちは一瞬で理解する。

どうやら自身ごと蔦を攻撃するつもりのようである。

『オルドリクス』の装甲は破壊できないことを利用した広範囲の無差別破壊。

カリアはそれをいち早く理解する。『魔装』に力を集中させ、それが降ってくるのを待つ。

しばらくして周囲が見えなくなるほどの光の雨が周囲を襲う。

『オルドリクス』の攻撃により地形がみるみる変わっていく。

カリアは『魔装』でそれを必死に受け続けた。


ガガガガガガガガ


魔装の隙間から見える景色が白く染まっていく。

頭上でカリアの『魔装』に『オルドリクス』の攻撃が絶え間なく激突する音が聞こえてくる。

この状況、コブリへ気をかけている余裕などない。

もし魔装を貫通し、その光がヴァロたちに降り注げば待つのは確実な死だ。

『魔装』が解けないことをただ祈ることしかできない。

ヴァロにはその時間が永遠に等しく思えた。


『オルドリクス』の攻撃にさらされても、魔剣ソリュードの作り出した蔦は全くの無傷である。

その蔦の下は地面がえぐられている。

『オルドリクス』の攻撃を透過したのだ。

どうやら対象以外にはその蔦を破壊することはおろか、触れられなかったようだ。

「…す、すごいな。対象以外に触れることはできないのか…」

カリアの目は血走っている。

それならば拘束しても対象への攻撃は可能と言うことになる。

拘束した上で一方的な独壇場になるということだ。反則級の能力である。

『棘』の聖剣カフルギリア。

本来の力はどれほどのものだったのか。


『オルドリクス』はヴァロに狙いを定める。

次は蔦ではなく術者にその矛先を向けたようだ。

「…こいつは必ず俺が守る」

ヴァロの前にカリアは立ちはだかる。カリアはここまで何度も大技を繰り出している。

カリアの魔力も気力も限界に近い。

『魔装』の維持と疲労で、気を抜けばいつ倒れてもおかしくない。

カリアの胸にあるのは少女への誓いである。


この男は殺させない。


目の前にはオルドリクスが光線を今にも放たんと狙いをこちらに定める。

カリアは残る力を振り絞り、目の前に『魔装』による黒い壁を展開させる。

カリアが『魔装』を展開させるのに全身から魔力を振り絞っている。


ヴァロたちが死を覚悟した時、その脇から槍を携えた一人の人影がオルドリクスへ歩み寄っていく。

「ヴァロ君、よくやった」

それは人類最強の兵器である神槍の持ち主。

ただその姿は不意打ちにさらされ、再生が追いついていないのか、全身、血まみれである。

「行くぞ、『オルドリクス』」

ヴィズルは構えを取る。

『オルドリクス』が放った光線をヴィズルの槍の一撃が迎え撃つ。

神槍と同化したヴィズルと『オルドリクス』との力比べ。

それは北の大地を白く照らし出す。

「ぬおおおおおおお」

血まみれのヴィズルが雄たけびを上げる。

少しづつヴィズルが押し勝っていく。出力では神槍の方が上らしい。

「いけっ」

ヴィズルが競り勝ち、『オルドリクス』はその攻撃をまともに食らうことになる。

『オルドリクス』の頭部に神槍『エアリア』攻撃が直撃する。

「やったか?」

煙の中から現れたその姿に傷は見られない。

綱引きには競り勝つも、『オルドリクス』は全くの無傷の様子。

その上、あろうことか第二波を繰り出さんとさえしている。

「化け物が…。いいだろう。神槍と魔神器の力比べだ。こっちの体が壊れるまで付き合ってやるさ」

ヴィズルは憤怒の形相でそれと対峙する。体の節々から血しぶきが上がる。

それは国主としての意地か、もしくは彼自身の闘争本能かはわからなかったが、

傷まみれになりながらも一向に闘志に陰りはみられない。

神槍と幾ら同化したとはいえ、体への負担は無いわけではない。

「…ヴィズルさん」

「ここは任せろ。ヴァロ君はアレの足止めに専念してくれ」

『オルドリクス』は第二波を放つ。ヴィズルも負けじと槍の力を解き放つ。

圧倒的に不利な状況の中で綱引きの第二幕が始まる。


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