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オルドリクスの魔神器  作者: 上総海椰
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6-2 神槍エアリア

今から二百年前の話だ。

北の地には少しずつ人が流れ込むようになっていった。

北の地は過酷な環境に加え、幻獣王フィリンギの眷属をはじめとし、

屈強な部族や異邦から流れてきた魔族なども存在したためにその勢力図は日々変わっていた。

そんな中、北の地に流れ着いた一人の魔術師が一匹の狼と出会う。

それは必然でもあり、運命でもあった。

二人は意気投合し、その地の在り方の意見を数日にわたり交わし合う。

幾たびの夜が過ぎた朝、巨大な狼がその男の前に立つ。

その狼は幻獣王フィリンギの化身だったのだ。

「牙を与える代わりに汝がこの地を平定せよ」

かくてその魔術師はフィリンギから一本の牙を与えられる。

かくて契約は交わされ、その者は初代魔術王となり、フィリンギに代わり北の地を平定する。

『牙』の力は凄まじいものがあった。

その一撃は山すら砕き、氷で閉ざされた地ですらその氷ごと消し飛ばすもの。

振り回されれば己が国ですらも破壊しかねない危険なものでもあった。

そのためにより強い力を使うのではなく、より効率よくそれを使うことが求められた。

それから三代、その莫大ともいえる力を秘めた『牙』の制御を魔術王は三代にわたりひたすら行う。

初代の魔術王はその役を二代目に託し、託された二代目はそれをさらに鍛え上げ三代目に渡ったのだ。



「いけぇっ」

魔族たちの手により空中に巻き上げられた『オルドリクス』は宙で避けることが出来ずに直撃した。

ヴァロが視認できたのはそこまでだ。

衝撃波が地の氷雪を巻き上げ、視界を遮る。

次に槍の衝撃波によりヴァロは魔剣の障壁ごと背後に吹き飛ばされる。

鼓膜が破れるかと思うほどの音と、とてつもない暴風をまき散らしながらそれは進んでいく。

魔剣の障壁がなければその余波だけでもヴァロはけがを負っていただろう。

暴風と氷雪を巻き込んだ塵が収まるのを見計らいヴァロは空を見上げる。

空には雲を穿つ穴がぽっかりと空いている。

神槍『エアリア』の力のようだ。

都市に向けて放たれれば、城壁ごと都市を壊滅させてもおかしくはない。

それほどの一撃だった。

「エドランデ、ジーリア殿の協力に感謝する」

そう言い終わるとヴィズルは片膝をついた。

文字通り最強最後の一撃だったのだろう。

ヴィズルは立っているので精一杯といったようすである。

「倒したのか?」

ヴァロはヴィズルに問う。

「いや、倒してもいない。貫通もしてない。だがこの戦闘は我々の勝利だ」

謎かけのようなヴィズルの言葉にヴァロは頭を抱える。

「カッカッカ、見事なり魔術王」

背後でヴァキュラが笑い声を上げる。

理解していないのはヴァロだけのようだ。魔族たちはそれを知っている様子である。

「それは…」

ヴァロにはさっぱり理解できない。

ヴィズルは『オルドリクス』を破壊していないということになる。

それなのに戦闘は終了したという。

頭に一つの答えが閃く。

「そういうことか」

ヴァロは納得した。

「そうだ。壊せないというのなら、二度と戻ってこれぬ彼方まで吹き飛ばすだけのことだ。

放った一撃が尽きるのに力が吸収されたとしても尽きるまで吹き飛ばされ続ける。

推進力の魔力が尽きるころには我々の知らないどこか彼方にいることだろうな」

ヴァロの脇のカリアが答える。

ヴィズルは宇宙の彼方まで吹き飛ばすということを選択したのだ。

その光はすでに見えない。『オルドリクス』を宇宙の彼方まで運んで行った。

幾ら魔力を吸収されようが、彼方まで吹き飛ばされたモノが戻ってくることは物理的に不可能だ。

例え魔力をいくら吸収されようとも帰還できなければ意味がない。

次に戻ってくるまでに数百数千年単位の時間が必要になるだろう。

そもそもこの星に戻って来る手段があるのかすらも疑わしい。

ヴィズルは絶対破壊不可の魔神に対して未帰還という手段で対処したのだ。

「奴の未帰還により我々の勝利とする」

ヴィズルは同化を解き、槍を天に掲げる。

ヴィズルの片手には放ったはずの槍があった。

契約でその槍はヴィズルの魂とともにある。離れることはないという。

「脅威は取りあえず過ぎたな。これからが大変だ。ミョテイリに避難した民の帰還をさせなくてはな。あの姫様も何を要求してくるか」

ヴィズルは少しその状況を想像し微笑む。

「どうやら終わりのようじゃな」

魔族たちも張り詰めていた緊張を解いている。

ここにきてヴァロは戦闘が終了したことを実感する。

戦いは『オルドリクス』の戦闘不能となり終了したのだ。

ヴァロはふうと息をつき空を見上げる。

こうしている今も『オルドリクス』は、見知らぬどこかの空でヴァロたちから遠ざかっている。

これで終わったのだ。

気付けばヴァロの脇にはぼろぼろの『魔装』を纏ったカリアが立っている。

「ぼろぼろだな」

ヴァロは横にいるカリアに腕を出す。

「お互いにな」

二人は互いに口元に笑みを浮かべ腕をぶつけ合う。

そのとき不意に魔族たちの近くの空間が裂ける。

「なっ」

あまりに咄嗟のことに言葉にならない。

光の線がその空間の裂け目から無数に飛び出し、周囲を破壊していく。

それはヴァロたちのいた場所を埋めるように降り注いだ。

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