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オルドリクスの魔神器  作者: 上総海椰
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5-1 爵位持ちの戦い

北の地は白夜の期間に入っていた。

日が一日を通して一度も地平線に沈まない期間のことだという。

北の一部の地域ではその期間があるという。

現在『オルドリクス』のいる海岸からラムードに向かうには渓谷を越えていかなくてはならない。

『オルドリクス』の周囲に魔族たちが散っていく。

そしてその配置は驚くほど様になっていた。

「ドーラ殿、彼らに何を教えた?」

ヴィズルが疑問に感じドーラに問う。

数日間、ドーラはフィアの魔法の特訓をする傍らで魔族たちと地上で何か行っていた。

「連携と戦術をネ」

ドーラは簡潔に答える。

「相手がただの木偶なら数手でこちらの勝ちだヨ」

ドーラは冷ややかな眼差しで『オルドリクス』を見つめていた。

『爵位持ち』の個々の戦力は突出しているが、あまりに個が強すぎるために集団戦術というものに関して言えば

すぐれているようには見えなかった。

もしそんな化け物たちが連携と戦術を覚えたのだという。

敵であれば脅威この上ないが、味方であれば頼もしいことこの上ない。

「それは頼もしい。それでは先ずはお手並み拝見といこうか」

ヴィズルは腕を組みその立体映像を見下ろす。

「…相手がただの木偶ならネ」


「おい、止まれ」

カリアが声をかけるも『オルドリクス』はそれを聞いているのか聞いていないのか無言で歩を進める。

『オルドリクス』は低く大きな足音を立てながらラムード向けての歩みを止めない。

「聞こえないのか?」

カリアの肩にジーリアが手をかける。

「発声機能が失われてるにせよ、言葉を理解していないにせよ、警告を無視したということは攻撃されてもしかたがないよなぁ」

ジーリアが残虐な笑みを浮かべる。戦いたくて仕方がないと言った感じだ。

『魔弾』がジーリアの周囲に展開されていく。

ジーリアの魔力は『魔弾』。魔力を弾丸にして放出するモノ。

大抵の相手は瞬きもすることなく、ハチの巣になる厄介なものだ。

数千という『魔弾』が『オルドリクス』の全身を直撃する。

一発一発の威力は人間を分厚い盾ごと数人貫通できるほどだという。

直撃だったはずだ。それなのに『オルドリクス』外装に傷は見られないどころか、歩みを止めることすらできない。

「強化しているな、傷すらつかん」

ジーリアは苛立ち交じりにはき捨てる。

ジーリアにとって貫通することが当然だったためにそこまで考えたことがなかったらしい。

「カリア、やるぞ」

ジーリアは苛立ち交じりに叫び、再び『魔弾』を自身の周囲に展開させる。

一つ一つの『魔弾』がカリアの『魔装』に覆われ、幾千幾万の刃が現れる。

どれもが刃の形状を異にしている。

「魔法長によればさらにここで回転を加えると効果的だそうだ」

ジーリアがぱちんと指を鳴らすと一斉に回転が始まる。

「くらうがいい。『オルドリクス』」

超速の無数の黒刃が『オルドリクス』向けて射出される。

硬度を高め、さらに回転を加えている。

その貫通力ならば『魔弾』の数十倍になっているはずである。

それが『オルドリクス』にむけて一斉に射出される。

周囲の爆煙が消えると小さい穴だらけの中、『オルドリクス』だけは変わらずにそこにいた。

「これで無傷か、どれだけ硬度を上げてやがる」

ジーリアは険しい表情でつぶやく。

ドーラの提案したジーリアとカリアの二人の『爵位持ち』の合わせ技である。

この世界に現存する最硬の物質でも容易に貫通するほどのもの。

まともな生物ならば即死級の攻撃であり、この大陸で無傷なものなど幻獣王ぐらいのものだろう。


「次は俺だ」

すぐさま足元に移動したコブリが足元に攻撃を繰り出す。

コブリの扱う魔力は『魔振』という超振動。

振動の通じたものを粉々に破壊するというものらしい。

ヴァロと戦っていた時は空気を媒介して遠くまで飛ばしていたという。

今回は空気という媒介なしの全力の直撃。

コブリの魔力は振動による内部破壊を行うもの。

それはヴァキュラやジーリアとは別の力。

系統が違うからこそ『オルドリクス』に効く可能性がある。

「超振動打」

魔力による超振により相手の内部からの破壊。

喰らった生物は内部の血液が沸騰し、はじけ飛ぶ。

ただの物質であるならばダイヤであろうと粉々に砕け散る。コブリの最強の奥義である。

それをまともに受けても『オルドリクス』は何の反応も示さない。

「まじかよ」

コブリは眉をひそめる。

今までにこれを直に受けて無傷だった敵はいない。


「コブリ、引けっ」

カリアの魔装でつくられた巨大な黒い棍棒を振りかざす。

エドランデの能力は『魔功』という肉体強化。

エドランデの上体が数倍に膨れ上がる。そしてそれを振り下ろした。

エドランデの攻撃に大気まで震えるような錯覚さえ受ける。

ただの打撃だが『オルドリクス』は少しだけ身をのけぞらせた。

のけぞったところにすかさず上空から魔装で黒い鎧を纏った二人の騎士が斬りつける。

ヴァロとカリアだ。

ヴァロはカリアの『魔装』を纏っている。

二人の猛攻を『オルドリクス』は直に受けた。

「このまま押し込むぞ」

「おう」

なりふり構わずヴァロとカリアは『オルドリクス』に剣戟を加える。

ヴァロの魔剣はドーラによる調律が施されており、その力は魔剣を超えている。

ドーラに調律された準聖剣クラス後からはあろう。

そんな魔剣の纏う衝撃波だけでも相当なものになるのだ。

その上、魔力を使っているわけではないために吸収されることもない。

その横でカリアもヴァロに負けじと『魔装』による連撃を加える。

魔力の密度が高いために『魔装』は比較的吸収されにくいという。

二人の連携により『オルドリクス』はとうとう地面に背をつけた。

そこで突然二人は鎧ごと背後に引っ張られる。

ヴァキュラの魔力によるものだ。


直後、上空から巨大な黒い球が『オルドリクス』めがけて降ってくる。

『オルドリクス』それをまともに受けることになった。

「マーデリットを滅ぼした『棘』の聖剣…まさかその元所有者と共闘することになるとはのう」

氷壁の上からその状況を見ながらヴァキュラは小さくつぶやいた後、手で印を練る。

「この場を放棄するぞ」

「おう」

一斉に声を上げ、その場から退避を始める。

ヴァキュラは皆が下がったのを見計らい、印を締める。

すると黒い塊が一瞬で光と変わる。

黒い塊を構成していた魔力が運動エネルギーに変化したのだ。


北の地に轟音と共に光の柱が立った。

いよいよオルドリクスとの決戦スタート。

いろいろな連中が力を出し合いそれに対抗します。

ちな、参考までに『オルドリクス』はギルティのジャスティスみたいなイメージです。

よろしければお付き合いください。

これが終わればいよいよ魔王戦争編に入りまする。

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