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オルドリクスの魔神器  作者: 上総海椰
15/33

3-5 決闘

雪原でドーラとエドランデが対峙している。

ヴァロたちは幾人かの観衆とともにそれを見ていた。

間もなくドーラとエドランデの決闘が開始される。


その発端は少し前の会議でのことだ。

会議の場は荒れた。一言でいうなら魔族たちの我が強すぎるためだ。

あくまで個別に『オルドリクス』に対処しようとするエドランデに対し、

ドーラは策を持って『オルドリクス』に向かうことを主張する。

「ならば玉砕覚悟で『オルドリクス』に立ち向かうつもりなのカイ」

「玉砕かどうかはやってみなければわかりますまい」

「君も見ていたはずだヨ。おそらく次はあの硬度よりも固くなっているはずサ」

「それはドーラ殿の推測でしょう。我々もすべてを出し尽くしたわけではない」

「今回は敗北は絶対に許されナイ。なら可能性は少しでも多いほうがイイ。そうは思わないカ?」

こんな調子でお互いに一歩も譲らず会議は平行線をたどっていた。

「例えかつて魔法長と呼ばれようと今は違う。我々は我々のやりたいようにやらせていただく」

「エドランデ」

見兼ねてヴァキュラが声をかけるも、エドランデはヴァキュラの制止も聞かない。

どうも彼は策そのものを嫌っているらしい。

その上でできれば自身の手で決着をつけたいとも考えている様子である。

「なら君はどうすれば僕にしたがってもらえるのカナ」

ドーラはエドランデを見据える。

「我々を作戦に組み込みたければ我々に力を示して見せよ」

「それは君を倒せればいいということカナ?なら話は簡単だ」

ドーラの気軽な一言に一瞬エドランデの表情が動く。

会議の場は異様な雰囲気に包まれていた。

ラムードの武官たちも魔族たちの圧力に飲まれてしまっている。

「他に僕に従えないものはいるカイ?」

コブリが手を上げる。

「気に入らなきゃ腕ずくで我を通すのがうちらのルールだ。もし俺たちを従えたきゃ腕ずくがルールだぜ」

「私はドーラ殿の作戦に従う。ミイドリイクでその力は十分に見せてもらっている」

カリアは実際にミイドリイクでドーラの力を見ているためにドーラに従うつもりでいる様子である。

「フム、ジーリアはどうじゃ?」

意見が二つに割れたことでヴァキュラはジーリアに意見を求める。

ジーリアは頭の裏に手を回し、興味なさげにその会議の行方を眺めていた。

「私はどちらでもいいが…魔法長の力をみてみたい」

ジーリアの顔に亀裂のような笑みが浮かぶ。

「なら僕とエドランデで決闘をしようカ」

まるで散歩にでも行くような気軽な感じでドーラ。エドランデはそれに頷く。

「その決闘に私が勝てば一切の指示は受けぬ。オルドリクスの討伐は我々のみで行わせてもらう」

「それじゃ決まりダ。ジーリア、コブリもそれでいいカナ」

「ああ、万が一にもエドランデの奴を倒すことができれば俺もあんたに従おう」

コブリは腕を組みながら頷く。

「ああ、いいだろう」

ジーリアはそれを承諾する。

「それじゃ、君が人間ごときの魔法使いに負けたら僕の方針に従ってもらうヨ」

そうして会議は終わる。

その流れで会議のすぐあと、急遽二人の決闘が行われることになった。


ギャラリーが見守る中、その大地の上に二人は立っていた。

現行の魔族の『爵位持ち』と第四魔王の決闘と言うだけあって会議場にいたラムードの武官たちは全員出席している。

これほどの見世物は無いだろう。

ドーラはヴァキュラから魔力をわけてもらっていた。

「すまないのう、奴はモルトーアに個人的な恨みがあっての」

「構わないサ。衝突はいずれあると思ってたし、どうせあるのなら衝突は早いほうがいいと思っていたヨ」

そう言ってヴァキュラからドーラはヴァキュラの前から立ち去る。

「ドーラ」

「僕はこれだけでいいヨ」

ドーラはヴァキュラを背に決闘する場所まで歩いていく。

エドランデは腕を組みながらその場所に立っていた。

その姿は百戦錬磨の強者を思わせる。

「殺す気で来ていいヨ。そうしないと君は僕を認めてくれないダロ」

「なら遠慮なく」

エドランデは一礼すると全身に魔力を込める。

全身の筋肉が数倍に膨れ上がり、エドランデの周囲に魔力が溢れだす。

可視できるほどの魔力にラムードの武官たちから驚きの声が上がる。

『魔功』と言うものらしい。肉体強化を行う技術だと聞く。その鋼のような表皮には魔法でも傷をつけられない。


「ドーラさん大丈夫かな」

フィアは心配そうにつぶやく。フィアのつぶやきはもっともである。

相手はエドランデと言う魔族。

「エドランデってどんな魔族なんだ?」

ヴァロは脇にいるカリアに問う。

「エドランデは感知の能力に秀でた部族出身者でな。それ故に部族自体のそれほど力は高くなかったと聞く。

だが怖ろしいまでの鍛練を重ね爵位を持つに至ったヒトと聞く」

「あの魔族には私の魔法も全く効かなかった」

フィアの全力の重力魔法ですらエドランデの足を止められなかったという。

クーナも死を覚悟した相手らしい。

「突出した感知能力によりどんなまやかしも受け付けず、魔法の発動前に感知され、発動を待たずに潰される。

その上、大概の攻撃をはねのける鋼鉄の肉体。魔法使いにはこれ以上ないぐらいの相性の悪い相手だ」

ジーリアが楽しげに空の上から解説してくる。



「立会人はこのヴィズル・ラムードが務めよう。双方準備はいいか?」

ヴィズルが二人の間に立つ。

「その程度の魔力量で私に勝つつもりか?」

「まあネ」

ドーラの顔には余裕が感じられた。

「それを負けた理由にはしないことだ」

威圧するようにエドランデはドーラを見下ろす。

「それでは双方、戦闘開始」



どうやらドーラルイの出方を窺うつもりである。

何を仕掛けてくるつもりなのかわからず身構えている。

ひとまずドーラの出方を見る考えのようだである。

相手は一時期魔王軍の魔法長という地位を持った男。

さらにあの三人の大魔女と互角の攻防をしたという伝説まである。

単純にドーラルイの戦い方に興味が湧いたのもあるのかもしれない。

一方でドーラは魔力を両手に集中させていく。

ドーラに魔力の蓄えはほとんどない。それは人間に転生した為でもある。

ヴァキュラから魔力をもらったとはいえ、どう見積もってもその魔力量はエドランデの魔力量の十分の一以下。

まさに子供と大人の戦いである。エドランデは、感知能力を集中させ、瞬きもせずにその動向を見守る。

ただし魔法式を使う様子が見られれば、すぐさま間合いを詰めてその必殺の一撃を加えるつもりである。

エドランデの選択は魔法使い相手にその選択は間違えていない。ただしそれはただの魔法使い相手にはだ。

周囲の視線がドーラに集まる中、ドーラは動きを見せた。


パン


ドーラは魔力の籠った手を思い切り叩いた。

乾いた音が魔力とともに周囲に拡散し、周囲の者は耳鳴りのようなものを受ける。

ただし感知能力を全開にしていたエドランデは別だ。

ドーラは感知能力の許容範囲を大幅に超えた波を作り出していたのだ。

エドランデは感知能力を大幅に超えた波をまともに感知することになる。

暴力的なまでの情報量を受けエドランデの頭の中では景色が歪み、酔ったかのように地面が揺れ動く。

エドランデの目からは血が流れ出す。

「何のっ」

直後、エドランデはその雄たけびとともにドーラめがけて全力で跳躍した。

エドランデは頼みの綱のひとつの感知能力が麻痺した今、接近戦に持ち込み魔法式を使わせないつもりだ。

魔法使いとの戦闘を経験しているものだからこそできる選択である。

エドランデの拳が風圧を纏い、轟音と共にドーラを襲う。

「ドーラ」

ヴァロは思わず叫ぶ。

「大丈夫」

フィアが横からヴァロに告げる。

その拳はドーラの姿を捉えたかに見えた。

だがその拳は空を切る。衝撃波が暴風を伴い周囲に吹き荒れる。

エドランデの拳がドーラの体を透過する。

いつの間にか光学魔法を使っていたらしい。

「…魔法!いつの間に…」

魔法をすでに使われていたことにより、わずかにエドランデに動揺が走る。

「チェック」

その動揺を見逃さずドーラは背後からエドランデの心臓の上にひとさし指を当てる。

エドランデの皮膚から血がしたたり落ちた。

ドーラの指先には異様ともいえる魔力が込められていた。

一点集中した魔力に鋼鉄の体も傷をつけられるということらしい。

「お見事」

背後のドーラに視線を向け、エドランデは思わずその手際に感嘆の声を上げる。

「この勝負、ドーラルイの勝利とする」

カリアは大声でドーラの勝利を宣言した。

ドーラのあまりに鮮やかな手際に周囲はあっけにとられる。

感知能力の秀でたエドランデには普通ならば視覚を欺く魔法は効かない。

逆に視覚だけになったからこそ視覚を欺く魔法が効いたのだ。

「いつ魔法を?」

「手を叩いた次の瞬間にネ」

エドランデがドーラから視線を外したのは瞬きほどの間だったはずだ。

その間にドーラは魔法を構築し、発動までしていたという。

神業ともいえるほどの手際である。

「それに視覚以外を奪われれば、君のことだ、突っ込んでくるだろうと思っていたからネ」

すべてドーラの読み通りだったというわけだ。

「完敗です」

エドランデはそういうとドーラに向き合って頭を垂れる。

「マジかよ。あのエドランデをこうもあっさり倒しちまうとは」

コブリは空いた口が塞がらないといった様子である。

「これで僕に従ってもらえるネ」

コブリに向けてドーラは語りかける。

「約束だ。従うぜ」

コブリは難しい顔でそれを承諾する。

「さすがだ。相手の感知能力を逆手に取るか」

空からジーリアはそう言って下りてくる。

「ジーリア、君は?」

「二言は無い。私も魔法長殿の作戦に従おう」

こうして魔族たちはドーラの作戦に従うことになったのだ。

「それじゃ手始めに、オルドリクスの破片を見つけてきてもらえるカナ」

舌の根の乾く間もなく発せられたドーラの命にさすがに魔族たちは顔をしかめる。


思いのほかドーラの人使いは荒そうだ。


以上、ドーラとエドランデの決闘でした。

書いててこれは入れないとまずいかなと。

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