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ハルユラ!

作者: あおてここ

 我輩はゲーマーである。

 引きこもりの中年ヒキニートのゲーマーである。

 ゲーム好きのゲーマー故に好きを拗らせて初めてのお仕事が某ゲーム会社での開発のお手伝い。ゆうなれば、デバッグチームのアルバイター戦士であった。

 時給850円で各種保険付き、交通費全額支給、夜間手当有りという、社会からドロップアウトしていたヒキニートには勿体無いかもしれない条件で働いていた。ありがたい。


 人生初のお仕事が、大好き過ぎてオレの魂は電子の世界だ!! などと、真顔で言えるゲームのテストプレイなんて、最高に幸せだった。

 たとえそれが飽くなきバグとの戦いであっても、我輩は最高に充実した毎日を送っていたと思う。


 親のお金ではなく、自分の初めての稼ぎで手に入れた携帯ゲーム機はたとえ型落ちしたとしても、手放せない墓場まで持って行くつもりの大切な宝物であった。


 贅沢を言えば可愛い嫁さんを貰って玉のような赤ちゃんを授かって、心配や苦労を掛けた両親を安心させてやりたいと思ったりもしたが、中年のメタボブサイクハゲというトリプルアタックな底辺なオタクにときめいてくれる仏様のような女性は存在しなかった。


 それでも毎日毎日ゲームに携わって、仲間にも恵まれて辛いこと悲しいこと苦しいことがあっても本当に幸せな、信じてもいない神様に感謝を抱くほど、幸せな日々を過ごしている。


 過ごしている。


 過ごしているハズだった。

 ハズだったのになぜこんな事になってしまったのか……。

 神様は死んでしまったのだろうか……。



「いい加減話す気になりましたか? いつまでも黙りではあなたの為にはなりませんよ?」


 陰険鬼畜変態メガネ副会長が無駄にレンズをキラリと反射させながら高圧的に凄んでくる。

 やめろ近づくな。イケメン要素の香水が臭いんだ。爆発しろ。


「こんなあからさまな証拠があるのにしらを切るのは無駄だと思うぽよ~」


 ケラケラと笑いながら癖っ毛風にスタイリングした金髪のチャラ男の振りした純情BOY書記が笑う。

 うるさい黙れ。ふさふさの有り難みを知らない愚かなガキはさっさとハゲて毛根ごと絶望しろ!!


「かいちょーのコトが」


「だーすいきなのはわかるけどー」


「GPSとかー」


「盗聴器とかー」


「「犯罪だよー?」」


 童顔天使顔の異国ハーフでお互いに対してのコンプレックスの塊みたいな双子な会計が交互に戯言をのたまう。

 交互にしゃべるな、二卵性のくせに無駄に双子キャラを確立させようとするな、おまえら程度のキャラなんぞ世の中に氾濫しまくってるわ!!

 聞き取りにくいユニゾンをするぐらいなら双子で合体してアシュラな男爵様になってしまえ!!


「……いくら黙秘を続けた所で、君の有利にはならないぞ」


 無表情でムッツリな黒髪イケメン庶務が長い前髪の隙間から冷ややかに睨んでくる。

 その無駄に長い前髪が眼球に刺さればいいのに。そして悶絶した挙句生徒手帳に挟んである初恋の君のむふふな写真を落として赤っ恥をかきやがれド変態野郎。


「あなたの気持ちは解らなくはないわ。でも世の中やっていい事と悪い事がある。いけない事をしたら、それを償うのは当然だと思わない?」


 赤く艶めく唇を歪めて冷徹に微笑むのはクールビューでツンデレ一途の女王様な監査。

 その長い御御足で踏んで下さい罵って下さいという下僕は後を絶たないという評判なので、ぜひ薄い本が厚くなるような展開になってしまえばいい。むしろ踏んで下さい、ご褒美です。


「我々も暇ではないんだ。正直に話してくれれば君の罪科を軽減する事はできる」


 少し困ったような表情でうすら寒い事を言うのは我が校の会長にして己を無能と思い常々その歯痒さから色々から回ってる癖に完璧超人と周囲に見せてるヘタレ野郎。

 良くある運命の出会いとやらで後先考えずに、今までどんな時も献身的に支えてくれた可愛い婚約者を無残に捨てる最低野郎である。破滅しろ。

 そしてそんなハリボテ会長はイケメン度八割増しの爽やかな笑顔で最後通告をする。


「さぁ、もう時間だよ。話してくれないか? ユーランシア=ロシュアーデ=ギリエットさん?」


 そう呼びかけられて我輩はそっと天井を仰いだ。

 やばい、心の汗が染み出そうだ。


 天井板の石膏ボードの穴を数えながら鼻をすする。

 なぜこんなどうしようもない状況に陥ってしまったのか、やはり神様は死んでしまったのだ……。





 我輩の最期の記憶はとても曖昧だ。

 確かあの日もいつもと同じように出社し、半年後に発売予定のソフトの最終チェック作業の手伝いをしていた、はず。

 同僚と絶え間なくニヤニヤしながらお昼に出た所で記憶は途絶え、気づいた時にはこの学校の入学説明会の会場で配布された資料を読んでいた。

 その時の混乱を言葉で表す事なんてできない。

 記憶に無い、しかし知っている母親がニコニコと楽しそうな学校ね、と話し掛けて来て我輩は混乱したまま肯いてはぐちゃぐちゃになった記憶に頭を抱えた。


 なんぞ、コレ。なんぞ、コレ、コレェェェェェ!!!???


 混乱もそのままに説明会を終え帰宅し、頭痛が痛いを理由に早々に引き篭もった自室は確かに知っている部屋だった。

 いや、知っているだけではない。

 この部屋のインテリア、その配置、配色、そのプログラムの配列。

 プロデューサーがやたらめったら熱く燃え上がる勢いでデザイナーと一晩掛けて語り明かしたこだわりの乙女部屋。

 ここは、間違いない、ああ間違いない、間違いないないんだ。

 かつて我輩が日夜問わずひたすら繰り返しバグを探したのユーランシア=ロシュアーデ=ギリエット部屋ではないか!!

 見つけた「無限ループって怖くね?」的なバグに泣かされたのは良い思い出だぜよ!!


 いったいなぜ……と、混乱に混乱を重ねる脳内に、認めたくない情報が駆け巡る。


 それはユーランシア=ロシュアーデ=ギリエットとして過ごしたわずか十五年の記憶。

 野暮ったいオッサンが過ごした数十年の記憶に重ねるように瑞々しい若人の記憶が脳裏に焼け付く。


 今度こそはっきりと自覚する。




 これは、ゲーム内転生だ、と。




 いや、もしかしたらトリップかもしれないが、オッサンの記憶が曖昧な為に正確な事はわからない。

 どちらにしろこの現状が変わるわけではないのだ。


 市場調査と嘯いて読み漁ったネット小説のような状況に陥る事になるとは、いったい誰が予測した?

 あれは空想だから面白いのであって、リアルに体験したいものではない。

 オッサンの人生になにがあってこんな事になったのか。

 曖昧な記憶をどんなに必死に手繰り寄せてもその回答は無く、頭の悪そうな神や天使や死神が出てくるわけでもない。

 無駄に鮮明になるのはユーランシアがこれから過ごす高校生活と続編におけるアレやコレや。


 絶望した。


 よりにもよってユーランシアだなんて、絶望以外のなにがある?

 もしも我輩が携わった作品だというならもっと色々あっただろう?

 例えば勇者と聖女の世界とか、妖や神様が跋扈な世界とか、 異世界の巫女様が活躍する召喚物とか……あ、碌なのがない。

 いや、主人公をはじめとする登場人物以外なら何でもいい。

 よりにもよって。ユーランシア=ロシュアーデ=ギリエットだなんて……。




 明らかに前作のヒットからの悪ノリで居酒屋のテンションで作ったゲームの主人公。

 ……あ、あの会社、基本居酒屋でコンセプト決めてたよ。酔っ払いの戯言みたいな感じだったヨ。

 これが特殊なわけじゃないYO……。しょっぺェ!!


 ユーランシアが主人公となるこのゲームは現代日本風なのに登場人物全員横文字のなんちゃって異世界ファンタジーな世界だ。

 ファンタジーに漏れず魔法だ精霊だ王族だとベタな世界観で出会う男女十人の攻略キャラクターと愛を深めてその後の人生を決める。

『遙かなるユーランシア』

 キャッチコピーは『私の心はあなたのカタチ』

 略して『ハルユラ』という意味が有るような無いような微妙なタイトルの乙女ゲームだった。

 そう、攻略キャラクターは男女十人。乙女ゲームの癖に女性も落とせるファンタジー。

 これは前作の主人公の性別を男女で選択して進めるスタイルがヒットした為に、その場の勢いとテンションで急遽設定付けられた物による無茶振りだ。

 ユーランシア=ロシュアーデ=ギリエットは世界でも数人しかいない精霊の愛し子と呼ばれる高い魔力と強い加護を持つ性別未分化の人間なのだ。

 精霊に愛され過ぎてしまった為に性別が無く、その精神や愛した相手によって姿を変える希少な存在として作られた。

 選択肢によって性別が変化し、男女の恋愛以外にも同性愛にも発展でき、かつ育成ゲームとしての側面を持つ為、育てたステータスによって将来が変わるという大変に自由度の高いシステムになっているのだ。

 あまりにも選択肢が多く、ゆえにエンディングの数も社内で一二を争う多さでプログラマーチームが悲鳴を上げ、我らデバックチームも絶望に壁殴りをしたという思い出深い作品だった。

 その作風の為か、あまにも難解で細かいフラグ設定だった為か、新規やライトユーザーの心を折り、マニアックでコアなユーザーに支持され、巡り巡って新たな境地を開拓した作品でもあった。

 そんなハルユラの世界。

 そんなハルユラの主人公。


 絶望した。


 ユーランシアである我輩はこれから多分魅力的と思われる男女十人と出会い、青春して恋をして己の人生を決めて行くのだ。




 あえて言おう。




 野郎に興味は無い!!と。

 ついでにゲームの女性キャラクターにも興味は無い!!


 二次元と三次元は違うのだ。

 二次元では萌え萌えしてニヤつけたとしても、彼女等が三次元で側にいたとしたら、そんなめんどくさい事はない。

 ツンデレ、クーデレ、天然、地味、ロリ。

 のーせんきゅー!!

 我輩、昔から嫁さんにするなら明るく朗らかで元気な女性という理想があるのだ。

 可愛いに越した事はないが、普通の人が良いのだ。出来れば笑顔が可愛い人が良いのだ。きょぬーでもひんぬーでも良い。いや、びぬーが良い。が、笑顔、これだけは譲れない。

 残念ながら攻略キャラクターの中に該当するキャラクターいないのだ。地味子ですら眼鏡を取ったら赤面電波美少女という設定なのだから問題外だ。

 野郎はタヒればいい。


 しかし、我輩はユーランシアなのだ。

 この世界がハルユラの世界であるのなら、否応もなしに奴らに出会うだろう。

 自由度の高さは主人公の行動範囲も広く自由にしている。ゆえにシステムではランダムに必ず攻略キャラクターの誰かと一日一回は出会うように組まれている。

 ならばどんなに接触を回避しようとしても無駄になる。

 回避率0%って全部被弾じゃないすかー。やだー。

 左舷弾幕薄いよとか言えないこの状況。


 ならばどうすればいいのか。

 簡単だ、必ず立ち上がるフラグを折れば良い。


 デバック担当者を舐めるなよ。


 プロブラマー本人ですら思い付かない、ありとあらゆる方法でプログラムを動かしバグを捜し続けた我輩には、どうすれば乱立する恋愛フラグを叩き折り、誰とも結ばれずに進学や就職するお一人様エンドを迎えられるのかを、誰よりも熟知しているのだ。

 そして何より精霊の加護というチート能力が付加されているのだ。

 メタな知識とチートな能力。我輩に恐れる物など何も無い!!

 我が将来に一点の曇りもナシ!!!






 と、思っていた時期が我輩にもありました。






 確固たる決意を胸に向かった学び舎。

 次々と迫り来る攻略キャラクター達のフラグという名の恐怖を打ち払いながら戦い続ける事、数ヶ月。

 我輩は気づいてしまった。

 いや、正確には忘れていた事に気づいてしまったのだ。


 隠れキャラである、ロリコンの変態かつ暴力系ヤンデレの腐れ教師の存在に。


 どこぞのホストみたいな甘い顔立ちに柔らかな物腰。生徒一人一人を気遣い、時には厳しく時に優しく導くミスターパーフェクト的な教師がいる。

 当然攻略キャラクターの一人だが、データを引き継いだ周回プレイと他の攻略キャラクターとのイベントを犠牲にしてルートを解放する隠れキャラである。

 周回プレイで担任でもあるヤツは入学当初から主人公に接触し、男女どちらでもない主人公の身体の秘密を知りながら口説き、ギリギリアウトなお触りを繰り返し、迫りに迫った挙句に勝手な言い分という名の愛を囁く犯罪者です。

 ヤツの初恋の人と主人公が顔も仕草も性格も良く似ており、その人の面影を重ねていく内に独占欲が限界突破で監禁暴行に走るというヤンデレぶり。

 ヤツにとっては男だろうと女だろうと関係無く、主人公だからこそ愛おしいのだと容赦ない暴力の上で熱く語るのだ。

 シナリオライターさん曰く、18禁だったらR18Gかもしれないとの事。

 どうもありがとうございます。


 そんな深夜のテンションでネタに詰まった挙句に暴走して書き上げた教師は現実となったこの世界でも健在なのだと、体調不良を起こし倒れ運ばれた保健室のベットの上で、ニタニタと覆い被さる変態教師にデコチューされた瞬間に思い知った。こんなイベントは無かったはず。

 いくらゲーム内転生とはいえ一度きりの人生。周回プレイなんぞしていないし、今までは適度な距離のある生徒と教師であったハズなのに、ま さ か の イ ベ ン ト !!


 あまりの恐怖と気持ち悪さに全力で殴り飛ばしたのは不可抗力だ。死ね変態。


 精霊の力も借りた一撃で無様に転がり痙攣する教師の顔が、ちょっと恍惚としていたような気がして寒イボが駆け抜ける。

 ドSは巡り巡ぐるとドMになるのだと、寝不足で形相の変化した顔でプロデューサーは呟いていた事を思い出した。


 必死の思いで保健室から逃げだし、号泣しながら帰宅したマイルームで我輩は決意を新たにする。

教師を潰す。

 我の目的の障害と世の中の害悪にしかならないヤツは絶対に社会的にも生物的にもぶっ潰す。

 とりあえず捻りちぎって、新人類にしてやる。二丁目の蝶になればいい!!



 そうして我輩は変態の恐怖に怯えながらも策略を練り、まずは社会的に潰す為にお小遣いを注ぎ込んだ贈り物を用意した。

 高感度の盗聴器と高精度のGPSを搭載したタイピン、腕時計、携帯ストラップ、眼鏡。

 これらを順次渡す事でヤツの行動を把握し証拠となる音声を録音し、学園中に設置されている監視カメラの映像を証拠として殲滅させるのだ。

 もちろん万が一力技に出られても対応出来るように体技剣技魔力を磨き、精霊とのコミュニケーションも密に行っている。

 きっとゲーム通りにステータスを確認できたら、我輩の戦闘力はカンストする勢いであろう。



 そうやって着々と敵を包囲し潰しの用意をしている最中に、我輩は痛恨のミスを犯してしまったのだ。



 よりにもよって腐れ教師に渡すはずだったタイピンを、誤ってヘタレハリボテ会長に渡してしまったのだ。事故である。

 うっかり会長の目の前で落としたブツを奴が拾い、その包装から勝手に自分へのプレゼントと勘違いし回収。

 なんでも手渡しはファンクラブ規制が掛かるから、わざわざ落し物を装って本人に送る事案が多発しているらしい。迷惑な話しだ。

 そしてその中身が犯罪臭の漂うものであった為に現在に至る。

 ハリボテマジタヒね。


 モテモテのクソ会長は乙女達からの心のこもったプレゼントを良く貰う。

 しかし乙女達の気持ちが宿り過ぎたそれは時にバイオやら放射能やらTプラスなドクロやらの、ハザードシンボルを貼り付けられる様な危険物となる事があり、その為プレゼントの中身は専門の業者の方々が全てチェックをしている。


 うっかりチェックを通り過ぎてハリボテ会長に緑と赤のハザードシンボルがついたプレゼントが渡ればいいのに。


 そんな厳重なチェックにタイピンは引っかかり、輩の秘密兵器は白日の下に晒されたのである。


 絶望だ。

 神様は死んだ。


 悪質であった事は認めよう。

 法律ギリギリアウトな精度の盗聴器とGPSだ。しかも禁呪クラスの精霊魔法込みだ。発動したらナニかが終わります。

 さすがの会長をはじめ、重たいプレゼントに慣れていた生徒会役員共も看過出来ないそれを作製した我輩は、こうして放課後の生徒会室に呼び出され尋問を受けているのだ。


 絶望した。

 このふざけた世界に絶望した。


 よりにもよって会長が好きだなんて勘違いされるなんて、屈辱以外の何ものでも無い。

 野郎なんぞに興味は無い!!

 野郎なんぞに興味は無いんだ!!

 大事な事なので二度繰り返します。



「ユーランシアさん、この違法なタイピンはあなたが用意した物で間違いありませんね?」


 陰険鬼畜眼鏡がイライラしたように眼鏡のフレームを押し上げる。

 お綺麗な顔を真っ赤に潰してやりたい。

 そしてなんとなく呟く。

 それに深い意味はない。

 ただ、我輩は少々疲れてしまったのだ。

 この情況に、この世界に、疲れてしまったのだ。


「……………ぬるぽ」


「ガッ!!」


 その声は真横から聞こえた。

 まさかの驚きに振り向けばしまったと言わんばかりに顔を歪める黒髪ムッツリが口元を抑える。

 だがもう遅い。

 確かに聞いた。お前まさかの同志か!?

 あまりの衝撃にムッツリをガン見するも、ヤツは真っ青になってプルプルと震えている。

 懸命に我輩の視線から逸らされるその横顔を眺めていたら、なぜだか急に力が抜けてきた。

 異世界でもねらーがいるんだな……。


「………ふ……ふふ……」


 不意に笑いの衝動が込み上げてくる。


「ふふ……っふふふふふ」


「ユーランシアさん?」


 突然低く笑い出した我輩を訝しげに、そして薄気味悪そうに見つめてくる生徒会の面々の間抜けな顔が、いっそうの笑いを誘う。


「ふっく…くくく……」


 全くもってなんなのだ。


「くくく…くはっ」


 こんなとこで……こんな事で……。


「くぅふぅあーはっはっはっはっはっは!!!」


 座っていたパイプ椅子を蹴倒し立ち上がる。

 笑いの衝動の勢いのまま我輩は叫んだ。


「やってられるかコノヤロぉぉぉぉぉ!!!!」


 目の前にある会長の机に思いの丈を乗せた拳を叩き込む。

 マホガニーの重厚で高そうな机に亀裂が走るが知ったことでは無い。


「誰がこんなハリボテ野郎に惚れるかボケェ!! テメェらなんぞ眼中にねぇんだよ自意識過剰かよっ! 恥ずかしい奴らだなっ!!」


 もう、我輩は止まらない。止められない。


「間違えたんだ、間違えたんだYO!! これはあの腐れ教師に仕込む予定だったんだYO!! テメェじゃねーよ!! ふざけんな!!」


 髪を振り乱して叫べば、会長は椅子から転げ落ち、副会長は後退する。ついでにその薄い生え際も後退しろ。


「こっちはなぁ、命懸けなんだ、あの変態から逃げ切る為に手段なんぞ選んでられねぇくらい必死なんだ!!」


 だすだすと力の限り地団駄を踏めば高価な手織りの絨毯が床ごと凹んでいく。

 それに他の面子が後ずさるのが見えたが関係無い。


「我輩は枯れた中年妖精なんだ!! 進化だ!! 電子の世界でhshsしてる程度のしがないデバッガーなんだ!! それがいきなりハルユラ主人公とかふっざっけっんっな!!」


 ユーランシアらしく毎朝苦戦しながらきれいに纏めた髪を掻き回して絶叫する。


「我輩はテメェらにこれっぽっちも興味はないんだぁぁぁぁぁ!!!」


 空気を震わし窓を叩いた魂の叫びが狭い室内に木霊する。

 突然の奇行に言葉なく立ち尽くす生徒会役員共を横目に、我輩は肩で息をする。

 普段必要時以外は引きこもってるし、基本的に小声で話すのでたまに大声を出すととても疲れる。喉が痛い。


「……その喋り……ハルユラって……まさか、おめェ……きよみんか……?」


 その声は唐突に掛けられた。

 時間が止まった。


“きよみん”


 それは前世で呼ばれていたあだ名である。

 清美と書いて“きよし”と読むが、そのままの読みで“きよみん”と親しい職場の仲間達に呼ばれていた。

 だかそれは中年であった前世での話だ。

 それなのになぜ、今生で、しかもキモオタ中年の欠片も面影のないユーランシアに問われるのか。

 我輩は混乱する頭のままゆっくりと声のした方へと振り返る。

 そこには、限界にまで切れ長の瞳を見開いた、ド変態改めてねらー野郎が愕然とした面持ちで我輩を見つめていた。


「おぬし……なにやつぞ……?」


 前世での我輩の呼び名を知っているとは……機関の回し者か!!

 あまりの意味不明に混乱するまま身構えれば、ねらーえーじゅえんとが、わずかに頬を上気させて一歩近づく。


「お、オレだよ、オレだよ! 同じハルユラのデバッグチームだった“持岡”だよ!!」


 その名前に驚愕するのは我輩の番であった。だってその名前は……。


「もももももっさん!!??」


「そうだよ、もっさんだよ!! おめ、きよみん、なんてェ姿になってんだよ!!」


 我輩の反応に確信を得たのか、ムッツリ無表情のイケメンが花のエフェクトを全開にして破顔する。


「いやいやもっさんこそ、なんでそんな目ん玉潰れそうなイケメンリア充タヒねになってんだお!!」


「うるせェやい! 爆発しねーよ!! おめェこそフワフワ小動物ヒロインになってんじゃねェかよ!!」


「ヒロインとかヤメれ!! 我輩は我輩なんだお!!」


 懐かしい、その懐かしい言葉の応酬に全身が震えるのがわかる。

 もっさん……もっさん……もっさん……!!

 ねらー野郎改め、我が心の友もっさんは、感極まったかのように目頭を抑え嗚咽を漏らす。

 あのもっさんが! お気に入りの萌えキャラが死んでも激怒するぐらいで泣いた事のないもっさんが、O E TU !!?


「ど、どどどうしたよ、もっさん?」


「オレァ嬉しいのさ……こんな世界のくんだまりで、まさか我が盟友に再び出会えるなんてよォ……」


 もっさんの、その低く震える声に感化されたのか、我輩の脳裏にユーランシアとして自覚してからの日々が思い出されて、視界が滲む。


「それを言うなら我輩こそだ。こんな慣れしたんしだリアル二次元でおふくろ様によってフリフリにされたせいで碌な目に合わなくて、クソみてぇだって思ってたら、まさかもっさんにもう一度会えるなんてなぁ……」


 込み上げる熱いモノを溢さぬ様に片手で目を覆い、天を仰ぐ。


「きよみん、おめェ可愛いよ、ほんとに可愛いよ。期待を裏切らないリアルユーランシアたんだよ……hshs」


「やめてくれもっさん! 我輩には可愛いなんて言葉は刃にしかなんねぇんだ!!」


 可愛いは正義だが、我輩に向けては凶器でしかない。

 ピュアな中年のハートはズタボロだ。


「どういうことでェ、きよみん?」


「我輩は確かに可愛いよ。ピカりんさんが魂を込めてデザインしたんだしな。おふくろ様も全身全霊で我輩を磨いてきたしな」


 思い出されるのは今生の母たるおふくろ様の躾けという名の愛の篭った淑女教育。

 性別が無いというのにおふくろ様は我輩を立派な乙女にする為に手段問わずアレやコレやとして下さりやがった。だがしかし。


「我輩は我輩なのである。我輩はユーランシアという主人公である前にきよみんという進化した中年なのである!! こんなフリフリとしたスカートやらレースやらを纏うよりだるんだるんのジャージを着てキノコを生やしたいんだ!! 可愛い子を見てprqrhshsしたいんだお!!」


 精神年齢うんぬんではない。

 我輩が我輩として自覚して瞬間から、我輩はあの世界から続く我輩なのである。

 たとえ真っ当なユーランシアとして生きた時間があったとしても、そんな愛らしい記憶なぞ我輩の前では塵も同然。ユーランシアの自意識なぞ駆逐する勢いで我輩に飲み込まれたのだ。

 我輩はユーランシアである。

 だがそれ以上に“きよみん”というおっさん妖精なのである!!


「きよみん……おめェ……」


「男に言い寄られてもキモいだけなんだ!! ホモォはいらないし、アッー!! な展開もいらないお!!」


 想像しただけたで全身に蕁麻疹が出てくる。痒いでごさる。

 我輩となる前のユーランシアは中性らしく、男にも女にもトキメキを感じる恋愛体質だった。

 初恋は近所のお兄さんだったがな! 怖ろしい!!

 しかし我輩となった瞬間から、ユーランシアの精神は男なのである。これ絶対である。


「それなのにうちのおふくろ様は男の娘が大好きな腐女子ってゆうか、貴腐人拗らせて焦げ付かせちゃったマダムだから、我輩にこんな格好をさせてどうあがいても絶望に追い込んでくるんだよ。ケツの貞操がピンチでSAN値なんだお!!」


 毎日毎日素敵な殿方は見つけましたか?

 お尻を狙われましたか?

 と、貴婦人らしい遠回しかつお上品な言い方で聞いてくるおふくろ様は、前世の世界の住人だったら間違いなく夏と冬の祭典にキャリーケース転がしながら参加していたことだろう。


「我輩は……我輩は、ケツの貞操を守りながらこの学校でありとあらゆる必要な知識を手にいれて、ノーマルエンドを迎えて手に職つけて自立したいんだお!! 立派な漢になってマイスゥィートハートラヴァアたるリナリータさんをかっこ良く迎えに行くんだ!!」


 まさに俺ここから帰ったら結婚するんだ。の心持ちである。フラグは意地でも折ります。


 そう、リナリータさん。


 彼女を手に入れるべく我輩は日夜変態と戦っているのだ。


 我輩は学生であるうちは誰とも恋愛フラグを立てるつもりは無かった。

 学生のうちは己の胆力知力膂力諸々を磨き、心の形のままに立派な男になる予定だった。

 しかし櫓力を磨く為に通い出した道場で、我輩は天使に出会ったのだ。


 彼女の名前はリナリータさん。

 歳は我輩より二つほど上の道場主のご令嬢である。

 しかしそのしなやかな細腕から繰り出される鋭い一撃は世の猛者どもを貫き、すらりと伸びた足の切れ味は変態どものトラウマとなった事だろう。

 リナリータさんはけっして美人ではない。いたって平均的な顔立ちだ。

 身長も我輩より高く、可愛い服が似合わない事を気にしている乙女だ。

 まだ戦闘力が低かった頃は何度も彼女に助けてもらった。

 女性に庇われる不甲斐なさといったら筆舌に尽くし難いもがある。

 いつか彼女に恩返しがしたい。

 目的とは別にそんな思いに突き動かされて我輩は熱心に道場へと通った。むしろ自室に引きこもるか道場に篭るかの二択だった。


 そうして深まる交流の中で、我輩は衝撃を受けたのだ。


 リナリータさんの少し照れたようなはにかむ笑顔に。

 今思い出しても鼻血が出ます。

 この記憶だけで白飯十杯は軽い。


 きっかけは何だったかは忘れたが、あの美しく心の温まる笑顔に我輩は恋に落ちたのだ。


 それ以降一層力をいれて道場へと通い、慣れないアプローチを繰り返し、勢い余って告白なんぞをしてみたり。

 告白の返事は聞いていない。

 怖くて聞けない。

 どさくさだったから、無かった事になっているかもしれないし……。

 だが、今はまだふわふわな姿だからダメだが、このゲームの期間を終えて立派な漢となってもう一度、堂々と彼女に告白するのだ!!

 だからこそこんな事で躓いている場合ではないのだ!!


 そう、熱く語る我輩に、もっさんは目頭を押さえて鼻をすする。


「おおおいおい、どうしたよ、もっさん」


「―――っ!! あ、あの、三十路超えの魔法使いを通り越して伝説のキモヲタ妖精にまで進化したきよみんが、こんな……こんなに立派な(をとこ)になりやがって……」


「よせやい。もっさんだって臭ェ妖精仲間だったじゃねぇか。そんなイケメンになって……今じゃピチピチギャル(かっこ)死語(かっことじ)を侍らしてブイブイ(笑)(かっこわらい)言わせてるんだろ? うらまやしいなコンチクショ☆爆発しろ!」


心の友の感慨深げな言葉につられて涙ぐみ、それが恥ずかしくて憎まれ口を叩くが、我が心の大親友は自嘲気味に微笑む。


「わりィなきよみん、オレァその期待に応えられてねェんだ……」


「どゆこと?」


ふと遠くを見るように視線を上げてもっさんは語る。


「オレァただのしがねェデバッグプレイヤー(かっこ)アルバイト(かっことじ)だったさ。しかしな、こんなオレでも自分の仕事には富士山より高けェプライド掲げて、幾ミクロン分のイチっていう確率のバグも見逃さねェように日々鍛錬を重ねてきたさ」


 深くため息をついてもっさんはその切れ長で真っ黒く輝く瞳を我輩へと向ける。


「だからよ、たとえこんなオレでもレイナスの無口無表情無愛想堅物ってェイメージを崩すなんてこたァできなかったわけよ。レイナスって名前がお盆のナスを見てつけたってェ由来でも、担当ライターのミチヨさんの苦悩と爆笑の結晶を手前勝手にブチ壊すなんてェ非道な真似はやるわけにゃァいかなかったんだよ」


 その殴り飛ばしたくなるくらいオトコマエな表情のもっさんの言葉に、我輩は自分がユーランシアであると気付いた時の初心を思い出して震える。


「ああ……ああ、そうだよ、そうなんだよもっさん!! 壊しちゃいけねぇ、いけねぇんだよ!! そうだよ、我輩だってそうだよ、デフォルト名ユーランシアなんて地図見て適当に付けた名前でも、ライターさんの血と汗と鼻水と妄想の結晶なんだよ、可愛いあんちくしょうなんだよ! それを我輩の勝手で乙女の夢を壊しちゃいけねぇって、おっさんの精神を折り曲げながら違うユーランシアを演じ続けてきたんだ……」


 ああ、そうだ。


 拷問のような淑女教育もおふくろ様の腐った教育も全然趣味じゃない嫌がらせのような服装も、全てはかつて仲間達を作り上げた乙女達のイメージを守る為だったんだ。


 社長は言っていた。


 面白いだけで売るんじゃない。流行だけを追いかけるんじゃない。ユーザーという名前の乙女達とスタッフ、キャストの夢を妄想を煩悩を守る為に造るんだと。


 クソニートで引きこもりで社会不適合者で底辺のクズだった我輩を、ただゲームが好きだというその気持ちだけを汲んで雇ってくれた社長。

 その恩を返したくて頑張っていた仕事。

 綺麗ごとばかりじゃなく、嫌なこと辛いこと苦しいこと辞めたいと思ったこともたくさんあった。

 それでも我輩はあの仕事が好きだった。職場が好きだった。仲間が好きだった。

 人生なんてクソで人間なんてクソで誰も我輩を認めてくれない必要としない、生きてる価値なんてない、なんにも無いと思っていた自分に生きる喜びを教えてくれた大切な場所だった。

 できればずっといたかった。

 ずっとずっと働いていきたかった。

 ずっとずっとずっと仲間達と一緒にいたかった。

 こんなところで自分じゃない自分になってしまったことが認められなかった。

 信じたくなんかなかった。全部夢なら良かった。


 そう、何度も何度も思って涙したことなんて一度や二度じゃない。


 それでも我輩はユーランシアなのだ。

 その現実は変わりが無い。

 だったらユーランシアとして生きるしかない。

 この世界のどこにもあの素晴らしい場所も大嫌いで大好きだった臭い自分も存在しないのだから。


 そうやって自分の中で折り合いをつけて夢の結晶であるユーランシアとして、我輩という存在の夢を叶えるために弛まぬ努力を続けてきたというのに。

 それなのに。


「それなのに、こんな対変態教師撲滅兵器に足元を掬われるなんて、我輩はどおすればいいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 どうしようもない絶望感に苛まれたままの勢いでヒビの入った会長の机に拳を打ち付ける。

 精霊の魔力もこもった一撃は光を纏い、打ち下ろされた勢いのまま床へと到達する。

 打撃の余波で完膚なきまでに粉砕され木片となり舞い散る残骸の向こうで会長が白目を剥いているのが見えた。

 しかしそんなことはどうでもいい。

 もういっそ証拠隠滅としてこの場にいる全員(もっさんと監査の女王様を除く)を口封じするしか方法が無いのではないだろうか?

 そう思いついてしまえばそれ以外に最良の方法がないと思えてきて、我輩は肩幅に足を開いて腰を落とし戦闘体制に入る。

 ヤツラは顔面偏差値だけで生徒会になったわけじゃない。ソレ相応の実力を伴っているのだ。

 一撃必殺。

 それ以外に勝機はないと思え。


「大丈夫だ。大丈夫だよきよみん!!」


 しかしそんな我輩の様子とは裏腹に、滂沱の涙と鼻水を溢しながらもっさんが我輩の両肩を叩く。

 戦闘体制に入った我輩の間合いに入るとは、やはりもっさんもハイスペックだ。

 さすがレイナス、攻略難易度が高いだけはある。


「オレたちゃァ同じデバッグチームの喪男としれ戦ってきた仲間じゃねェか。なんの心配もいらねェ、いらねェんだよきよみん」


 オレに任せておけ! と胸を叩くもっさん。

 その頼もしい姿に鼻の奥が痛んで再び視界が歪む。


「しかし……それじゃあもっさんの迷惑になっちまう……」


「水臭ェことは言いっこなしだぜ、きよみん。オレたちゃァ次元も時空も世界すら飛び越えて再び巡り合えた仲間じゃねェか。困ってるダチ公を助けてなんの問題があるってェんだい? ん?」


「も、も、も、もっさん……すまねぇ、我輩、間違っていたでござるよ……」


 そうだ、我輩たちはいろんな壁を飛び越えて出会えた奇跡の仲間なのである。

 我輩一人ではない。一人で戦う必要なんてないんだ。


「わかってくれりゃァいいんだよ」


「もっさん……!!!」


「きよみん……!!!」


 感極まった我輩たちは、その衝動のままヒシっと熱く抱きしめ合う。

 こっそりもっさんの高い身長が羨ましいと思ってしまったのはここだけの話しだ。

 いつかリナリータさんをこの胸に抱いてみせると密かに決意を新たにする。


「というわけで会長、彼女……いや、彼が貴方に好意を持ってそのタイピンを渡したというのは全くのデタラメ冤罪です! キリッ!!」


 レイナスモードでそう言い切ったもっさんは、なぜかどん引きしている生徒会の面々に、我輩がどれだけ変態教師に悩まされているのかと説明してこの場を収めてくれた。

 詳しい被害を伝えていないのに情況を正確に把握してくれているあたり、さすが我が永遠の大親友である。

 我が本懐を遂げた暁には是非とも祝い酒を酌み交わしたいものである。




 その後会長への疑惑を晴らし、暴言を吐き倒した生徒会の面々からの謝罪と変態教師抹殺の協力を取り付けて、気がついた時にはなぜかゲームの進行通り生徒会の補佐として忙しく立ち回る日々を送っていた。

あれ以来、不愉快な疑惑を掛けられることもなく、また変態教師抹殺の下準備も着々と進み、我輩は今までになく充実とした時間を過ごしている。

嬉しいことに少しずつ体型が男へと近づいていて、卒業の頃にはリナリータさんへの再告白も夢ではなくなってきた。



我輩の明日は輝かしい。

そしてハルユラのユーランシアとしての未来も輝かしいのである!

今度こそ、今度こそ、今生ではおっさんも家族も親友も、みんなで幸せになるのだ!!





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