実は大変な現代
少し現代の様子を、前回から月日が過ぎてます。
日本
「詩音は、乗車名簿にはいないな・。」
父親である輝馬はツーリスト会社からもらった書類を見ながら安堵したように呟く。
「あたりまえでしょう、あの子はその時間を綾と会うために使ったんだから。」
「でも綾からも本人からも連絡がない。」
実は詩音が異世界に転移したときに全世界的に異変が起きていた。
同じツアーのメンバーは高速道路で事故に遭い、ほぼ全員が絶望視されていた。
航空機のうち離陸と着陸のタイミングがあった機が事故を起こし、
交通事故も頻繁に起き、地震が数十ヶ所で起きて、津波に家が流され、火山も噴火していた。
VOCも起きていたが、行方不明者が多すぎた。誰もが事態を把握できていなかった。
とにかく、あの日以来地球上では不可解なことが多発し、宇宙でもそれは起きていた。
月との距離が1万キロ縮まり、土星が縮小し木星が肥大する。金星の大気が薄れていき、
火星の大地から水が吹き出し、水星が太陽に飲み込まれる。
「まるで、嵐に飛び込んだ船のようだな。」とは誰が言ったのやら。
日本から遙か西、東欧の片隅の町で甥っ子をなくした若い女性がぽつりとこぼす。
「最悪の季節に入ったのかしら、それともまだ序の口かしら。」
彼女の名前は綾香、詩音の叔母にして宇宙にも季節があるとして「銀河季節」という論文を寄稿した人物。
東欧雑貨と珈琲の店[エトランジェ]の仕入れ担当。
訪れるはずだった甥っ子が失踪したために、ここ数十日間駆けづり回っていたのだが、
「大使館、警察、消防に病院と旅行代理店に教会にテレビ局他には・・・?」
大学の研究室の自分の机の前であたまを抱えていた。そんな彼女の肩をたたく者が
「あや、その分だと甥っ子という彼氏はまだ見つからないみたいだね。」
「シュトレッゼン教授、すいませんご迷惑をおかけします。」
「いやいや、気にしないでかまわんよ。というか君の理論の実証のような昨今の事後の多さだね。」
「恐縮ですわ。あくまでも警告して対処する準備をして欲しかったからの理論でしたのに
私が検証し考察と証明を遅らせたためになんか実際に起こってしまったようで・・・。」
「この世界規模の混乱の最中での行方不明ではな、まして極東の島国からの観光の高校生一人が
単独行動中のことだからねぇ。関係各所も動きが鈍いでしょう?。」
「そのとおりですわ、まぁ同じツアーのメンバーは全員事故死ですから当局も簡単だったようで。」
「私の教え子に軍関係の仕事をしてるものがいたな、頼んでみるか?。」
「お願いできますか。」
「わかった、連絡してみよう。」
「そのかわり、今夜・・・。」
「お食事のお誘いでしたら彼が戻ってきた後に、ゆっくりとお付き合いさせていただきます。
今夜は当日の時間帯の分析結果がでますので」
「分析?」
「太陽、月に各惑星の位置や重力場の値に銀河系内の位置など色々ですね、何かがつかめそうなんですけど。」
「超並列高速多重思考型計算機テレスの答えかね。」
「高かったんですけれど、」
「それはまぁいい、結果を知らせてくれレポートでかまわん。」そう言うと立ち去っていった。
悪い人じゃないんだけどね。奥様が先輩だもんねぇ、怖い怖い。
教授がいなくなったあと、彼女も席を立ち研究室を出て廊下のさきにある休憩室に向かった。
世界各地の天変地異は地震、火山の噴火、津波、巨大ハリケーン、竜巻、重力異常・・・。
わずか一週間で全世界で3億人が死亡していた。負傷者はその3倍、行方不明者が10億人といわれる。
まさに、受難の時期なのかもしれない。
そして、過去にもこれと同じようなことが起きていたはずなのだ。
ただその時間が長すぎて記録に残っていないのだけれど。
太陽系が銀河系の中を巡り同じ場所に戻るだけでも大きな変化が過去にあったようなのだが、
綾が定義するのは、銀河系が巡る大銀河団の中で一周した位置における悪天候が続く季節のことで、
こちらはそのサイクルすらわかっていないが、綾はおそらく7億5千万年とみている。
七億五千万年前、そのころ地球はスノーボールと呼ばれる状態であった。
そして、その頃の地球には別の文明があった。その根拠は彼女が隠し持つひとつの化石にある。
偶然見つけた物だったが、彼女に見つけてもらおうとしてたようにも見える現れ方だった。
けっしてその地層にはないはずの物、それは現代では当たり前のもの。
彼女はうすうす感じてはいたのだ。彼女の甥っ子の行方を、信じられない誰にも信じてもらえそうにないそれは…。
「ーまさかね、小説じゃあるまいしー」
その夜、テレスからの結果を受け取り、恐らくだが時間と次元の連続性に異常があったと結論していた。
信じられないことだが一時的に接続していた時間は、おそらく前回この宙域に地球がいたころとあった。
ー推定7億5千万年前ー偶然重なった場所は時間を超えて行方不明者を運び去ったと思われる。
「う~ん、姉さんになんて言えばいいのかなぁ。」立ち上げてあるスカイプの画面を開き、
姉のアイコンをクリックしあえてビデオチャットで回線をつなぐ。
時間を遡ること7億年強。
「じゃあそれでいこう。ゲームと違ってHPゲージがないことをヒーラーの二人は忘れないように。」
「「了解」」
「ヒデさんは前衛のカイムさんとタゲあわせよろしく。」
「おう、足止めはどうする?。」
「雑魚は俺がスリープかけます。」
「わかった。」
「ボスきゃらの(ヘビィベビー)はHPが1/3になると座りこみますが、
その時の衝撃波でHPを持っていかれないように気をつけてください。」
ゲーム?ということばが聞こえたときには耳を疑った。
詩音はこの荒野で出くわした奈良の大仏のような大きさのモンスター
(しかも街道沿いに転々と置物のように座り込んでいる)の数の多さにあきれて、
岩陰で休んでいたところに現れた5人組のパーティに興味を引かれてハイド状態でついてきていたのだ。
幸い数多くいる巨大なモンスターに気を取られてか、尾行してるこちらに気がついていない。
パーティの構成は、重装備の盾持ち戦士がひとり、回復が二人、アタッカーが二人か、大丈夫かな?。
リーダーらしきアタッカーが説明していたこの大仏のようなモンスター、
実は行動パターンが異なる二種類がいる。見た目はほとんど同じなんだが、
先ほど説明していた座り込むのを[A]
座り込んでからさらにその状態で飛び跳ねる着地の度に衝撃波を出す[B]がいる。
詩音はここに来るまでに5体を片づけて、A-A-B-A-Bと当たってその違いを見つけられずに
もう一度観察しているところだった。
「よし、行きます。」カイムという戦士が、大仏(ヘビィベィビー?)の背後に回り
大技(ヘイトが高い)を浴びせて気を引き、さらに威嚇することで大仏を自分の方に向かせた。
これでヒーラーの二人はモンスターの背後にいることになる。
リーダーの魔法使いと弓のヒデ、この二人は左右に分かれた。
じっくり観察してAとBの違いを見極めようとする。見知らぬパーティの戦術はまぁどうでもいい。
最初の一体はAタイプだった。座り込んだ後しばらく弛緩してるのか行動が止まる方だ、
この間にアタッカーの二人が大業を連発しHPを刈り取って、止めの一撃ともいえる戦士の技のコンボでシトメた。
盾である戦士の装備の損害も軽微でパーティは次の大仏に向かった。
3体目を倒してここまでは全部Aタイプ。
流石に魔力が減ってきているのか全員でポッドを飲むなど回復の時間をとっていると、
近くで大仏がリポップした。すぐさま臨戦態勢に入る5人、近すぎるのと各メンバーが近すぎるので、
ヒーラーの一人がスリープをかける。と、雑魚キャラの小坊主が現れてヒーラーに群がる。
それに気がつきヘイトを取ろうとした戦士の雄叫びで寝た大仏が起きる。
ーあらまミスったねー
弓のヒデさんが矢で小坊主を引きつけながら離れていき、
リーダーの魔法使いがカイトという戦士の補佐をしつつ大仏の注意を惹かないように、
HPを削っていくその間にヒーラーたちも間合いを開けていく。
ーナイスリカバリーー
しかし、この大仏がBタイプだった。座り込む際にランダムにジャンプして衝撃波を放った。
「ともかく、礼を言う。あのままだと全滅していたところだった。」
「もう一人のヒーラーさんは妹さん?。」
「ああこいつはね、もうひとりは従兄妹になるんだ、偶然同じゲームをしてるのを知ってさ。」
「そしたら、なんと二人ともヒーラーやってるって職かぶってるし、で回復職なんてソロきっついから、。」
「ああ、わかりますそれ。じゃああの弓の人はフレかなにか?」
「さぁ?あの魔術師に声をかけられた時にはいたから、あっちのつれかも~と思ったんだが。」
「違うかもしれませんね、あっさり見捨てた魔術師に対して、懸命にカバーに走ってましたからね彼。」
「それで、死んじゃあ意味がないんだけど。」
「それじゃあ、迎えに行ってきますのでお二人はここの宿屋ん~とロカーナにいてください。
もしさっきの魔術師が来たら知らない顔をして関わらないように。」
「なぜだ、あの野郎いっぱつかまして」
「ゲームと違って町中でも魔法つかえますよ?。」
「まぁこないと思います、あそことは離れすぎてますから、すぐ戻りますから~と
あなたの使いだという手紙か何か用意しましょうか、相手は私を知らないから。」
「あの・・どうしてそこまでしてくれるんですか?。」
「それは、帰ってからはなします。」
転送ゲートをくぐり恐らく二人がいるであろう神殿の支度室をのぞいてから、
近くの宿屋兼居酒屋である店に入ると、左の隅の方に先程見かけた二人と背中を向けているが
間違えなく仲間を見捨てた男(魔術師=PTリーダー)がいた。
「・・・だから、まさかね俺もあんなのがいるなんて知らなかったんだわ。
とっさに体制を立て直すつもりで引いたところに何度めかの衝撃波をくらって、死ん・・」
自分に都合のいい話をしそうなんで、そいつの背後から先に話してやる。
「死ぬなんて、ドジは踏まずに安全圏までテレポートして、
パーティ壊滅を見届ける前に逃げ出したなんてこいつらの前では言わないけど。」
迎え側に座ったヒーラーと弓使いは突然会話に加わった俺の顔と、
一瞬顔色が変わりうろたえる元パーティリーダーを見比べた。
「あんたは?見てたのか。」
弓使い(ヒデさんだっけ)が、フードに隠れてる俺の顔を見ようとしながら聞いてくる。
「カイムさんともう一人ヒーラーの方も無事ですよ、私は通りかかった際にマッドベビーの衝撃波で
戦闘を知って様子を見に近づいた時に、この人が一人逃げるのを見かけたもんで、
やけにあっさりと離脱したのでねぇ気になって・・・。」
「うっ嘘だ!誰も見てる奴なんて。」
あら、背中越しに動揺が見える気がします。
「おや?周りを見る余裕があったのですか?とっさに離れたけど、
衝撃波を食らったんじゃなかったんでわ?。」
「私には余裕で崩れていくパーティを見ていた、
あなたの顔が怖かったのでお声もかけませんでしたけど。」
「なっ!。黙れ。」
「あのさ、ノーベルンさんもういいですわ。逃げたのか、
誰も見てないとこで死んだのかどっちでもいいですから。
パーティが崩れて俺たちが死に、あんたの支援魔法はこなかったのが事実ですし。」
ヒデさんも気がついたのだろう、声が怖い。
「いや、それは距離が・・・。」
まだ見苦しく、言い訳をしようとすると
「・・・届かない所まで自分だけ逃げた・・」
今まで黙ってた娘がぽつりとつぶやいた声が、一瞬訪れた静寂の中で店中に響いた。
店中の視線が集まる。
ガタンと音を立てて、席を立つノーベルンさん。
「おい、おまえ表に出ろ。」
彼は周囲の視線に耐えきれず逆ギレした。
「おや恐い、力づくですか?。」
「他人のパーティのことで恥かかせやがって、
おめーもそばにいたなら似たようなもんじゃないか?。」
「はぁ?あなたバカですか、いま他人のパーティとかいいませんでしたか、
そばにいても横殴りなんてしませんよ?。マナーじゃないですか。
私は単に事実を教えてあげただけですよ、あなたのパーティメンバーにね。」
「うるせー外に出ろってんだよ。」
そう言うと入り口に向かう。
「はいはい、あっお嬢さん今夜のおすすめお願いします。」
出て行く時に給仕の娘に注文してると、
「てめー戻ってこれると思ってんのか?。」
「?私おなか減ってますからね。」
「さて、外に出ましたけど、おやおやギャラリーも多いですね?。
人気のない路地裏探がします?。」
「炎の竜巻。」
火炎の竜巻が巻き起こりフードを被った詩音にむかう炎にまかれて燃えあがるようにみえる。
しかし、人通りの多い街頭でいきなりである。
「なんだ、口ほどにもない餓鬼が、骨まで燃えちまえ。」
「流石、卑怯な攻撃が得意ですなぁ。」
ノーベルンの背後から詩音の声が聞こえる。ぎくっとして振り返るとそこにいた。
ふりかえると炎にまかれて確かに何かが燃えている。
「て、てめえ何を・・・。」
「あなた、日本人でしょ?知りませんか、あれが変わり身の術というやつですよ。」
説明してる詩音に向けて火炎弾を放つ。それをすべてたたき落としながら、
「危ないじゃないですか、周りの建物に火がついたら大火事になりますよ?。」
周りで見ている野次馬たちからも声があがる。
「ちっ、知ったことかふざけやがって、消し飛べ[大火炎流]。」
それは炎系の範囲の広い魔法で、中型から大型のモンスターかボスクラスと戦うときのもので
けして町中で使っていいものではなかった。巻き添えが大きすぎる迷惑な種類の魔法である。
「「「「に、逃げろ~」」」」
口々に物騒な魔法に気がついた者が声を上げる。
弾くにしてもその方向に問題がある、火炎弾のように地面にめりこませる訳にもいかず、
かといって左右は論外、上方にそらしてもその先で被害をだす恐れがあった。
でどうしたかというと、火炎流の進路上の土の地面を左右持ち上げて(10メートルほど)
さらに、自分の後ろにも同じ高さの土の壁を作った。
そして周りの目を塞いでおいてノーベルンに対面した。
火炎は詩音をさけて土の壁に吸い込まれた。
「て、てめえ・・・魔法・・。」
詩音はその片手に長い槍のような物を持っていたから、槍使いとでも思っていたのだろう。そして
最後まで彼は喋れなかった、地面にめり込んだからだ。彼の周辺の重力だけが20倍程に増えたからだ。
「・・・骨折れたかな?君ねぇ町中であまり派手なのはだめでしょ・。」
いってる本人のやってることもけっこう派手なんだけれど、自覚してるわけではない。
一瞬重力をマイナス方向に変えて地面にめりこんだノーベルンが宙に舞う。
土の壁の高さまで上がったところで再び重力をプラス方向に変える、
猛烈な勢いで地面にめり込むノーベルンだったもの。
「最近さぁ回復呪文を覚えたんだ、一度試したくってねぇ、
[死を司りし神よこの物に永久の祝福を与え]?だっけ・・・」
ノーベルンが聞いていたら「しるっか」だろうし、
僧侶神官の類が聞いていたら、「違う」といわれる呪文を唱える。
このときノーベルンは全身の骨が粉砕骨折し、内蔵も多くが損傷しまさしく死ぬところだったのだけれど、
詩音の中途半端な蘇生呪文はその状態からの回復を促し、まずは臓器が修復され次いで骨が元に戻ろうとする
が、完全に元に戻る寸前で再び元に、つまり骨折し臓器が潰れてしまう。
ノーベルン自身の魔力を使う為にそこからまた回復を始め・・・のループが始まる。
「簡単に死んじゃ彼らの痛みがわからないだろうからね。」
土の壁を元に戻す際にノーベルンは埋めてしまう。
「て・・てめぇ・・おぼえてろ・・。」
土に埋もれながら捨て科白を吐くが聞いてる者がいない。
詩音はすでに元の食堂に戻っている。
ちゃっかりノーベルンが座ってた席の隣に座り、女給の持ってきたお薦め料理に取り組んでいる。
「彼は・・・俺たちを利用したのか?。」
ヒデさんは、あらかた食事を終えた俺に聞いてくる。
「簡単に言うとそうなるね。一人でやるとなると時間とリスクが大きいから、
かく言う俺も二日使って、まだ攻略できてないから。」
「実はね本当のことを言うと、君たちの戦闘も参考にさせてもらおうと見てたんだ。
そうしたらさっきのリーダーぽい人が一人だけ距離をとって見てるじゃないか、
おかしいなぁと思ったら戦線が崩れたでしょ?あなたがヒールしたときにヘイト集めたから、
で、弓のあなたがカバーしようとして走って。その時に彼は助けるわけでもなく、
ヘイトが自分に移る前にゲート開いて逃げちゃうんだもの、見ていて唖然としたね。
思わず飛び出したんだけど間に合わなかったから、戦士ともうひとりの方をね助けてから
安全な場所に移動して君たちを捜しにきたというわけ。」
そういって懐から手紙を出してヒーラーの方に渡して、
「それあの兄妹から、こんな話し信用してもらいにくいし、それ読んで判断してよかったらついてきて
二人のいるところに案内するさ。」
手紙を読み終えた女の子はちょっと涙を流している。(ふむふむ参考にしよう。)
そして、隣に座ってるヒデさんと何か言葉を交わしている。
「セレンに会いたい。お願いします連れて行ってください。」
「はい、承りました。ヒデさんはどうする?。」
彼女が向こうの兄妹と従姉妹なのは聞いてきた、けどこの弓使いのヒデさんは別だ。
もしかしたらノーベルンとグルかもしれないから、連れて行くのも危険かもしれない。
「というか、あんたはノーベルンのダチじゃないの?という疑いを持っているみたいだよ、向こうでは。」
その一言で心なしかエレン(女の子のキャラネーム)が離れた気がするw。
「それはない、俺は基本ソロでプレイしてたんだ。奴とはあそこに行く前に町で会ったんだよ。」
エレンの彼を見つめる目が可愛い。
「仲間なら、見捨てられたりしないだろ?。」
「一緒に行ってくれますか?。手紙はセレンのものだと思います、けれど…」
「けれど?。」
「外で何かがあって、ノーベルンさんが戻ってこないからといって、この人が味方とは限りません。」
おおっと、そうきますか。
「でも、ヒデさんは文字通り命がけで私を守ろうとしてくれましたから。」
「「信用できる?。」」
思わずハモってしまった。
「少なくとも、フードで顔が見えない人よりは。」
あっそうでした、食事中もフードとってなかったです。
なんでとらなかったかというと、面倒臭さいからですよ。
「そうだね、行儀が悪いわね。」
うん、顔が見えないのは信用出来ないよね。フードを上げて顔を見えるようにする。
プラチナブロンドの髪があふれるようにこぼれ出る。
周りの客達が振り返る。そりゃそうでしょ、胡散臭い男言葉喋ってたのが若い娘だったんだから。
自分で言うのも照れくさいけど美人だしさ。
「あっ。」
「えっ。」
「自己紹介しょうか?私はシオン。たぶんあなた達と同じ世界の人間だと思う。」
「じゃあ、あなたもロディニアン・サーガでここに?。」
すいません、それ知りません。どんなゲームですか?
「えっ、ゲームじゃなくまじ旅行中に?。」
はい、で本当は男なんです。というところは伏せておく、話がややこしくなるしね。
「ところでゲームから来た人同士で連絡はとれるんですか?。」
「直前までパーティを組んでた場合は近くにいるので、
でも離れちゃうとチャットが使えるわけではないようですし。」
つまり、連絡はとれないんだ。怖いというか辛いねそれ、今まで出来てたことができないんでしょ?。
なんて話し込んでていいのかなぁ?向こうで待ってるんですけど。
「そろそろ行きませんか?。向こうで待ってることですし。」
店を出て街のポータルゲートを通り過ぎ門から外に出て行く。
夜のフィールドは昼間よりも危険である。
ゲームならモンスターのレベルが格段に上がるところだろう。ただ戦闘をするために出かけるわけではない、
人目に付きたくないだけだから門衛の死角に入ると直ぐにワープゲートを生成した。
「ほら、早く入って。」
「ヒデさんからエレンの手を引いて、私は閉じるからほら。」
そう言って二人を押し込んで、自分が入ったあと直ぐ閉じる。
「街のポータル使わないんですか?。」
「継ってない処にあえて、連れて行ったからね。」
「それは、追跡を防ぐため?。」
「そうね、もう一度くぐってね。」
今度は、ワープゲートを作ってから自然に消える30秒前まで待ってから二人を押しこみ、
自分がくぐる直前に別のワープゲートを作って残しておいた。もし追跡者がいたとしても
後の方に誘導できるように。