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なんでこうなった 2

午後の遅い時間に町の北の方に歩いていく、人の通りは結構多い。

神殿は町の一番北側に設けられることが多いそうだ。

なにか由来があるのだろう今度聞いてみようと思いながら、ラーネさんに手を引かれて歩いていく。

なんだか母親とはぐれたくない子供のようだけれど、女同士だと別段だれも気にしないようだった。

そういえば、うちの高校の女生徒達もよく手をつないで歩いてた気がする。

あれが男同士だと、おぞましいんだが何でかなぁ~。


「シオン、そういえばあなた登録してないわね。」

「へっ?。」

「えっです。」

「・・・はい、すいません。」


ちなみに女の子らしくと、言葉使いが悪いと即訂正されることがある。

諦めて女の子として生きていくためには必要なことだとか…諦めたくなんかないんだが。


「登録ですか、ギルド以外の?。」

「神殿での登録です、先程話した復活のためのです。いい機会ですからついでに登録しておきましょう。

 里に着いてからと思っていたのですが、ここでもいいでしょう。」


やがて行き違う人々にちらほらと同じ色のゆるいローブを纏う人々が増え初めた。


「彼らは神殿につかえる神官たちです。ジロジロみないように。」

「はい。」


神殿の中はあきらかに外とは違う空気があった。

荘厳というのだろうか、意匠は詩音の知る日本の神社仏閣とも、西洋の教会やムスクとは

あきらかに違うどちらかと言えば、ギリシャ、ローマのそれに近い石造りの建物である。

入ったところに社務所のようなところがあるのが微妙だったけれど。

まず最初に、復活の間に続く出迎えの間に向かうための手続きをラーネさんがしている間に周りを見回していると、

天井には見事なフレスコ画があり、そこには神話だろうか天から光臨する神々に付き従う各種族が描かれている。


この世界にはみんなで移民してきたのかな?。

でも大地側にもシルエットになってるけど生物がいるようだ。

ん~こうなるとゲームのオープニングのような舞台設定のムービーが入って欲しいなどと

考えてると声がかけられて、現実に引き戻される。


「何を・・・ああ大地への帰還の図をみていたのですね。」

「帰還、ですか?。」

「そうか、シオンにはまだ話してないことが一杯ありますねぇ。

 シオンの国では人々はどこから来たことになってるのですか?。」


「それは神話とか、伝承でですか?。」

「他にあるのですか。」 

「ええ、進化論を学校では学びます。」

「進化?。」

「人は、いえ地球上の生命は元は一つで進化していくなかで環境に適応して分化し、

類人猿から進化したという考え方です。」

「猿から進化?!。」


「まぁ考え方の一つということです。僕…いや、私のいた世界では科学という分野で、

この世の仕組みを解明しようということから考えられて、生み出されたものです。

宗教的には神によって創られたというのが主流です。」


「ああ魔法が使えない世界だとそうなるのですね。私達はまぁざっくり言うと夜、

天に輝く3つの星がありますよね?その中でもっとも大きく丸い月で神により創られたのが、

エルフ、ムゥーマ、バーバリアン、ホビット、ドワーフで、神々の長と共に天空の階段より

この地に降り立ったと言われてます。」


「よろしいでしょうか?。」


いつの間にか二人の直ぐ側にやって来た、神官の一人が話しかけてきた。


「ラーネ様、残念ながら再生は恐らくありません。オードルト・ハブエランは、

死亡とさせていただきます。」

「・・・そうですか、」

「どういうことですか?。」


理由がよくわからないので聞いてみる。


「通常は組成までの時間は長くても一日なのです。地の果てで亡くなったとしても、

最終登録地に魂が戻るのにかかる時間は一瞬です。」

「仮に、ソウルキャッチャーなる異界の者に捕らわれたとしたら別ですが、

 その場合は時間がかかりすぎて肉体の方が持ちません。登録されたデーターを元に元の肉体を構成し、

魂の定着までにかかる時間の猶予は一日です。彼の場合すでに10日以上過ぎていますが、

一度も再生器は起動しておりません。これは魂の…」


「他の神殿で蘇ったとか?。」


一応っていうか確認のために聞いてみた。


「それは…ありえません。そういう仕組みになっていますので。」


どういう仕組だっと突っ込みたくなるが、まぁ想像はできる。

何らかのネットワークシステムで管理されていて再生にかかる無駄を省いているのだろう。


「それで、登録をされるとか?初めてとかお聞きしておりますが。」

「はい、お願いします。」

「では、こちらへ。」


案内されるまま、ラーネさんと離れて神殿の別の場所に連れて行かれる。

小ホールのような場所の中央に棺のようなものがズラリと並んでいる。


「服を全て脱いで、ここに仰向けで横たわってください。

蓋が閉じた後[聖水]が満たされますが、呼吸はちゃんと出来ますので心配なさらずに、

少しお眠りください。」

「寝るんですか、水の中で?。」


「[聖水]です、水ではないので溺れたりはしません。母親の胎内に居るようなものだとお考えください。」


神官(言い忘れていたが年配の女性)に導かれるままに、とりあえず着てるものは全て脱いで、

棺のような物のなかで仰向けに寝ると蓋が閉じられた。

暗くなった棺の中、背中からジワジワと濡れてくる感じがしたと思ったら液の中にいた。

初めは息を止めていたのだが、いつまでもできるわけもなく観念したら不思議と平気なもので、

普通に呼吸できるなと思ったら眠ったようだった。


遠くでラーネさんと先ほどの神官の声が聞こえてきた。


「…極めて特殊な…ええ…」

「…聞くところによると、シ・ラコー様も…」

「…ここでは…中央…」


覚醒めると液体はなく、不思議と体も濡れていなかったので、傍に置いてある籠から衣類を取り出して

身につけているとラーネさんが部屋に入ってきた。


「行きましょうか。」

「これで、登録されたのですか?。」

「いえ、出来ませんでした。適合する素体がないそうです。」

「別の世界から来ましたしね。」

「そうでしたね。」


神殿から出て行く時に再生の間で蘇ったであろう若者が傍をかけて行った。


「彼は…再生を?。」

「出来たのですね。」


少し悲しそうな顔をしたのを横目で見て、ああ男だったら抱きしめるシーンかな?と考えて、

とりあえず握ってた手に少し力をいれた。


神殿からの帰り道、ラーネさんは夕食を食べていくことを提案したので、この街の飲食店街に向かった。

屋台や高級そうな構えの店までが立ち並ぶその通りは、お腹が鳴き出すいい匂いであふれていた。


「ここにしましょうか。」


そう言って入った店は清潔そうな感じで、でも庶民的な食堂のようなつくりだった。

空いている席に案内されるでもなく腰掛けると、すぐにハーフリングの女性が注文を取りにきた。


「今日はバウナス牛のシチューがお勧めだよ。」

「この子にはそれを、私にはシュラッロのパイをあとパンと…」


「ビールを二杯持ってきてくれ。」


そういいながら、向い合って座ってる俺達の横に椅子ごとやって来たのはエル親父だった。


「いたのね。」

「店に行ってみりゃ閉まっとるし、神殿の方に行くのを見たって聞いたからな。」


エルはなんとなく雰囲気を察して場を盛り上げようとしてくれる。

料理は家庭的なもので、日本の牛たんのシチューとさして変わらない味がした。


ラーネさんの恋人はオードルト・ハブエランといい、この街の鍛冶屋の息子だったそうだ。

素材集めのために外に出て、野獣やら魔獣を排除しつつ貴重な鉱石などを集めていたらしい。

その時に家具屋のエル親父とも知り合ったそうで、彼が旅立つ時に一番心配したのが彼だ。

良質の木材が手に入りにくくなるとかならないとか。

だから冒険をやめてここに帰ってきた時に、エルフのラーネさんを連れていたのでもう大騒ぎで出迎えて、

彼の両親を差し置いて結婚式の手配をした。

それだけじゃなく新居も自分が作ると言って聞かずに、今の店舗兼住宅を中の家具付きで作り上げたそうだ。


「まったく、大人しく親父さんの後を継いで鍛冶屋をやってりゃいいものを…。」

「飲み過ぎよ、エル。」


ドワーフじゃあるまいし、とは言わずに寂しそうな笑みを浮かべている。

いつの間にかテーブルには彼が頼んだ酒の肴と空けたジョッキが増えていく。

彼はなんとなくわかっているのかもしれない、彼女との最後の晩餐になることを。

最愛の男性が戻らない異国に彼女が住み続ける理由がないことを。

そして街を出て行くもう一つの理由が自分であることに気がついてる詩音。

エルは僕(僕だよ、たぶん)に日本のことや家族のことを聞いてくるので、

少しずつ話してやった。


「…戻れるといいな、シオン。…戻してやってくれ、ラーネや。」

「そうね、終わったら帰ってくるから生きててよエル。」


翌日、店の看板を降ろしてギルドに挨拶を済ませたあと、徒歩で街の東門を出て衛兵達の視線から隠れた木立の中で

ラーネさんは呪文を詠唱し始めて、やがて現れたワープゲートをくぐるように指示した。

目まぐるしくその中の情景が移り変わり、淡い光が輝くその環の中にためらいなく入っていく。

輪をくぐった先は湖の畔で、遠く見える山々には薄っすらと雪が光り、近くの森は美しく緑に染まっている。

湖の上を流れてくる風は木々の香りを含み、湖面はきらきらと輝いている。


「ここがエルフの国?。」

「いいえ、ここは違うの。」

「私達エルフの国[イーナハ・ナ]は他国から隔絶したところにあるの。」

「別の大陸に?。」

「いえいえ、そういうことにしてるの。何かと妬まれやすいからね。」


言い終わると歩き出したラーネさんについて湖の中に入っていく、正確には水の上をだが。

湖の中央付近でまた新しい呪文を唱えて、今度は湖の底に向けて降りていく。

空気の泡の中に入ったまま湖底につくとワープゲートを開き転移する。

その後も厳しい山岳地帯や、灼熱の砂漠、絶海の孤島、火山の火口付近などを転々として、

最後に辿り着いたのは地底湖のある鍾乳洞だった。


「ここまで、しないと行けないんですか?。」

「私達と極めて親しい関係にダークエルフという種族がいます。彼らも元は同じエルフなのですが、

彼らはより大きな魔力を求め、禁忌とされた力を手に入れようと神々の住処に侵入し、

ロヴィアの核を盗みだした為に神の怒りに触れその皮膚を焼かれ、故郷を追われた言われています。」


なんか、簡単な設定説明来た~。でもそれとまっとうなエルフが隠れる理由にならないんですけど。


「まさか、逆恨み?。」

「簡単に言うとそうなりますね。」


自ら神の怒りをかうことになって皮膚を焼かれ、故郷は大地の中に沈み、そこに住む同胞の8割を失ってしまった。

エルフの一氏族である[ドルク]彼らのリーダー[イ・ドルフィニク]もまた最愛の妻と娘や息子たちを失っていたが、

残った同族をかき集めて大陸を彷徨い、魔獣や自然の力の前に更に多くの同胞を失いながらも最果ての地に辿り着くまでに、

同族のはずの各エルフ族や他種族に支援を要請したが、神々の怒りを恐れた各種族は彼らを迎え入れることはなかった。


「結果的にそれが彼らを歪めてしまったのです。」


彼らの生きる糧は大陸全土の支配と他種族の特に同族であるエルフ族の殲滅にあるらしい。

彼らは手に入れた魔力の元[ロヴィア]を自在にコントロールすることができる核を使い、

西の荒廃した大地、魔獣が闊歩している場所を制圧し帝国を作り上げた。

神々の祝福を受けていない大地に作られた魔力に支えられた大帝国[ファンデフカ]は力を蓄え、

独自に発展し栄えていく近隣諸国をその力で圧迫しながら。

今の皇帝[ン・ドルフィニク]は最強の魔法戦士として、ダークエルフ6660万人の頂点に君臨する。

そして帝妃[シ・ラコー]彼女は最大の魔力を持ちそれを分け与えることができる。

その勢力に隣国で大陸西方のムゥーマ(人間)国家連合を統治する[オーラゲン帝国]は、

共に大陸全土を制覇する野望と共に協定を結んだという。


「オーラゲン帝国?。」

「あなた達ムゥーマの繁殖力は爆発的で、最盛期には大陸全土に十億人はいるといわれてね。」


増加する人口は西方の大地にも数多くの国家誕生させた、けれど近くにダークエルフの大帝国があることや、

資源の争奪等で争いが絶えず戦乱が数十年続いた後、それを統一したのが初代オーラゲルド帝王で、

彼とともに戦乱を闘いぬいた5人の騎士を大公として祝し、それぞれ等分の国を与えて公国として、

それら5大公国の藩主として君臨しているという。

さらに各公国の騎士団は大陸最強を謳い東方各国を牽制し、大陸中央の中立地帯では絶えず戦闘が起きている。


「でも、そんな軍事力があれば…。」

「そうね簡単に東方各国を制圧できると思うわね。」

「そうじゃないの?。」

「我々が神に愛されてると思い込んでるからね。」

「手を出すと粛清されると?。」

「特に我々が鍵だと思ってるの、隠れたからねぇ。」

「だから居場所を特定して?。」

「そう一気に根絶やしにしてしまおうと。」




「止まれ、何者か?。」


鍾乳洞を出ようとするあたりで声がかかる。


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