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竜魔玉  作者: 鈴神楽
6/14

ベルリンの壁が鳴らす、対立者のノック

ベルリン、それは、多くの因縁が交わる街

「今回は、かなり面倒な状況になっているよ」

 較の言葉に良美が言う。

「どんな感じなの? もしかして魔王が手に入れていて、その魔王と戦って勝ち取らないといけないとか?」

 エアーナが言う。

「魔王がそうそう居るとは、思えませんけど」

 智代が気楽に優子を指差して言う。

「ここにも一体居るけど」

「あたしは、魔王では、ありません!」

 クレームを言う優子を無視して較が言う。

「だったらまだ楽なんだけど」

「それを楽と言えるのは、ヤヤだけだろうな」

 雷華が苦笑する中、較が足元の瓦礫の一つを手にとって言う。

「これなんだか解る」

 差し出された小較が首を傾げる。

「ただの壁の瓦礫にしか見えないけど」

 較は、瓦礫でお手玉しながら言う。

「そう、ただの瓦礫。だけどただの瓦礫って訳でも無い」

 智代や良美も首を傾げる中、優子が言う。

「ベルリンの壁の瓦礫だよね。まだ残っているんだ」

 苦笑する較。

「これは、観光客用のレプリカだよ。本物だったら、小較にも解る。一時期は、その破片を呪詛の道具に使用する奴らが居たくらいだもん」

 良美が眉を顰めて言う。

「結局、何が言いたいの!」

 風太が答える。

「未だに無くなっていないって事だろう、東と西とを遮断する心のベルリンの壁が」

 頷く較。

「竜魔玉は、その両方の組織で、血で血で洗う略奪戦の真只中なんだよ」

 風太が嫌そうな顔をする。

「それって一番厄介じゃないか。この手の東と西と争いは理屈で片付かないぞ」

 較が大きくため息を吐く。

「そう。一応、両方の組織と交渉をしているけど、お互いを牽制し合ってる所為でまともな交渉にならない」

 良美があっさりという。

「強引に奪い取れば良いだろう」

「どこに在るかも解らないのに?」

 較の言葉に小較が言う。

「竜魔玉だったら、力を発動すれば解ると思うけど」

 雷華が手を横に振る。

「そんな争奪戦の最中にそんな解りやすい事は、しない。それでどうするんだ?」

 較が疲れた顔をして言う。

「お金を使って、両方のトップと会談する段取りをつけているよ。そこで竜魔玉の譲渡をお願いする予定」

 智代が気楽に言う。

「絶対に上手く行きそうもないね」

「智代!」

 エアーナが文句を言うと智代が反論する。

「普通に考えて、どっちも自分が持っているなんて言わないよ」

 肩をすくめて較が言う。

「多分、それが正解。だから、こっちもそれを前提に無理やり話を進めるよ」

 こうして、較は、会談のホテルに向かうのであった。



 ベルリンの最高級ホテルのレストラン。

 元東ドイツに拠点を持つ魔法結社『鉄十字架』の首領、魔法戦車が言う。

「竜魔玉の経緯は、わかりました。しかし、我ら鉄十字架は、その様な物を持っていません」

 すると向かいに座っていた元西ドイツに拠点を持つ魔法結社『炎鷹』の首領、紅鷹も言う。

「我々、炎鷹も同様だ」

 較は、頬をかきながら言う。

「でしたら、無い物を奪われても双方とも問題ないと思って宜しいですか?」

 魔法戦車が不満げな顔で言う。

「どういう意味だ?」

 紅鷹が威嚇するように睨みながら言う。

「八刃は、何の根拠も無く我等と争うつもりか?」

 較が笑顔で言う。

「誤解されやすいんですけど、八刃が守っているのは、ルールでなくマナーなんですよ。破ったからって罰則があるわけじゃないですよね」

 テーブルに緊張感が走る。

「鉄十字架を見下すつもりなら、例え八刃であろうとも容赦は、しない」

「炎鷹の嘴がその心臓を貫くと思うがいい」

 魔法戦車と紅鷹の言葉に較が言う。

「その言葉そのまま返します。八刃は、あからさま嘘の誤魔化しで引くほど甘い組織ありません。そして、あちきは、その中でも凶暴さで有名なんですよ」

 席を立つ魔法戦車。

「話にならないな。所詮は、モンゴリアンの小娘ということだな」

 紅鷹も同様に席を立つ。

「もしも我らに敵対するのなら、覚悟をしておけ」

 較は、そのまま、自分達の部屋に戻る。



「それって喧嘩を売りに行っただけじゃないか」

 雷華の言葉に較が言う。

「後処理の問題だよ。奪還した後、無い物の返還を求められる事は、無いでしょ。その他の被害を補償すれば、基本的には、あっちが折れるよ。八刃相手に本格的に争う馬鹿は、そう居ない。そういう意味では、ネオナチ系の組織が絡んで来なかったのが救いだね」

 智代が首を傾げる。

「なに、そのネオナチって?」

 優子がため息を吐く。

「ナチズムの一種。大元は、ヒットラーが行っていた政策なんだけど、現代においては、暴力的な国粋主義って言うのが簡単かしら。とにかく、自分達が最高だって事を疑わない狂信的な人々の集まり」

 風太が苦笑交じりに言う。

「はっきり言ってしまえば、外国人労働者や儲かっている海外企業等を排斥して、自分達に仕事や利益をよこせって行ってる連中だ」

 エアーナが眉を顰めて言う。

「叔父さん、それは、はっきり言いすぎ。もっと複雑な政治背景もあるんだから」

 較が淡々と言う。

「でも、大枠は、外れてないと思う。こういった主義主張は、利益がどうしても絡む物なんだよ。今回の東、西の問題も統一の際に自分達のテリトリー問題で騒ぎになったのが尾を引いてるの」

 良美がつまらなそうに言う。

「下らない事で争ってるんだな」

 強く頷く一同であった。



 魔法戦車の部屋。

 部下の一人が言う。

「それでは、交渉は、決裂と言う事でしょうか?」

 魔法戦車は、苦笑をしながら言う。

「元から、交渉など成立するわけが無い。あの小娘の目的は、我らに竜魔玉を持っていないと言わせること。その上で強引に奪回して、後は、有耶無耶にするのが目的だろう」

「我々も随分と舐められた物ですね」

 憤慨の表情で言う部下に対して魔法戦車が言う。

「馬鹿が、奴らには、それだけの力がある。積極的に勢力争いに関わりあわない故にルールを持たない奴らを縛るのは、マナーだけ。しかし、今回の事は、いいチャンスなのかもしれない。問題の竜魔玉は、我々の手に無い以上、炎鷹が持っている筈。奴らの所に八刃が強襲し、弱体したところを一気に勝負を決める。八刃にそれとなく情報を流せ」

 部下が指示通りに動き出す。



 紅鷹の部屋。

「我々が持っていないって事は、竜魔玉は、鉄十字架の手にある筈。その情報を小娘に流せば、奴らの施設が攻められる。その直後に我らが攻めれば、長きの争いに決着をつけてやる」

 部下の一人が言う。

「それでしたら、こちらが持っている鉄十字架の重要施設の情報を流しておきます」

 強く頷く紅鷹。

「任せたぞ」



 翌日の昼、較達は、部屋で、昼ごはんを食べて居たが、較がいくつかの書類を見ながら難しい顔をしていた。

「折角の本場のウィンナーなのに、どうしたの?」

 良美の言葉に較が資料をテーブルに放りだしながら言う。

「明らかに虚実情報が混じっている」

 資料を軽く目を通して優子が言う。

「もしかして、昨日言っていた、組織、両方の施設の情報ですか?」

 較が頷く。

「それもかなり詳しい。十中八九、もう一つの組織が流したんだと思う。竜魔玉を狙って相手の組織をあちきが襲撃する事を狙っているんだよ」

 エアーナが考えながら答える。

「もしかして、どちらの組織も持っていないって事ですか?」

 較が眉を顰めながら言う。

「一週間前まで確かに、竜魔玉が双方の施設を行き来していたのは、確かだよ」

 そんな中、チャイムが鳴る。

 小較がドアに向かう。

「どちらさまですか?」(英語)

「白風の次期長は、いらっしゃいますか?」(英語)

 そういったのは、どこか鉄十字架に似た雰囲気を持った大学生くらいの少年だった。

「ヤヤお姉ちゃんだったら居るけど、何の用?」(英語)

 すると、少年の横に居た同じ年くらいの少女が言う。

「竜魔玉を渡しに来たのです」(英語)

 そういって、鞄から竜魔玉を取り出す。

「えー!」

 竜魔玉を見て驚く小較であった。



「詰り、このままでは、お互いの組織が潰れる可能性があったから、竜魔玉を盗み出してあちきの所に持ってきたって訳だね」(ドイツ語)

 較の言葉に魔法戦車の息子、ハルートが頷く。

「そうです。私は、このままでは、お互いの組織にとってマイナスになると思ったのです」(ドイツ語)

 較は、竜魔玉を実際に盗んだ、紅鷹の娘、ミッシェラを見る。

「どうか、受け取って下さい」(ドイツ語)

 差し出される竜魔玉を見て良美が言う。

「何にしろラッキーだったじゃないか」

 そんな気楽な意見を言っていると智代がやってきた二人を見て言う。

「もしかしてこの二人ってロミオとジュリエット?」

 すると優子の中の淫虫の魔王が言う。

「それは、凄い。じっくり話を聞かせて貰いたいです」

 日本語がわからない為、首を傾げる二人に較が通訳すると、ハルートが慌てて言う。

「ミッシェラとは、そんな関係では、ありません。それは、素敵な女性だと思いますが……」(英語)

 顔を赤くするハルートを見てミッシェラも顔を赤くして俯く。

「そうです。ハルートをカッコイイと思いますが、お互いの立場がありますから」(英語)

 最後の方が悲しそうになるミッシェラの言葉にエアーナが首を横に振る。

「そんな身分なんて物で諦めたら駄目です!」(英語)

 頷く智代達を尻目に較が席を立つ。

「二人のなりそめを話していて。これって淫虫の魔王を返す為の行為だから、こっちの世界の人間の義務だよ」(ドイツ語)

 コイバナで騒ぐ友達を尻目に較は、風太と隣の部屋に移る。

「どう思います?」

 風太が頭をかきながら言う。

「間違いなく裏があるな。本音を言えば、ここで受け取ってはい、さようなら出来たら楽だと思うが、後味が悪い事になるな」

 較が頷く。

「あちき一人の事ならそれでも良かったんですけど、皆が関わっていますからね」

「どうするんだ?」

 風太の質問に較が笑みを浮かべる。

「そっちがその気なら、思いっきり派手にするだけです」



「そういう事で、お宅の息子さんと娘さんを暫くお借りします。息子さん達にも言ったんですけど、これってこっちの世界の義務なんで諦めて下さい」

 較が呼び出した魔法戦車と紅鷹に宣言する。

「そんな事が認められると思うのか!」

 魔法戦車がにじり寄って来る。

「なぜ、ミッシェラが鉄十字架の所の馬鹿ガキとそんな関係だと思われないといけないのだ!」

 紅鷹の言葉に魔法戦車が睨む。

「それは、こっちの言葉だ! どうせ、おまえの所のあばずれが露骨にセックスアピールしたんだろうが!」

 この後、暫く未成年お断りの罵詈雑言が続く。

 二人が今にも死闘を始めそうな顔で睨みあう中、較が言う。

「とにかく、竜魔玉があちきの手元に来たので、これでこの一件は、解決しました。ご協力ありがとうございます」

 頭を下げる較に魔法戦車と紅鷹が同時に文句を言う。

「「納得できるか!」」

 較が笑顔で言う。

「取り戻しに来ますか?」

 魔法戦車が断言する。

「息子は、必ず取り戻す!」

 続いて紅鷹が言う。

「娘は、返してもらう!」

 肩を竦める較であった。



 部屋では、困った顔をしたハルートが言う。

「白風の次期長、どうして父に話したのですか!」(ドイツ語)

 較が目を輝かせる優子(その中の淫虫の魔王)達を指差して言う。

「あれがそう簡単に開放してくれそうも無いからです」(ドイツ語)

「ですから、私とハルートとは、そんな関係では、無いのです!」(ドイツ語)

 ミッシェラの言葉に較が肩を竦めて言う。

「淫虫の魔王が納得しない限り、あちきでもどうしようもありませんよ。頑張って説得して下さい」(ドイツ語)

「道で偶然出会ってからのくだりを詳しくお願いします」(英語)

 淫虫の魔王の言葉に、ため息を吐きながらもハルートが言う。

「ですから、ただお茶を飲んだだけで」(英語)

 そんな会話を聞きながら雷華が言う。

「あの二人、言い訳すればするほど、相手の興味を引くって解ってないのか?」

 較が頷く。

「そうでしょうね。傍目から見ればあの二人が好き合ってるなんて丸解りですけど、こういうのって本人達は、気づかないもんですよ」

 雷華が窓の外を見ながら言う。

「随分と、物騒な連中が居るがどうするんだ?」

 較が平然と答える。

「迎え撃つだけです」

 その言葉と同時に窓が割れて炎鷹のマークを纏った男達が窓から突入し、次々と放たれる炎の魔法。

『カーバンクルパラソル』

 小較が炎を逸らしている間に、較が接近。

「正当防衛だよ」

 純粋な体術だけで蹴散らしていく。

 次の瞬間、ドアが吹き飛び、武装した鉄十字架のメンバーが襲ってくる。

『アテナ』

 棒立ちする較に重火器が直撃する。

「これでやったぞ! 所詮は、小娘が我ら鉄十字架に逆らったのが間違いだ」(ドイツ語)

 鉄十字架が歓喜の声をあげる中、砂煙が晴れ、汚れ一つ無い較が姿を現す。

「冗談だろう?」(ドイツ語)

 ゆっくりと近づく較に鉄十字架が集中攻撃を仕掛ける。

「化け物……」(ドイツ語)

 逃げ帰る鉄十字架。

 そして、魔法戦車が現れる。

「八刃相手に部下では、歯が立たないみたいだな。しかし、私は、違う!」(ドイツ語)

 胸の鉄の十字架を突き出す。

『鉄十字架の光』(ドイツ語)

 強烈な光が較に向かって放たれた。

『カーバンクルガンドレット』

 較が手に力を溜めて、弾く。

 弾かれた光は、壁に大穴を明ける。

「鉄十字架には、それが限界だろう。誇り高き、炎鷹の力を見ろ!」(ドイツ語)

 巨大な炎で出来た鷹が較に襲い掛かる。

『アポロンビーム』

 較は、指先から連続して熱戦を打ち出して、炎の鷹を切り裂く。

 その様子を見て雷華が言う。

「こうしてみると、ヤヤって出鱈目に強いな」

 良美がつまらなそうに頷く。

「まあね。伊達や酔狂で魔王とかと戦っていないよ」

 次々と技を出す魔法戦車と紅鷹だったが、較は、あっさりいなしていく。

 そんな中、ハルートが駆け込んでくる。

「父上、これ以上は、無意味です。止めてください!」(ドイツ語)

 そしてミッシェラも。

「お父様、どうか、ここは、引いてください」(ドイツ語)

 そんな二人の行動に魔法戦車と紅鷹の動きが止まった。

 その瞬間、較が動いた。

『ダブルガルーダ』

 突風が魔法戦車と紅鷹を吹き飛ばす。

「白風の次期長、どうかお止めください。父達には、私達がきっと説得します!」(ドイツ語)

 ハルートがそういって魔法戦車に近づこうとした時、雷華が心光刀を突きつける。

「そこまでだよ」

 言葉は、解らなくても突きつけられた刃で動きを止めるハルート。

 ミッシェラの隣にも良美が居た。

「あなたも動かないでね」

 ハルートが悔しそうに言う。

「貴方達は、どうしても父達を殺したいんですか!」(英語)

 較が鋭い目をして言う。

「あからさまな殺気に気づかないほどあちきが鈍感だと思ったわけ」(ドイツ語)

 魔法戦車が怒鳴る。

「どういうことだ!」(ドイツ語)

 紅鷹は、愕然としてミッシェラを見る。

「まさか、お前は、『逆卍』と通じていたのか!」(ドイツ語)

 その一言に魔法戦車がハルートを見る。

 ミッシェラが舌打ちと共に言う。

「いつまでも、昔の利権に拘る時代は、終ったのよ!」(ドイツ語)

 ハルートが近づき言う。

「そう、東や西など冷戦の為の下らない区切りで争う浅はかな者達の時代は、終った! これからは、逆卍こそが、ドイツを統括する!」(ドイツ語)

 言葉も無い親に代わって較が言う。

「詰り、簡単に言うと、自分達のやりたい事をするのに父親の組織が邪魔だから、竜魔玉の争奪戦を使って弱体化を狙っていたけど、あちきが来たから、竜魔玉を渡して、あちきを襲撃させる段取りにして暗殺を企んだって訳だね」(ドイツ語)

 ハルートが怒鳴る。

「五月蝿い! 何も解らぬ小娘が、これには、深い事情があるのだ!」(ドイツ語)

 較が頭をかきながら言う。

「そんなに時間が無いと思うけどね」(ドイツ語)

 ミッシェラが首を傾げる。

「時間が無いってどういうこと?」(ドイツ語)

 その時、ホテルが振動し、崩れていくのであった。



 ベルリン国際空港のロビー。

「結局、何がどうなってどうしたんだ?」

 良美の言葉に、較が言う。

「ドイツには、西とか東とかネオナチとかより古い因縁があるのを知ってる?」

 疑問符を浮かべる良美や智代達をよそに優子が答える。

「ユダヤ人との確執ね」

 頷く較。

「逆卍は、ゲルマン民族の集まりだったらしくね、ユダヤ人迫害までやっていた。それが過去との因縁とリンクしてしまってユダヤ人組織に恨みを買っていた。あのホテル、ユダヤ人の持ち物で、今回の騒動を聞きつけて、あんな派手な報復行動に結びついたの。鉄十字架や炎鷹もユダヤ人と仲良くなかったから、ついでだったんだと思うよ」

 エアーナがため息混じりに言う。

「結局のところ、人種や主義主張での差別での争いだった訳ですね」

 較が小較の肩に手を置いて言う。

「過去の因縁で争うなんて醜いことなのよ。それを今回の事が証明してくれた。あちき達は、未来を見据えて生きていかないといけない」

「解った」

 小較が素直に頷く中、風太が読んでいた新聞を見せて言う。

「話が変わるが、ベルリンの町で連続して起こった建物崩壊事件だが、最初のホテル崩壊以外には、爆発物を使った痕跡がないそうだぞ」

 雷華が言う。

「全部、ヤヤがやったのか?」

 遠い目をして較が言う。

「あのまま中途半端に恨みが残るくらいなら、全部に同じように被害を出しておけば大丈夫かなと思ったんだけど、上手い具合に同じにならなくって、調節している間に被害が随分と拡大してただけ」

 良美が一言。

「過去の因縁なんて気にならないほど憎まれ役になった訳だな。さぞ周りの連中が苦労するだろうな」

 風太が何気なく視線を送った先では、疲れた顔をした日本人がベルリン市外に向かっていくのであった。



 こうして、六つ目の竜魔玉を手に入れた較達が次の竜魔玉の探索に向うのであった。

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