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竜魔玉  作者: 鈴神楽
4/14

ローマのコロッセオで響く、剣闘士の剣音

五対五の対戦形式。ヤヤは大将では、ありません

「えーと、今回も、場所が判明しています」

 ローマに向かう飛行機の中で較が面倒そうに告げる。

「またか? ワンパターンになってないか?」

 良美の突っ込みに較が言う。

「あれだけのパワーがある神器だから現地の組織が確保している確立が高いのは、仕方ないことだよ。だいたい、欲望を吸収するのが目標だから、何かの映画みたいに遺跡の奥地にあるなんて確立の方が低いんだよ」

「なんかつまらない!」

 変なクレームをあげる智代をなだめながら優子が言う。

「それで、今回は、どんな組織なんですか?」

 較が説明を開始する。

「ローマ帝国時代から暗躍する組織で、コロッセオでの賭け試合を主な活動としているよ」

「ヤヤがやっていたバトルみたいな物?」

 良美の言葉に較が手を横に振る。

「あれとは、方向性が違うよ。こっちの方が、ショー的要素が強くて、そこそこルールがある」

 智代が手を上げる。

「そのバトルって何?」

 雷華がいやそうな顔をして言う。

「噂だけは、聞いたことあるが、あんなもんに参加してたのか?」

 苦笑いをしながら較が言う。

「若気の至りって奴です」

「話を戻すけど、その組織相手に、交渉中なの?」

 優子の言葉に較が首を横に振る。

「交渉は、終って居る。条件は、簡単で、あちらが選んだ五名と戦って、勝ち越す事」

「だったら、ヤヤが独りで勝ち抜いておしまいね」

 智代の言葉に較が溜息を吐く。

「そうも、いかないの。こちらから、それも竜魔玉に関わった人間から五名を出して、勝ち星の数で勝たないと取り返せないの」

 沈黙の後、智代とエアーナ、優子が声を驚く。

「あたし達まで出ないといけないんですか?」

 エアーナの問い掛けに頷く較。

「とりあえず、あちきと良美と小較が出るとして、雷華も大丈夫だよね?」

 雷華が頷く。

「まあ、他の奴等より戦闘なれしてるな。それで残り一人は、誰にするんだ?」

 緊張する智代達。

「ここは、安全性から考えて、優子にお願いしたいんだけど?」

「どうして!」

 較の言葉に、優子が大声を出し、回りから嫌な顔をされるのであった。



「それで、順番は、決まったのか?」

 ローマで車を運転する風太の言葉に良美が胸を張って言う。

「あたしが先鋒だ!」

 雷華が続く。

「心光刀があるし、あたしが次鋒」

 元気よく手を上げる小較。

「それで、あたしが中堅だよ」

 それを聞いて風太が言う。

「それじゃ、まさか鈴木さんが副将か?」

 優子は、悲しそうに首を横に振るのを見て風太が言う。

「結局メンバーをかえたのか?」

「あちきが副将で、優子が大将だよ」

 較の言葉に、思わずアクセルを踏む風太。

「冗談だろ!」

 較が首を横に振って言う。

「本当。まあ、出来れば優子の出番が無い様にする目的もあるんだけどね」

 風太が頷く。

「確かに、大将までに決めておけば安全だな」

 較が複雑な顔をして言う。

「精神的にね」



 そして較達は、コロッセオの地下に隠された闘技場にやってきた。

 地上のコロッセオよりも広く立派な施設にエアーナが驚く。

「こんな凄い施設が地下にあるなんて……」

 良美が呆れた顔をしていう。

「金持ちは、こんなくだらない事に金をかけたがるんだよ。こんな所に使う金があったら、空手や柔道で使う武道館でも作った方が建設的なのに」

 優子がため息を吐く。

「確かにそうですよね。前にテレビでやっていた競馬場や競輪場って賭け事の施設もお金がかかっていました」

 風太が頬をかきながら言う。

「儲かる上、納税率も高いからな」

 智代は、半目で言う。

「大人って本当にギャンブルが好きなんだから」

 見るからに金持ち連中の薄汚れた感情を露にする中、較達は、闘技台の横まで来る。

「それじゃ、一番手行きます!」

 元気いっぱいに闘技台に上がる良美。

「無理しないで、良いからね!」

 較の言葉に良美が拳を握り締めて言う。

「この頃、偉そうに言うだけの口だけキャラって勘違いされがちだからね。ここら辺で武闘派だって事を見せてやるんだからね!」

 燃える良美を見ながら雷華が言う。

「それで勝ち目は?」

 較が大きなため息を吐いて言う。

「あるわけ無いでしょう。ヨシが強いって言っても学生レベルの話で、ここに出るのは、プロやその上のレベル。相手にならない筈だよ。危なくなったら助けるけどね」

 敵側の選手が現れた。

「あれって何処かで見たことがあるような……」

 優子の言葉に較が頷く。

「麻薬を吸って辞めさせられた元関取のロシア人、ボルボ=ボルッスだよ。こんな所まで堕ちてたみたい」

 ボルボが余裕の笑みを浮かべる。

「楽な仕事だぜ」

 四股を踏むボルボを良美が睨む。

「あんたには、負けないよ! 力士をくびになった後に相撲は、八百長だって週刊誌に言い周り、金儲けしようなんて最低の奴なんかにわね!」

 ボルボも顔をゆがめる。

「ウルセエ!」

 にらみ合う二人。

『第一試合のコロッセオ代表は、コロッセオ一の重量級、重戦車ボルボ!』(英語)

 アナウンスに会場が盛り上がる。

『対するはコロッセオを馬鹿にする愚かな挑戦者の一人目は、ヨシミ=ダイモン!』(英語)

 色々な国の言葉で中傷の声が上がる。

 良美は、それを無視して構えを取る。

『試合開始!』(英語)

 アナウンサの声と同時にボルボが当りに来る。

 良美は、拳を前に出した。

 次の瞬間地面に突っ伏したのは、ボルボだった。

 会場は、ざわめきアナウンサは、叫ぶ。

『ボルボ! 何を遊んでいるんだ! 早く立ってくれ!』(英語)

 会場も同様の感想だったみたいだ。

「どうなってるんだ?」

 風太の質問に較が答える。

「中国拳法の技法の一つの応用でね。自分の体を大地から伸びる一本の棒とする事で、相手の力をそのまま相手のダメージに繋げる技。護身用に教えておいたんだけど、まさか本当に通用する馬鹿が居るとは、思わなかった」

「どうして? 凄い技なんでしょ?」

 智代の質問に較が苦笑する。

「あのね、本気の一流どころは、その程度の事は、考慮して動くの。あんな自分のパワー頼りの正面からぶつかりなんて二流のやる事なんだよ」

 倒れたまま起き上がらないボルボに審判も諦めて良美の腕を上げる。

『第一試合勝者、ヨシミ=ダイモン』(英語)

 ガッツポーズをとる良美にブーイングが巻き起こる。

 降りてきた良美の換わりに雷華が闘技台にあがる。

 そして次の対戦者は、霧と共に現れた真赤な目をした吸血鬼だった。

『第二試合のコロッセオ代表は、コロッセオの潜む闇、吸血鬼ドラキュルス!』(英語)

 その牙を見せると会場からも恐怖と興奮の悲鳴があがる。

『対するはコロッセオを馬鹿にする愚かな挑戦者の二人目は、ライカ=アカメ!』(英語)

 吸血鬼が獲物を見る目で雷華を見る。

「日本人の少女、それも処女。美味しそうだ」

 雷華は、肩をすくめる。

「残念だが、あたしは、血を吸わせるつもりは、無い」

 笑みを浮かべるドラキュルス。

「いつまでそんな強気の発言が出来るかな?」

『試合開始!』(英語)

 アナウンサの声と同時にドラキュルスは、霧に変わる。

 しかし、雷華は、平然としている。

 そして、雷華の背後にドラキュルスが再び姿を現す。

『我が心を喰らい、魔を討つ刃を生み出せ、心光刀』

 雷華の心光刀の一撃は、ドラキュルスにクリーンヒットする。

「馬鹿な!」

 再び霧に変化するドラキュルスだが、雷華は、余裕たっぷりな態度で待つ。

 そして再び雷華の背後で元に戻るドラキュルスだが、その顔に心光刀が突き刺さる。

「グガァー!」

 呻くドラキュルスに雷華が言う。

「霧変化って防御と逃亡に向いているけど、それだけ。こんな場所でやっても変化にかかる時間で十分に攻撃できるよ」

「小娘が! 我が能力がこれだけだと思うな!」

 今度は、狼に変化し、襲い掛かるドラキュルスだが、雷華は、動きを読みきって一撃を食らわす。

 その様子を見てエアーナが言う。

「何かかなり余裕みたいですけど……」

 較が頬を掻きながら言う。

「まあ、ヴァンパイアハンターやっていた雷華に吸血鬼をぶつけるなんて、ものすごくアンラッキーだよね」

 全ての攻撃が打ち破られ、あっさり滅ぼされるドラキュルス。

『第二試合勝者、ライカ=アカメ』(英語)

 ブーイングの中、降りてきた雷華が言う。

「これで勝ちが決まったな」

 小較が拳を握り締めて言う。

「あたしが勝利を決めてきます!」

 闘技台にあがる小較。

「無茶したら駄目だよ!」

 優子が心配する。

 そして、対戦相手が現れる。

 今までと比べると人のよさそうな男性だった。

「何か普通、小較だったら楽勝じゃない」

 智代の気楽な言葉に較が顔を歪める。

「やばい、あいつバトルのB級闘士。それも相性最悪だよ」

『第三試合のコロッセオ代表は、コロッセオにやって来た歴戦の傭兵闘士、微笑のバルソン!』(英語)

 今まで一番の歓声があがる。

『対するはコロッセオを馬鹿にする愚かな挑戦者の三人目は、コヤヤ=シラカゼ!』(英語)

 流石に白風の名前には、驚きの声があがる。

「おてやわかにお願いするよ」(英語)

 笑顔でそういってくるバルソン。

「あたしは、負けないよ!」(英語)

 小較がやる気たっぷりに答える。

『試合開始!』(英語)

 それと同時に小較が手を振る。

『ガルーダ』

 突風がバルソンに襲い掛かるが、バルソンは、避けず突風に乗って飛び下がる。

 小較が一気に接近し、バルソンは、手榴弾を地面に叩きつける。

 その途端、視界を塞ぐ煙が充満する。

 小較は、すぐさま気配察知に切り替え、背後に居る事を察知する。

『ガルーダ』

 突風で煙を排除するが、そこにバルソンが居ない。

「嘘?」

 その直後、小較の首筋にナイフが当てる、一瞬だけ気配をあからさまに放った後、気配を消して回り込んだバルソンだった。

「まだやるかい?」(英語)

「まだだよ!」(英語)

 小較が叫ぶが較が闘技台に上がり言う。

「首筋にナイフを当てられた時点で負け」

「でも……」

 悔しそうな顔をする小較に較が言う。

「悔しかったらもっと修行しないさい」

 うな垂れて降りていく小較。

『第三試合勝者、バルソン』(英語)

 勝ち名乗りを受けるバルソンに較が頭を下げる。

「妹を傷つけないで下さってありがとうございます」(英語)

 それに対してバルソンが苦笑する。

「ノンデッドクラッシャーを敵に回すのが嫌だっただけですよ」(英語)

 そのまま闘技台を降りていく。

 そして、較の前に体中に爆弾を身につけた男が上がってきた。

『第四試合のコロッセオ代表は、病気の娘の為に命を懸ける男、命懸けヘルカイ!』(英語)

 いつもと違い、観客の受けが悪い。

 中には、明らかに不機嫌そうな顔をする客も居た。

『四人目の挑戦者は、バトルでもその人道を外した非道ぶりで名を馳せた化け物、ヤヤ!』(英語)

 会場がどよめく。

「ヤヤって有名なんだね」

 智代の言葉に良美が頷く。

「そうだね。こっちの業界じゃ知らない人間のほうが珍しいって話だよ」

 較は、死相を見せるヘルカイに言う。

「もしかして、自爆しても賞金が出る事になってるの?」(英語)

 ヘルカイが頷く。

「ああ、とにかくお前に負けなければ、娘の手術代とその後の治療代が手に入るんだ。絶対に負けない。例え、私が死ぬ事になっても」(英語)

 困ったって顔をする較。

『試合開始!』(英語)

 すぐさま、ヘルカイは、手に持った重火器をフルバーストしてくる。

『ガルーダカーテン』

 較の手の振りと同時に生まれた風が突風になり、攻撃から観客席を守る防弾ガラスに逸らしていく。

 ヘルカイは、諦めず、接近戦を挑んでくる。

 その手にある禍々しいオーラを放つ刀を見て較が言う。

「それって、人の魂を食らう妖刀じゃない?」(英語)

 一振り毎に魂を削られる恐怖に打ち勝ちながらヘルカイが言う。

「娘が助かる為だったら、魂だって幾らでも売ってやる!」(英語)

 較は、その一言で覚悟を決めた。

『オーディーン』

 妖刀は、断ち切られる。

 その瞬間、ヘルカイがしがみ付いてくる。

「死んでも、負けない!」(英語)

 しかし、較は、冷静に対処をする。

『シヴァ』

 ヘルカイの体が氷漬になり、爆弾の効果が失われる。

「まだやれるつもり?」(英語)

 ヘルカイが叫ぶ。

「まだだ、私は、絶対に負けを認めないぞ。例えこの体が砕かれ頭だけになってもな!」(英語)

 小さくため息を吐くと較が右腕を振り上げる。

「まともな判断が出来なくするしかないみたいだね」

 冷酷な目をする較。

 その手が振り下ろされそうになった時、良美が割って入る。

「これ以上は、やらせない!」

 腕を止める較。

「邪魔しないでよ。ここで負けたら、優子に回る。それは、色々と面倒なの。だからこいつを……」

 良美は優子を指差して言う。

「その判断は、優子にさせるべきだよ。どうする?」

 優子は、真剣な顔で言う。

「止めて。あたしががんばるからこれ以上は、やめて!」

 大きなため息を吐いてシヴァの氷を解除して言う。

「ギブアップだよ」

「これで娘が……」(英語)

 安堵の顔で倒れるヘルカイ。

 審判が倒れたヘルカイの腕を持ち上げて勝利宣言をする。

『第四試合勝者、ヘルカイ』(英語)

 物凄い歓声があがる。

「負けた事でプライドが傷ついたか?」

 風太の言葉に較は、肩をすくめる。

「まさか。そんな事より大将戦の事を考えると気が重いよ」

 エアーナが戸惑った顔で言う。

「ああ言ったけど、本当にやるの?」

 優子も困った顔をする。

「どうしよう?」

 そんな優子に近づき、較が目隠しをしてヘットホンをつける。

「何をするんですか!」

 困惑する優子のヘットホンをずらして較が言う。

「精神衛生上、こうしといたほうが良いの。智代達も小較を連れて控え室に戻っていて」

「どうしてだ?」

 雷華の質問に較が遠い目をして言う。

「絶対にトラウマになる戦いになるからだよ」

 首をかしげる一同を半ば強引に控え室に行かせた。

 そして、闘技台に見えも聞こえもしない優子を上げるとそこには、最後の対戦相手が居た。

『第五試合のコロッセオ代表は、無敗のチャンプ、帝王ラオシロウ!』(英語)

 覇者のオーラを放つその男に較が言う。

「ねえ、これは、貴方にとって良い提案なんだけど、優子の代わりにあちきが戦うのじゃ駄目?」(イタリア語)

 それに対してラオシロウは、悠然と答える。

「我もこんな小娘よりお前と対戦を望むが、これも賭け試合だ、諦めろ。だが、この小娘を倒した後ならば、相手をしてやろう」(イタリア語)

「後悔することになると思うよ」(イタリア語)

 較の言葉にラオシロウは、悠然と答える。

「我は、如何なる結果にも決して後悔しない! それが覇王の道だから!」(イタリア語)

 肩をすくめて闘技台を降りる較。

「本気であんな状態でやらせて大丈夫なのか?」

 良美の言葉に較が苦笑する。

「優子がどんな状態だろうが関係ないよ。それより、見るの? あちきは、絶対にやめた方が良いと思うよ。風太さんも」

 良美は、当然、居残り、風太は、いつでも止めに入れる様な体勢をとりながら言う。

「しかし、勝ち目なんてあるのか?」

 較が闘技台から視線をそらして言う。

「負ける要素は、無いよ」

『最後の挑戦者は、ユウコ=スズキ!』(英語)

 ビックネームの後に来た、無名の少女に観客の大半が首を傾げていたが、極一部の観客だけは、慌てて逃げ出していく。

『試合開始!』(英語)

「くるがよい!」(イタリア語)

 覇者の余裕を見せるラオシロウだったが、それが間違いだと直ぐに思い知れされる事になるのであった。

「おい、幾らなんでもこれは、酷くないか?」

 その状況を見て風太が引きつった顔で言う。

「もう少し、戦い方があると思う」

 良美が珍しく視線を逸らす。

 較は、闘技台の方を見ないようにしながら言う。

「だから、優子を戦わせたくなかったんだよ」

 そして審判が慌てて言う。

「もう止めてくれ! あんたの勝ちで良いから!」(英語)

 誰も反論しない。

 勝ち名乗りは、無い。

 勝負は、はっきりしていた。

 較は、優子のところに良く。

「どうなったんですか。何かイカ臭い匂いがするんですけど……」

 顔を歪める優子のヘッドホンをとって言う。

「とりあえず、勝ったよ。だけどそのまま控え室に行って」

 首を傾げる優子を良美が控え室に連れて行く。

 較は、ラオシロウの方を向かないようにして言う。

「こっちの業界にも流れていたよね、鈴木優子って少女が最悪に属する淫虫の魔王の宿体だって。それさえ解っていればこの結果も予想できた筈だよ」(英語)

 較がラオシロウの有様を指差す。

 そこにあったのは、自慰行為のし過ぎで廃人同様になったラオシロウであった。

 つまり、試合開始と同時に優子に宿る淫虫の魔王がその力を発動させて、ラオシロウの性欲を、他人を襲う事も考えられず、ただ自慰行為を続けてしまうほどに増幅させたのだ。

 その結果がこれだったのだ。

「八刃の長クラスだって、淫虫の魔王には、色々細工しないと勝ち目無いのに、正面から戦って勝てる人間なんてまず居ない」(英語)

 この時より、日本の一般人である筈の優子がコロッセオの悪夢の伝説、指一本触れず、無敗の帝王を廃人にした魔王として語り継がれることになるのであった。



 次の竜魔玉が見つかるまでローマで観光する一同をよそ、較がバルソンと会っていた。

「ヘルカイの件だけど、約束守られてないよね?」

 較の的確な予測に頷くバルソン。

「その通りですよ、ヘルカイが意識不明な事を良い事に始末し、娘も臓器売買ルートに流すつもりみたいですよ」

 苦笑する較。

「所詮、あんな連中の口約束なんてあてに出来ない。勝っても負けても同じだったんだよ」

 バルソンも苦笑する。

「大将戦が負けない保障があったからあっさり負けを認めたって事ですね」

 較は、答えず、一枚の小切手を出す。

「これで貴方を雇いたい。仕事は、ヘルカイとその家族の警護。あちきの名前を使っていい。それとこっちが治療機関への紹介状。費用は、あちき持ちって事になってるよ」

 小切手と紹介状を受け取りバルソンが言う。

「了解しました」

 バルソンが立ち去った後、良美が来て言う。

「フォローもご苦労さん。さて、観光を続けようぜ」

 頷く較であった。



 こうして、四つ目の竜魔玉を手に入れた較達であった。

 竜魔玉を集める困難は、増える一方であった。

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