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黒ノ奇譚  作者: 棒人間
1/3

第一話「出会ひ」

まさかの第1話をころころ変える前代未聞の事態。

もう大筋は変えません。

初執筆ゆえの文章力欠乏はお許しください。

夏の錐井山に近づいてはならん。

あそこには神様方がお集まりになられる。

人間風情が飛び込めば、祟られるぞ…へっへっへっ…


                              序

                                                  序

東京の、とある産婦人科。質素な作りの廊下に、長椅子が一つ、しつらえてある。狭山 轟(とどろき)は一人、祈るように座っていた。

脳裏に浮かぶのは跡継ぎを催促しながらも、病院には一向にやって来ない父の顔。

伝統ある剣術道場の師範である父は事業拡大だと、毎日堅苦しくスーツを着た連中と今も話しているのだろう。

「あのクソジジイ。孫よりも道場が大事か…!」

ぶつぶつと悪態をつきながら、不安げに「手術中」の文字を見上げる。

医師からかなりの難産になるとは聞いていたが、何しろ初めての子供なのだ。何時間待てばいいのか勝手がわからない。

「頼む。無事でいてくれよ…げほっ。げほっ」

背中を折り、咳き込んでしまう。自分が生まれつき体が弱いばかりに、こうして生まれ行く子供に跡継ぎを任せなければならない。

情けなくなって、涙が出そうだった。

「…ぐ」

ぎり、と歯を噛みしめる。今はじっと我慢して待つのみ。

ふと、轟の耳に、赤子の声が届いた。

外界に初めて飛び出したことを告げる、活発な泣き声。

「あ、ああ…産まれた…!産まれてくれた…!」

轟の胸中に歓喜が渦巻く。やがて分娩室の扉が開き、たったいま母親となった女性が寝かされて現れた。

「恵美…!」

駆け寄ってきた夫に、狭山 恵美(えみ)は微笑んだ。

「あなたの息子ですよ。轟さん。」

彼女のすぐ横、小さな小さなそれは、泣き止めて静かに眠っていた。

「本当だ。君に似てとてもかわいらしい。」

「名前は、決めているんでしょう?ずっと前から。」

「ああ。」

「もう生まれたんですから、私にも教えてくださないな。」

轟は息子に歩み寄り、心から愛しげに寝顔を覗き込むと、ゆっくりとその名を紡いだ。

「剣(つるぎ)。」

「つ、るぎ。」

「そう。この子には世界で、真っ直ぐな一振りの剣でいてほしいんだ。」

轟は言語すら解さない我が子に覚えさせるかのように繰り返す。

「剣。狭山 剣。生まれてきてくれただけで、君は私の自慢の息子だ。」


                      一

その日の昼下がり、僕はひどく疲れていた。

夏休みが始まっても学校は夏期講習を初めて、僕は厳格な祖父に受けてくるように言われた。

それも今日で終わったものの、せっかくの40日を他人より削られた気分だった。

「おう、剣。どうだったハトの授業。」

「健太か。悪くはなかったよ。」

声をかけてきたのは小さい頃からの友人の、水無月 健太。日焼けし始めた肌から察するにかなり楽しんでいるようだ。

彼がいうハトというのは、僕らの担任の鳩沢先生のことだ。

筋肉質な男の先生で一見体育向きなのだが、なぜか数学を教えている。

「それより、何やっているのさ、人の家の前で。」

健太がいたのは僕の家の前。狭山剣術道場だ。

ここいらの人には地域随一の大きな屋敷で通っていて、僕、狭山 剣はそこの坊ちゃんと見られている。

主観的に言えば。僕の代から弟子もおらずさほど裕福というわけではなさそうなのだが。

それでも羽振りはいい、というのはご近所さんの弁だ。

健太とは昔なじみの友人だからここに来ることはよくある訳だが、わざわざ待ち伏せしているのは珍しい。

「いやね、講習が今日で終わりだから、さびしがりやな剣君を誘ってあげようかねえ、と思ってさ。」

「誘う?…悪いけどゲームセンターとかならお断りだよ。おじいさんから小遣いも頂いてないんだ。」

彼の笑顔が妙に気に障ってついぶっきらぼうに反してしまうが、健太は一切気にすることなく続けた。

「もっと健康的だよ。錐井山にキャンプしに行くんだ。須藤も行くってさ。」

須藤というのは僕らとよくつるむ柔道部の新人エースだ。でも僕はYESとは言えず。

「それはますますダメ。」

と首を横に振った。

「は?なんでだよ」

「そりゃあ……おじいさんはあの山の伝説、本気で信じているからだよ。」

錐井山というのは、僕の自宅こと道場の裏手にある大きな山だ。毎年この季節は青々とした葉がとても綺麗だ。

だけど幼少期からそこへ虫を捕りに行ったり、中腹を流れる沢へ水浴びへ行ったことはない。

というのも、この山にはちょっとした言い伝えがある。

「錐井の大響祭」と呼ばれているものだ。

お年寄りによると、この時期には、地域一帯の霊魂やら土着神様やらが集まってきて、会議を開くらしい。

この錐井の町限定の風水だとか、気の流れみたいなものはそれで決まるんだとか。

『山を登ってしまうと祟られて、取って食われちまうぞ~~』

今年で確か90にもなる健太のおばあさんの語り口に、幼かった僕や健太は震え上がったものだ。

「おじいさんおじいさんって、アレですか剣君は。ジジコンですか。」

「僕だってなんでも言いなりなわけじゃない。言うべき時は言う。」

まあ、それでも厳しい祖父はやはり怖いけれども。

「健太。錐井山に行くのだけはダメなんだ。おじいさんはこれだけはたぶん、本気で止める。」

「こっそり抜け出せ。」

「大荷物になる。バレるよ。」

「…実は怖いんだろ。」

「う、そんなことは…」

一瞬言葉に詰まってしまった。それを彼は見逃さない。

「なるほどね。妖怪とかがマジでいると思うわけか。16歳にもなって。」

「違うよ!」

「はいはい。わかりましたよ。俺と須藤だけで行くわ。じゃあな。」

呆れたように肩をすくめて、健太は背を向けて帰っていこうとする。

「わかったよ!行くよ!」

「それでよし。」

健太はにかり、と白い歯を見せた


その日の夕食時。僕は祖父、狭山 武蔵と向かい合って座っていた。

「剣。」

祖父が急に話を始め、あわてて箸を置く。

「はい。」

「お前、錐井山に行くよう誘われたようだな。」

「え、何で」

今切り出そうとしたところなのに。

「八雲に聞いた。家の外で話しているのが聞こえたそうだ。まったく。近所迷惑だとは思わんのか。」

「す、すみません。」

思わずお手伝いの八雲さんを見ると、もうしわけなさそうに頭を下げた。

この屋敷に、死んだ僕の父さんが生まれたころから勤めているベテランなのだが、その父さんが生まれつき病弱だったせいかすっかり心配性になってしまい、僕の目立つ行動はほぼ祖父に筒抜けだった。

「言ったはずだ、剣。錐井山に行ってはならない。この時期はあそこは魔の巣になっている。」

「…」

「お前は死んだ轟の代わりに、ここの師範として狭山 武蔵の名を襲名する者なのだ。死なせるわけにはいかん。」

「死ぬって…本当に食われるわけではないでしょう?もう、子供への戒めは通じませんよ。」

「冗談にみえるか?」

僕はその気迫にしばらく押し黙ると、ゆっくり頷いた。祖父は何も言わない。怒りもしない。

一つ、ため息をついただけだった。

思わず重ねて尋ねる。

「迷信では、ないんですか?」

「…私たちの世代までさかのぼっても、誰もその姿を見たものはいない。」

おや、と違和感を感じた。

「おじいさん。死ぬ、というのにその、神様を見たことがあるわけではないんですか?」

「子供のころから戒めを守っていたからな。」

おじいさんは、妖怪を見たことがないのに、僕に死ぬからやめろ、という。

なんだ。この人はただ怖がりなだけじゃないか。

口にはもちろんしないけれど、僕の心のどこかに急に祖父をバカにする気持ちが芽生えた。

なのでつい小さく口にしてしまったのだ。

「なんだ、大丈夫じゃないか」と。

それは完全に祖父の耳に届いてしまった。

「ほう。」

とおじいさんの声が低くなる。しまった。これは確実に怒鳴られる。と思いきや逆だった。

「いいだろう。行ってくるがいい。」

「は?」

あまりにも予想外の返答に失礼な返事をしてしまった。

「錐井山にキャンプでも川遊びでも好きにするがいい。私は関知しない。」

「ご主人様、よろしいので?」

「八雲。荷物をまとめてやれ。」

それだけ命じて八雲さんを下がらせるとおじいさんは僕に告げた。

「剣。お前にも若気の至りはあろう。山に行ってその恐ろしさを今一度知るがいい。その威勢をいつまでも張っていられるか?」

いつもの説教のような怒りはないのに、祖父の表情を見た僕には、死刑宣告のような響きがした。



「しかし本当に許可が下りるとはねえ。あの堅物なじいさんが。」

「ああ。はたから見てもすげえ怖いのに。」

須藤と健太、そして僕の三人は夜の山で火を焚いていた。

「うん。だから逆に不安だ。」

この時期に行けば死ぬ、とまで言ったおじいさん。そのおじいさんが僕のつぶやきを聞いて激昂するどころか、いいといったのだ。

あの時の祖父の表情はどこかあきらめきった顔をしていた。

それに感じた引っ掛かりはまだ取れないままだ。

「そう。それでな、剣。ここは本当に出るらしいぜ?」

「何を言い出すんだよ急に。」

焼けたウィンナーをほおばった健太が面白そうに語りだした。

「ネットで見たんだけど、ここは季節問わずにオカルトスポットとして注目されているんだよ。」

「そりゃ初耳だ。」

須藤も乗り気で聞いている。

「それで、一番やばいといわれているのが」

「夏、という訳か。そんな情報どこの誰が流すんだろうなあ。」

僕も同感だ。祖父の言葉が正しければ誰かが見たわけではあるまいに。

「それでさ、折角夜になったんだ。肝試しがてら行ってみようぜ。この奥。」

何も刺さっていない串で健太が指したのは、広場から細く続く山道。日が沈んだ今では月灯りと僕らの火でわずかに入口が見えるにすぎない。

「おう。そういう訳か。集合時間が晩飯時だったのは。」

「よせよ、縁起が悪い。」

僕は反対した。と、健太と須藤がにやにやして僕を見てくる。なんだか気味悪いなこいつら。

「何だよ。」

「水無月さん、彼は怖いそうですよ~。」

「そうですねえ、須藤さん。坊ちゃんは留守番で、俺らだけ行きましょうかあ。」

「おいおい。バカにするなよ。ぼ、僕も行くぞ。」

声が震えたせいでさらに笑われた。ちくしょう。

僕が言い返す拍子に立ちあがったせいで腰でかちゃり、と音がした。

「ん?なんだよ剣。それ、本物の刀?」

須藤が僕の腰に注目した。そう、僕の腰に刺さっているのは本物の日本刀だ。

家を出発する際、八雲さんがこっそり持たせてくれた。

『これは狭山の家の御護り刀でございます。坊ちゃまに魔が寄り付きませぬように。』

大げさだな、とさすがに僕も呆れたものだ。

「へえ。本当にあるもんだな。見せてよ。」

須藤が止める間もなく、腰からひったくると柄を握ると引っ張る。

「む?」

「抜けねえのか?」

健太も興味津々と覗き込む。僕もちょっと試してみたがこれはてこでも抜けないだろう。

「当たり前だ。それは護り刀。こどもの日の兜についてる刀と同じでさ、抜けたら力みたいなものが抜けちゃうんだよ。」

「へえ、そうなんだ。」

なぜか、二人に感心された。常識だと思っていたがそうでもないようだ。

「じゃあ、剣の護り刀もあることだし。行こうぜ。」

なおさら心強い、と健太は僕の手を握って上下にぶんぶん振った。


懐中電灯で道を照らす。草がだんだん道を覆っていき、人の歩くためのものから、獣道へ様変わりしていく。

「情報によるとさ、この先に古くて壊れた神社の跡があるらしい。今は誰もいないそうだが。」

「へえ。神様とやらはそこに集まるのかねえ。」

先を歩く二人の背中を見つめて黙って登っているうちに、僕は妙な雰囲気に晒された。

「おい、二人とも。」

「どうした?」

健太が振り返る。

「なんかさ。風が冷たくなってきてない?」

「お、マジで。面白くなってきたじゃん。」

須藤たちには逆効果だったらしい。顔を見合わせて笑いあうと、速足で進んでいく。

僕はあわてて後を追った。


「ご主人様、よろしいのですか?」

八雲はまだ玄関先ではらはらしていた。

武蔵は黙って冷め切ってしまった夕食を食べている。

「…武蔵様!本当に剣様が襲われたら…!」

「いいか八雲。あいつは狭山家の跡取りだ。」

「そうです。ですから…」

「あいつは一度、襲われる必要があるかもしれん。私が見たことがない、と聞いただけで安心しきっていた。私に、依存しすぎている。」

八雲は、主人が珍しく遠い目をしているのを見た。

「轟が死んで、甘く育ちすぎたのかもしれない。私は今日の、いや、日ごろからのあいつを見て、そう思ったのだ。」

「つまり、それは」

「襲われて死ぬならばそれまで。残念だが、狭山は私で途絶える。」

不確定である迷信であるからこその、不安。虚構ならばただの笑い話。しかし真実ならば。

――いや、あの方のこともある。間違いないだろう。

自分は再び息子のような存在を失うのだ。

武蔵の起伏のないつぶやきに、八雲は身震いするしかなかった。


「おい、いつになったら神社に着くんだ?」

「わからねえよ。なにしろこの山は、人が登るにしちゃ結構でかい方なんだ。山頂にでもあったらまだまだ先だろ。」

須藤はそこまで話して、ふと後ろを振り返った。

「おい水無月。狭山はどうした?」

「え?」

水無月 健太も見ると、さっきまでおどおど付いてきた幼馴染がいない。

「まさかあいつ逃げたか?」

「途中ではぐれたんじゃねえの?」

二人で耳を澄ますと、遠くから

――なづきぃ……すどぉ……

と友の呼び声がわずかに聞こえる。

「ほらやっぱり。」

「どこで別れたんだ?分かれ道なんてあったか?」

「いいや、でもあいつのろいし、変な茂みにも突っ込んでいきそうじゃないか。」

「確かに。」

須藤と健太は来た道を戻り始める。しかし、しばらくして健太が立ち止まった。

「あれ?」

「どうした?」

「広場が見えてきちまったぞ。」

「あいつが同じところをぐるぐる回っていたらありえるんじゃあないのか?」

「いやいや、おかしいだろ。」

そもそもここは山だ。いくら狭山 剣がボケた奴とはいえ、広場より上はかなり急こう配だから下りになればさすがに気付くだろう。

「まだ声聞こえるか?」

「ああ。さっきと同じ方向から…」

「「え?」」

ここでようやく異変を自覚し始める。

自分たちはここまで歩いてきた。相当な距離を引き返してきたのに、剣の声の方向が変わらないのは自然現象として変だ。

「おい、なんか妙だぞ、ここ。」

「ああ。まさかこれが心霊現象ってやつか?」

「よせよ、気味が悪い。」

健太は苦笑いしながら再び山道を登り始めた。須藤は少し不安げな表情で後をついていく。

剣の声は、まだ聞こえていた。

「おい!剣!こっちだ!聞こえていたら返事しやがれ!」

健太が大声を出すと、ぴたりと声がやんだ。どうやら、向こうも気付いたらしい。

「俺たちこっちで待っているからさ!お前がこっちに来いよ!」

「おい水無月、これまずいって。」

「は?」

神経が図太い方である須藤が震えている。顔も、暗くて見えにくいが青ざめているようだ。

これには健太も違和感を抱いた。

「なんでそんなにビビッてんだ?別に声が同じ方向から聞こえようが、しょせん俺たちの耳が聞いてるだけだろ?」

「違うよ、水無月。狭山はさ、お前のこと名字で呼ぶっけ?」

「いや、昔から名前…」

みなづきぃ……すどぉ…

その声は健太の真後ろ、すなわち広場の方向だった。

須藤は顔面蒼白で立ちすくんでいる。

ゆっくり振り返る健太。そして一言。

「ウソだろ…」

と、そこで終わった。


参った。完全にはぐれてしまった。

「おおい…二人ともどこ行ったんだよ!」

さっきから僕には珍しい大声で呼びかけ続けているが返事はいっこうに聞こえない。静かな夜の山だ。そこまで離れているはずはないと思うが。


つるぎぃ…

「健太?」

すぐ近くの茂みから聞きなれた声がして、がさがさと揺れる。

思わず駆け寄るが、足が急ブレーキをかけた。

待てよ。

目と鼻の先にいるのは、須藤でも、ましてや健太ではない。

足が動かない僕の前に、勝手にそいつはやってきた。

SYRRRRRR―――

端的に言うと真っ白な紙で作った人形。ペラペラな手は風に吹かれて揺れている。

漫画で見た陰陽師の式神も、こんな感じだったか。

腕にあたる部位で大事そうに何やら丸い物を抱えていた。

「うあ、ああ…」

か細い声しか出ない。額の後ろが急に冷たくなって、しりもちをついてしまった。

ムカデに抱かれて健太が、正確にはあいつの首が、悲痛そうにこっちを見ていた。


「つ、るぎぃ…」

その唇から血と共にかすれた声が聞こえる。そして、白目をむいて健太は止まった。


SYRRRR――――

蛇が舌を出すのと同じ音が、いやなにおいと一緒に流れてくる。

握りしめた刀の柄が痛くなければ、今頃卒倒している。

これで身を守ろう、というのは考えることすら無理な相談だった。

眼前で顔のあたりが裂けて開いた。向こうには景色は見えない。夜とは違う真っ暗闇だった。

ああ、これに食われて、死ぬんだな。

おじいさん、申し訳ありませんでした。

ずいぶん長い間それが脳裏に浮かんだ、と思ったら。

ずん、という重い地響きが腹にのしかかってきた。

次の瞬間には耳をつんざくような轟音と、衝撃。隕石でも落ちたかと見まごう現象になすすべもなく体は吹き飛ばされた。

直下にいた白人形は、全身が炎上していた。

あっけなくそれを組み敷いていたのは、どうみても人間。しかもその姿は。

「巫女…?」

紅白の衣装に身を包み、右の拳を地面に着けた巫女が、膝間づいていた。

彼女はゆっくりと立ち上がる。翻った白衣が月光に映えて、とても美しかった。

「………」

頭を上げたその表情はうかがい知れなかい。暗いからではない。彼女の顔は夜のとも、さっきの化け物の口の中とも違う真っ黒な面に覆われていた。

「初めまして。」

「え…」

呆けていた僕は、その流麗な声が目の前に立つ巫女のものだと判断できるまで時間がかかった。

僕の間抜けな返事を意に介せず、彼女は自己紹介をする。


「私は神妖。あなたの味方よ。」


それを聞いたきり僕の記憶は飛んでいる。短時間の多すぎるイレギュラーに僕の脳はメモリー不足だった。

でも、朦朧としていたはずの意識の中。

これが彼女との、神妖との出会いだったのは間違いない。

小説を暇なときに書こうと思って気がついたらこれです。

日常は忙しすぎて泣きたい。

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