刻印
あとがきに新キャラたちを残しておきますね!
「魔王は"悪魔の刻印"をもつ。反対に善き者には"天使の刻印"が現れる」
天印教では、この"天使の刻印"を神聖視し、過去には全てを癒す"慈愛の天使"とよばれていた者がいたと伝えられている。
驚きを隠せなかった。魔王城にいる少年が天使の刻印をもっていることに。
その刻印はリヒトの目の下に涙のように浮かんでおり、天使のはねのようにも見えた。
「マリウスさん、ご案内しますので、そのまま運んでいただいてもいいですか?」
申し訳なさそうにアベル尋ねてくる、確かに、リヒトとあまり体格に差がないアベルでは運ぶのは苦労するだろうと思った、それにリヒトを放っておけなかった。
僕はリヒトを抱き抱え、アベルに着いていく。
案内されたのは誰かの私室のようだった。
「マリウスさん、ここで少々お待ちください」
アベルはそういうと、リヒトをベッドに置くように促し、部屋を出る。
さぞ豪華な部屋だと想像していたが、思っていたより質素でけっして豪華とは言えなかった。
魔王城は物資を上納されてるのだから、さぞ贅沢三昧かと思っていたが想像と違ったようだ。
少しして、何人かの足音が聞こえてくる。
僕はすっかり魔王城であることを忘れ、苦しそうに、辛そうにだが穏やかに眠っている少年を眺めていた。まるで、その辛苦に涙を流しているように、そう思えた。
「入るよ。」
そういうと3人の青年が入ってくる、そのうちの2人は災害の日に会ったことがある、額に刻印がある人と、掌に刻印がある人だった。
もう1人見たことない人は、騎士とかに居そうな精悍な顔立ちをした好青年だった。
「リヒトを運んでくれてありがとう。私はアルドリック・グリム。リヒトの兄だ。」
そして、額に刻印のある男と掌に刻印のあるひとを順番に指し、
「こちらが、サイラス。そしてこちらがエリオだ。」
「元気そうで何よりだよ。」
「あ…あの時はありがとうございました!僕はマリウスです。マリウス・エコー」
エリオはやり取りの最中でリヒトに近寄る、そしてリヒトの手に触れる。
「…これは…。」
エリオの表情が曇る。
困惑していると、サイラスが説明してくれる。
「君は、俺たちが魔王と呼ばれていることを知っているよね?」
頷くと、リヒトの力のことを教えてくれた。
リヒトは"光の魔王"と呼ばれ、未来を予知する力があること、でもその力はコントロールできず突発的に発動され、その際に気を失うこと。見たい未来を選ぶことは出来ないこと。
「未来予知…。」
「その未来は、なんて事ないくだらないこともあるし、最近の災害のような予知もある。」
だから魔王たちはあそこに居たのか。引き起こしているんじゃなくて、予知を…。
なにしに…?
そう思っていると。
「さすがに俺たちも天災を止めることはできないからね、君を助けることしか出来なかったけど。」
…助けることしか出来なかった?
"魔王"が助けるだって?
あぁ、そうか。騙そうとしてるんだ。
騙して俺を…、なんのために…?
黙っているとアルドリックが心配して近寄ってくる。肩に手をおき、顔を覗き込む。
「大丈夫か?遠慮せず座るといい。」
促されるままに座った。
何も信じればいいかわからなかった。
この魔王たちは自分が出会った誰よりも優しい人たちのように見えた。大司教様に負けないくらいの。
でも、彼らは魔王で世界を滅ぼすことができる。
すると、エリオが手を握ってくる。
「…知っている魔王と違って困惑してるみたい」
あ、そうだ、エリオには前も心を読まれた。
でも、何も言えなかった。エリオは躊躇いもなく心を読んでくるくせに、その時の顔は無表情のように見えて申し訳なさそうな、諦めたような色が滲んでいるから。
「…ごめん、勝手に読んで。」
「いや、全然…。」
それ以上誰も話題を続けなかった。空気を変えるようにアルドリックが話を切り替える。
「今日は泊まっていくといい。あまり豪勢なもてなしは出来ないが、精一杯おもてなししよう。」
彼らをもっと知りたいと思った。本当に凶悪で恐ろしい魔王なのか。自分の目で見極めたいと思った。
「お世話になります。」
僕は最初は恐ろしくて暗く見えていた魔王城が、なんだか明るくなっているような、そんな気がした。
最後までお読み頂きありがとうございます。
光の魔王 リヒト・グリム
リヒトの兄 アルドリック・グリム
額に刻印がある男 サイラス
掌に刻印がある男 エリオ




