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ぼくと、おかあさんと、おとうさん。そしてみゆき。

作者: もち雪
掲載日:2025/12/25

 窓の外、キラキラ光ってきれいで、温かい。

 僕は、守られた世界にいた。


 でも……、お母さんは不安げに、僕を覗き込むのだった。


 僕はそんな夢を見た。でも、夢の続きはわからない。


 ◇◇


「オギャーオギャー」

「みゆきちゃん待っててね。ミルク作るからね」

「おかあさん……」


 おとうさん、ぼく、おかあさんと3人で寝ていた部屋に、妹のみゆきが加わって、ぼくはみゆきとおとうさんに挟まれて、寝る事になった。


 おかあさんは暗い部屋に、ぼくと、おとうさんを残して、別の部屋に行ってしまう。

 その時、ブルブルって震えて、おトイレに行きたくなる。


「おとうさん、おとうさん起きて、トイレ行きたい」

「あ……、(あきら)……、トイレか……」

 おとうさんは、顔をこすりながら体を起こす。


「彰、もう来年、小学生で、もうお兄さんだから、もうトイレは1人で行ける様になろうな」


 おとうさんはそう言って、トイレの扉を閉めてしまう。

 ぼくは慌てて、トイレの扉を開けるとーー。


「彰、早いなぁ、もうトイレできたのか?」

「おかあさんは、トイレ開けといてくれるのに、おとうさんじゃ、やだ……」


 そう言って、手で顔を隠すと、次から次へと涙が溢れでてくる。

 みゆきが来る前には、おかあさんがついて来てくれたのに……。


「わっ、ごめん、ごめん、彰、おとうさんもトイレの中に居るから、おトイレしようなー」

 そう言ってくれたおかげで、ぼくは漏らさずに済んだけど。

 去年まではおかあさんが、トイレについて来てくれて、お兄さんにも、ならずに済んでいたのに……。


 みゆきが来てから、ぼくには大変な事ばかり……。


 ◇◇


 次の朝、目をさますとおばあちゃんがいた!


「彰くん、おはよう」


 ご飯を食べるところにいる、おばあちゃん。

 ぼくは思わず、おかあさんの後ろに隠れる。


「彰、おばあちゃんに、おはようは?」

「おばあちゃん、おはよう」


 おかあさんの背中から、少しだけ顔を出して言えた。


「みゆきが背中に居ない時は、こんな感じなの……、優先する様にしているけど、一人っ子の時と違うから……、翔真(しょうま)さんの言う『お兄さんだから』も、嫌いみたいで……」


 コッペパンを食べだした、ぼくの前で、おかあさんはそう話す。


「大丈夫、大丈夫、コッペパンもちゃんとちぎって食べてるし、りっぱなもんよ。彰くん、フルーツ食べたら、おばあちゃんを彰くん幼稚園まで、案内してくれないかしら?」


 ちょっと甘いパンを食べてるぼくに、おばあちゃんはニコニコ笑顔で、そう言った。


「……いいけど、おばあちゃん来たことなかった? 運動会の時とか」

「彰くんに、案内して貰うのが嬉しいのよ」

「へっー、いいよ」

「わぁ、嬉しい」


 おばあちゃんは、みゆきじゃなくて、ぼくと幼稚園に行く事が嬉しいのか……。


 そうなんだ。


 少しだけ、パンが美味しくなった気がした。


 ◇◇


 幼稚園までの道、おかあさんはついて来てくれなかった……。


「おばあちゃん、ぼくはお兄さんになりたく、ないんだけどー」


「おばあちゃんはお姉さんになったけど、そういう時期あったわ。正直、上手くお姉さんなれた気が、今でもしないわ」


「おばあちゃんも嫌だったんだ。じゃあ、どうしてたの?」


「おばあちゃんの姉妹(きょうだい)も始めは、小さかったけど、彰くんと同じで自然に大きくなっていていくのよね。人間って不思議ね。うちは歳が近かったから、助け合える姉妹になり、大人になれば、お姉さんにあまり意味がなくなってたわねー」


「あんまり、よくわかんない」

「彰くんの歳でわかったら、おばあちゃんの立つ瀬がなくなっちゃうから、それでいいわよ」


 幼稚園の前の細い道へ行く前に、おばあちゃんといっぱい話をしたけれど、やっぱりお兄さんも、お姉さんも大変らしいって事がわかった。


 園に入って、先生と手をつないで、おばあちゃんにバイバイすると、帰りは1人で帰れるみたい。おばあちゃんも、『おばあちゃんでしょう?』と、言われない様に、道をちゃんと覚えるのかな?


 ◇◇


 明日は土曜日、大好きな映画を観に行く約束の日。


 夕御飯を食べて、その大好きなアニメを見ていると……。


「お母さん、みゆきに眼鏡のフレームを曲げられた……」

「えぇー!? 2人とも大丈夫なの?」

「それは大丈夫、けど、映画の前に眼鏡のお店に行く事になりそうだ」

「プレゼントは貰える?」


 ぼくは映画館で、貰えるカードが、貰えなくなるのが心配だった。

 ソファから降りて、ご飯を食べるところにいるおかあさんと、おとうさんに、聞きに行った。


「初日だから、大丈夫よ」

「彰、ごめんな。眼鏡がなおったらすぐに、映画館へ行こう」

「うん、アニメの続きみるね」


 みゆきは、おとうさんの眼鏡を壊しちゃった。

 おかあさんと、みゆきを抱っこしている、眼鏡が斜めになったおとうさん。


 おとうさんの眼鏡を、あんなにしちゃうなら……。

 そろそろ、みゆきも、ぼくくらいには大きくなるのかな?


 ◇


 次の日になっても、妹は小さいままだった。

 小さなままで、大きなお店に行って、映画を見る。


 映画は夢の中の、キラキラ素敵な世界によく似ている。

 あまーいのは、まだダメって言うから、ふわふわしょっぱいポップコーンを食べて、ジュースを買って、そしてちゃんとトイレに行かなくちゃ。


 だけど……。


 おとうさんが、眼鏡のお店に行ってしまうと、全然楽しくない。

 おかあさんは歩きまわる、みゆきについて、歩いて行く。


「おかあさん、楽しくない。ぼく、おとうさんの眼鏡のお店で待ってる」

「彰、ごめんね。みゆき、今、抱っこひもも、ベビーカーもダメらしくて、無理強いすると泣いちゃうから……」


 そう、さっきみゆきはベビーカーで、エビみたいになって泣いてた。

 このままだと、みゆきはエビになっちゃうかもしれない。


 食べられない、エビのお兄さんは嫌だなー。

 食べられる、エビのお兄さんも嫌だけど……。


「…………おかあさん?」


 いつの間にかおかあさんと、みゆきが居なくなっちゃった。

 これ……どうしよう? お兄さんだからーー。


「大変、2人を探しにいかなくちゃ!?」

 ぼくはお兄さん! 確か、エスカレーターでーー。


「すみません。エスカレーターに、一緒に乗って貰っていいですか?」

「あら大変、ぼく、迷子なの?」


 エスカレーターは、1人で乗っちゃダメって言われているので、おばあちゃんくらいの人に声をかけた。


「おとうさんが、眼鏡のお店にいるから迎えに行くの」

「うーん、待ってて、店員さんに連絡だけ残して行きましょう」

「わかった」


 そうすると、お店からお姉さんが出てきて、お姉さんもついて来てくれる。


「2人とも兄妹いる? ぼくはこの前、お兄さんになったんだよ」

「うちは私だけなので、楽しそうで羨ましい」


「私にはお兄さんがいるのよ。兄にはいろいろ助けて貰ったから、君がお兄さんなら応援したくなっちゃうわ」


「兄妹が居ない時も、楽しかったよ。でも……みゆきも、ぼくが居て嬉しいって思うのかな」

 そんなことを話していると、エスカレーターを降りて、眼鏡のお店があった。行くと、おとうさんがソファに座っている。


 ぼくはそっと近づいて、おとうさんの横に座る。


「あれ、彰、お母さんは?」

「居なくなっちゃったから、二人に連れて来て貰ったんだよ」


「上の階で、迷子になっていたところを、こちらのお客様が……」

「いいのよ、いいのよ。ぼくも、うちの立派なお兄さんになってあげてね。じゃあね」


「では、私も失礼します」

「「ありがとう」ございました」


 二人は上と、下のエスカレーターに乗って、バイバイして行っちゃった。


「おとうさん、お姉さんは兄妹が居なくて、おばあちゃんはお兄さんがいるんだって」

「教えて貰ったのか?」

「うん」


「彰はよそでは、社交性があるタイプなんだな……。そうだ!? お母さんに電話しないと、探してるはずだよ」


「じゃあ、お願い」


 お母さんは電話の後、背中におんぶされ、泣いているみゆきと、エスカレーターに乗ってやってくる。


「ごめーん、彰、探してたわよね……。本当にごめんね」

「お兄さんだから、大丈夫」


 そしておとうさんがお店の人に呼ばれると、お店の小さな窓に雨の粒が当たって、流れ落ちていく。車の赤いライトが当たって、とてもきれい。


「ただいま」

「おかえり、おとうさん、おかあさん、あのね、この窓のキラキラよりもっと夜に、こんな雨を見たんだよ。何かにくるまれながら見る、赤や白がきれいだった」

 そう言うと、二人は顔を見合わせる。


「彰がみゆきと同じくらいの時、夜に泣き止まない時があったのね。おばあちゃんが言うには、車に乗せて走ってみれば? と言われて、おとうさんが運転して、みんなが眠っている時間に、彰を車に乗せて走ったことがあるの。それが丁度、雨のだったのよ。覚えていたのかしら?」


「次の日も、って覚悟してたのに、次の日からは、ミルクを飲んで、普通に寝るようになったんだったな……」


「わからない……」

 ぼくが見たその夢は、とってもきれいで安心する。

 そんな夢、夜なのにそんなに怖くなかった。


 もしかしたら……、みゆきも言えないだけで、何か怖いのかも?  


「みゆき、大丈夫だよ」

「オギャー、オギャー」


 ぼくの声の方が怖かったのか、おかあさんの背中に居る、みゆきがまた泣き出しちゃった……。


「……ぼくじゃダメなのかな?」


「「ううん! そんな事ないおにちゃん、ありがとー! って泣いているんだよ」」


「そうなのかな?」

 やっぱりみゆきは難しい。早く、大きくなってくれないかな?


「じゃあ、映画館へ行こうか」

「うん!」

 ぼくと、おかあさんとおとうさん。


 それから『妹なんだから』って、たぶん言われる妹のみゆき。

 ぼくたちかぞくは、映画館へ歩きだす。


 いつか、この映画がおもしろいって、教えてあげるね。

 ぼくは、ぼくだから教えてあげるよ。


 おしまい


見てくださりありがとうございます。


またどこかで!

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