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秘密

「三谷さん、残ってくれてありがとう」

私と彼女しかいない放課後の教室で彼女は一言。

「私ね、ストイックなの。人に褒められるために優等生を演じたし、欲望は抑え込んだわ」

彼女の表情から嘘だとは思えない。顔は私の方に向けているが目の焦点はあっているかどうかわからない。

「えっと…」

「私は優等生であり続けるためにも人を見下したいの。人の上に立って蔑んで、憐れんで、私の方が上よってことを認めたいの、分かる?」

私は彼女がなにを言っているのか全く分からなかった。人を見下したい?だから私を教室に残らせたの?

「なんで私を残らせたのって顔をしているわね。言ったでしょ、私は人を見下すのが好きなの。だからあなたを見下して、私好みの子に調教してやりたいの。そうすれば私の秘密は漏れることはないし、あなたは私に沼ってしまって抜け出せなくなる」

脳味噌の小さい私が頭をフル回転させ結論に至ったのは私は彼女の秘密を知ってしまったため、その口封じのために私を調教するということだ。

「ええっと、いったいなに」をするの?

と言いかけたタイミングで彼女は私を強い力でハグをする。彼女の長い腕は私の肩を抑えるため私の腕は肘から先しか動かせない。彼女の全力とも言える固さで圧迫されるため肺は押しつぶされ呼吸が細くなる。

頭が白くなっていく。抵抗したところで長身の彼女には到底及ばない。

ふわっ

足に力が入らなくなり私は床にペタりと座り込んでしまう。私の口からは唾液が横から垂れていても拭くことまでは意識が回らない。

情けない姿で座り込んだ姿勢から見える景色には彼女の艶かしく、狂気じみた顔しか見えない。彼女は目がトロンとしていて、息遣いが荒くなっている。

普通の人間なら彼女には恐怖を覚えるだろう。全力を振り絞ってこの場から逃げ出し、交番に駆け込む人もいるだろう。だけど私はこんな彼女を見て鼓動が速くなった。それが恐怖によるものなのか、新しいなにかに目覚めたことによってのものなのかは今の私には分からない。

ただ不思議と彼女の目をじっと見つめることしかできない。

「その顔大好きよ。あなたを調教するのは楽しそうね。これからの学校生活もよろしく」

彼女は私の耳元でそう囁く。

私は心の中で『誰がアンタなんかに屈するか!』と決めた。



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