渡辺凛
「初めまして。 私は渡辺凛。よろしく。」
私たちは1度教室に上がり、担任からの指示で自己紹介を始めていた。
私の横の席、そう教室の1番後ろであり窓側の端に座る彼女はとても美しかった。私の性的指向は男だがそんな私が一瞬でも心を奪われるほどに。いやいや!私は男が好きなの!
だが……
みとれてしまった。凛という名前がこんなにも相応しい彼女に。
彼女は私の視線に気がついたのか目を合わせてこちらに微笑んでくれる。私の体温が少し上がったのは誰にも指摘されたくない。
放課後になるとすぐに打ち解けたのか、はたまた同じ中学校の友達同士なのか、数人が集まってクラスラインがどうだの、親睦会にカラオケだの談笑をしている。是非私も参加して青春を謳歌したいものだ。
「えっと、渡辺さん?私三谷京花っていうの、私と友達になってくれたら嬉しいんだけど…」
クラスラインより新しい友達とのカラオケより優先したいものができた。それはいち早く渡辺凛との交流を深めることだ。心では女の子1人と仲良くするより、色々な友達と遊ぶ方が楽しいと分かっている。だが自分の体を制御することはできない。だから体が勝手に動くことは仕方のないことだと思う。
「あら、私なんかと友達になりたいって言ってくれるなんてあなた優しいのね。いいわ、友達になりましょう。」
「いいの!?うんうんなるなる!じゃあライン交換しようよ!」
私がポケットからスマホを取り出し、ラインを交換するために彼女のスマホのQRコードを読み込もうとしたそのとき。
ブー
彼女のスマホの通知だ。見てはいけないものだと分かっていてもこの状況では絶対に見てしまう。
「またおしおきしてね♡」
ん?おしおき?おしおきってなんだ?私の頭の中はもちろんクエスチョンマークで埋め尽くされる。
「三谷さん、私の秘密を知ってしまったわね。少し強引になってしまうけれども手伝ってもらうしかなさそうね。教室に残ってなさい。」
彼女の表情は決して怒りや悲しみを表すものではないが、少しなにかを期待しているような顔をしている。
私はどうなってしまうんだろう。おしおき?されてしまうのかな。なにもないことを祈ろう。




