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私が妹になるまで  作者: マグネッター
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第二話「挨拶」

 いつものように一階に降りる。

 

 下では、父が朝食の準備をして机の前で本を読んでいる。普段は、先に食べて本なんて読まないくせに。

 

 「お、しおりおはよう。ご飯もちょうど今できたとこだ」

 

 「いただきます」

 

 みそ汁を口に運ぶ。冷たい……ウィンナーも食べる……同じだ。

 

 黙々と食べていると、父は箸をおいて深呼吸をした。

 

 「今日会う相手の娘さん、お前の目指しているK高校に通っているんだって。成績ギリギリなんだから色々教えてもらいな」

 

 「…………うん……」

 

 余計なおせっかいだ。

 

 私は、残りのご飯を口詰め込み、食器を台所に置いた。

 

「……部屋で勉強してる」

 

「あ、12時半に○町のファミレス行くから20分には出るからな」

 

 「……」

 

 黙ったまま頷き二階に上がった。机に向かったが、何もやる気が起きない。人に言われてやる気が出るわけないだろう。

 

 そんなことを思いながら窓の外を眺めている。


 桜の葉がもう生えそろっていた。

 

 「そろそろ出るぞー」

 

 下で父がそう叫んだ。時計を見ると12時15分。

 

 私は、急いで準備して下に向かった。父が玄関で待っている。

 

 「よし、じゃ行くぞ」


 父の車に乗り出発した。

 

 「これから家族になるんだからそんな緊張せんでいいよ」

 

 「……してないし……」

 

 そう言ってスマホを見るふりをする。

 

 少しすると、父から着いたぞと言われた。思ったより早く着いたと思いスマホを見たが時間通りだった。


 私は、車から降り店のほうを見て唾をのんだ。

 

「向こうは、先についてもう座ってるみたい。七番テーブルだって」

 

 少し深く頷き父の後ろについて店に入る。

 

 店に入るや否や私は、父の背中から覗き込むように七番テーブルを見た。そこには、こっちを見ながら招くように手を振る女の人と、その隣にきれいな長い黒髪の整った顔立ちをした若い女性が座っていた。

 

 「お、あそこの席だな」

 

 父の後ろについて席に足を運ぶ。

 

 それにしても、本当にきれいな人だ。クラスの中心、いや学年の中心のような人だろう。私には、一生縁のない高嶺の花のような人だ。

 

 そんな人が私の姉に?そんなことを考えながら椅子に腰かけた。

 

 「いやー待たせてごめんね」

 

 「良いのよ。私たちも今着つたとこよ」

 

 見たことないくらいテンションが高い父に顔を引きつった。

 

 「こっちが娘のしおりです」

 

 「え、あ、中学三年生のしおりです。よろしくお願いしめす……あ」

 

 その場の全員が固まった。


 相手の娘さんが下を向いて肩を震わしている。

 

 ああ、死にたい。どうしてくれるんだ父、娘が辱めを受けてるんだぞ。

 

 「じゃ私も自己紹介します!高校二年生のさやです。よろしくね、しおりちゃん」


 「あ、は、はい」


 助けられた。良かった。


 「じゃ、注文が終わったら今後の話をしようか」


 店員を呼び全員が注文を終えると、父が話し始めた。


 「二人はこっちの家に住むようにするってことでいいんだよね?」


 え?


 「ええ、さやもそっちのほうが学校近いしいいよね?」


 「うん、大丈夫だよ」

 

 え?知らないの私だけ?


 「さやちゃんの部屋は二階にあるしおりの向かいの部屋でいいね。俺と妻は一階の寝室で寝るから」


 「はい。ありがとうございます」


 え、向かいの部屋?てかもう「ちゃん」付けしてるし……理解が追い付かない。


 「いやー、そういえば苗字が一緒だからさやちゃんも名前変えずにすんで良いね」


 もう驚き疲れた。


 そんなこんなしていると頼んでいた料理が届いてきた。


 「お、きたきた。じゃ、いただきます」


 三人とも楽しそうに談笑しながら食べている。


 私も食べながら聞いていたが頭に入ってこない。さっきからずっとボーっとしている。


 「ってことだけど、良いよな?しおり」


 「え?あ、うん……大丈夫……」


 雑に返事をしてしまった。いや、もういいや適当に流そう。


 そうしていると、皆んな料理も食べ終わり、今日は解散することになった。


 車に乗り家へ着いたら、まっすぐに自分の部屋に向かった。いろいろ考えたが何も考えられなかった。


 その後はお風呂に入り、夕食は食べずに寝てしまった。


 明日は、日曜日。ゆっくり考えよう。


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