Code Name Chupacabra
ババババババババッ
サボテンを片目に斜面を走る。
爆発のような冷たい機械音が私の耳を焼いた。
斜面を上がった断面を盾に私らは体を地面に密着させる。
その先には土嚢を積み立てたカルテルがそれに身を隠し弾丸をばらまいていた。
無線機から荒れたシグレの声が聞こえる。
『100フィート先、敵多数...!』
『ガチャ、グレネードランチャーを満遍なくぶち込め...!』
「パニャートナ(了解)!」
ポンッ ポンッ ポンッ
ゴォンッ ゴォッ ゴォッンッッ
人が宙を舞う。
いや。
血に染った腕や足が宙を舞う、といったところか。
ズガガガガガガガッッ
そこにすかさずNATO弾をぶち込む。
ガチャの撹乱は完璧だ。
私とクロズコップの放った弾は数十人の胴体を真っ赤な穴ぼこにした。
「...ぅッ」
ドクン。
心臓はそう告げた。
___なんだ、これは______
_____この、黄色と灰色の景色は____
これは_______
_____良くない血だ。
穴ぼこの血もそうだが______
その血は、私の中にある________
_____ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ....
___ブチンッ
脳に、電極が刺さる。
私は無意識に腰の89式銃剣を着剣していた。
「ふぅっ...!ふッ...!」
そして、私は敵の集団へと突っ込んだ。
『2人とも援護した後、フキに続け』
「ッッ!」
耳に破裂音が重なる。
敵に近づいた証拠だ。
土嚢を盾に私を銃撃している男が目に入る。
まずはそいつの鼻先目掛けて銃剣を突き刺した。
微差で銃剣はそいつの口を、そして喉奥を貫いた。
グヂャアッ
「...ッ!」
バジュッ
そして発砲。
その男の頭はあられもなくスイカのように爆発した。
その横の別の男は銃で殴りかかってくる。
その銃を蹴りあげ顔面にフルオートで射撃。
倒れたそうになった男の胸ぐらを掴み、腰にあるソードオフショットガンを奪う。
そして12時の方向の岩に隠れている奴らを射撃する。
ガンッ ガンッ
ババババババババッ
「...こいつ、足速すぎる!」
「あれ、何者なの...!シグレッ」
『さぁな。たまたま連れてきた子犬が狼だっただけだ』
『いや、"鬼"といったところか』
バババババババパバッッ
ガンッ ガンッ
「はぁ...はぁ...」
「ぐぅっ...!」
事切れる。
その事実は、暴走した脳内でも理解できた。
眼球を巡る血液はピタリと止み視界が黒に染る。
「(ま..ず...)」
「(...まだ...だ...)」
ガシッ
「...」
クロズコップに掴まれる。
そいつは殺人鬼のくせに、その時の肌は暖かかく感じた。
「本当に何者なの?こいつ」
「さて、それをじっくり車の中で聞かせてもらおうか」
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____バー・サティスフェーチョ
「仕事終わりのマティーニは最高だ。お前もやれ」
薄暗い空間の中、側近の坊主頭はホルヘの隣に座る。
茶色のレザーハットを被ったホルヘは店員にもうひとつマティーニを注文した。
「お前の弟はどうした。呼んでこい」
「車で待機してます」
「ホルヘの兄貴。実は話が」
「もう今日は仕事はしまいだ。ゆっくり酒とモンテクリストを吸いたい」
ホルヘは葉巻の吸口をシガーカッターで切った。
それでも坊主頭は口を止めない。
「チワワの抗争の件なんですが...」
「あぁ、あの日本のガキの使いがどうした」
ホルヘは軽快な音とともにマッチを擦り、葉巻の先端に当てる。
「それが...戦ってたノガーの連中全部ぶっ殺したようです」
「...」
ホルヘは動きを止める。
マッチの火はホルヘの手に触れた。
熱かったのか思わず手を離し床に日が転げ落ちる。
「...もう一度言え。全員だと?」
「はい...その場にいた仲間の話では、黒い服を着た女が敵陣に突っ込みとんでもない速さで殺して回ったようで...」
「...そいつは眼帯をしてたか?」
「いえ」
「...クロズコップ・ペズーヘではないならあの日本人か...」
「なにかご存知で?」
「まさか。初めて見た女だ」
「軍隊上がりの優等生か、将来のオリンピック候補か。またはそれ以上か」
「いずれも、ボスに事を説明しなきゃならん。車をボスの家まで出せ」
「はい」
ホルヘは立ち上がり、ジャケットに袖を通す。
それに合わせて坊主頭も立ち上がった。
「ちなみに、俺は最後者だと思うがね」
「...?」
「たまにいるんだ。よく分からねぇ、得体の知れないバケモンが」
「とりあえずそいつは要マークだ。コードネームは、そうだな...」
「_____Chupacabra。そう覚えておけ」




