[ルートZ] werewolves don't sleep (人狼は眠らない)
ガチャっ
「お、来たか」
「_____被検体壱番、齟山美波」
「...なんの用?」
「試験の時間だ。あと2分後ここへ第伍の少女がやってくる」
「迎え撃て。なんなら殺しても構わないよ」
「...」
「...そう。もう用済みってわけ」
「...あぁ、用済みだ」
「君ももう充分生きただろう。もう夢から覚める時間だよ、お嬢さん」
「..."夢は覚めるから夢"」
「えぇ。ありがとう、蝶番軌」
「_______私に"夢"を見せてくれて」
______________________
_______タバコ屋 華屋______
ガララッ チリンチリン
「_______いらっしゃい、鬼人さん」
「...鬼人?」
カウンター前に、コートのポケットに手を突っ込んだ女が立っている。
そいつはシグレではなかった。
しかしロングの黒髪で、目にクマができている映えのない女だった。
右頬からこめかみにかけて灰色の痣がある。
明らか店員では無い。
「それで?貴女は何?」
「シグレの手先?」
「...」
「そうかもしれない。でも心酔してる訳でもない」
「ここへ来る子なんてみんな、事情を抱えてるのよ」
「へぇ...」
「______それで、草間フキはどこ?」
「ここの地下に幽閉されてるわ」
「...」
「意外とあっさり教えてくれるんだ、あんた」
「私はあいつらに興味は無いし、もうここに人を寄り付かせたくない」
「______だから帰りなさい、第伍の少女」
「...」
「お互い後には引けないらしい」
「...」
腰のホルダーに手を伸ばす。
それは僅か距離100cm。
相変わらずその女はポケットに手を入れたままだ。
______3秒経過。
「...っ!」
ジャコッッ
バギョンッッ
一撃目、転がり躱される。
______カチチチチッ
眼の倍率をカメラのように詳細に捉える。
そして奴の残影で転がった先を予測し44口径マグナムを叩き込む。
するとカウンターの木製部分に大きな風穴が空き木っ端が飛び散った。
シュゥゥ....
カラカラ....
「...」
キラッ
「....ッ!」
その風穴から、キラリと光る不吉な輝きを感じ取る。
_______カチチチチッ
瞬時にカメラを起動し対応。
「(デザートイーグル...っ)」
バジュンッッ
刹那、身を翻し弾を躱した。
「...ッ」
カチャッ
こちらも穴目掛けて銃口を構えたその瞬間
バガガガガガガガッ
「ッ!」
バジュッ ブジュッ ダジッ
「ッ...!」
プッシュウゥ....
「_____3発ヒット」
「...したらしいけど、なんで生きてるのやら」
「いつまで狸寝入りしてる気?」
ぐぐぐっ...
「...あぁ...バレた?」
「50口径をそんなふうにバカスカ撃たれたら、流石に体が持たないわ」
バスッ バスバスッ
プシュゥ...
「(予め心臓を撃ち抜いておく。いくら鬼人といっても心臓さえ潰せば生きることは叶わない)」
ぐぐっ...ッ
「ッ!!」
「う、嘘だ...心臓を潰したはずなのに...ッ!」
ドッロォ...
目から血潮が溢れ出す。
と同時に、撃たれた箇所の痛みが消える。
いや、違う。その逆だ。
腹の底から莫大な活力を感じる。
「あ...ぉあ...」
「...全感覚の集中...そしてそれによって引き起こされる強制治癒の実態...」
「へぇ...これがフキの見た本当の世界...」
「______大変素晴らしいッ。大いに結構ッ」
ぶわッ
「(なに、この威圧感...ッ!)」
再度マグナムの銃口を女の額に向ける。
手元によるぶれが全くない事実が私を一層興奮させた。
「クソ...ッ!」
女は落ちていた鉄板を盾にする。
厚さ僅か10mm、純粋な鉄。
「_______知ってる?顔痣女」
「...ッッ!!」
「_____44.Magnumは象の頭蓋をも破壊する」
「Приятного аппетита(いただきます)」
バギュギュッ
正確に放たれた一発目。
それは貫通することなく鉄板4mm程度に食込み潰れる。
そして更に正確に放たれた二発目。
銃弾は4mm食い込んだ窪みちょっきりに入り込む。
それは4mmの窪みを更に押し込み、軽快な音と共に鉄板の向こう側へと突破した。
「______こんなの____鬼人なんかじゃ____」
「____お前は____人狼_______ッ」
______ガヂュユンッッ
_____________________
「...」
「なんで急所を外したの」
「あんたにはまだ聞きたいことがある」
「まずひとつ。鬼人ってなに?」
「...聞かない方がいいわ」
「あんたに拒否権は無い。だからさっさと話して」
「...」
顔痣女は静かにため息を吐いて、重い口を開く。
「...鬼人は、蝶番軌によって作られたいわば強化人間」
「...」
「__________は...?」
「あらかじめ適合した子供を選別し、鬼人に覚醒するまで傭兵として消耗する」
「それが...あなたの正体よ」
「...」
「なに、それ」
「...元々、私は化け物になる運命にあった...ってこと...?」
「...あなたひとりじゃない。私もその運命にあった」
「でも私は、結局鬼人として孵化できなかった失敗作」
「まだ生きてるのが...不思議なくらいだわ」
「...う」
「ごぇ...ッ_____!」
べちゃべちゃっ
「嘘だ...私には...」
「_______そんな記憶はないッッ...!!」
「...定期的に紫呉が消してるんだよ。地下のシアターで」
「あなたの幼少期だって...それが本物かどうか...」
ジャキッ
「黙れッッ!!」
「私の記憶は私だけのものだッ!!だってまだ....私お姉ちゃんの顔もちゃんと....ッ」
ザザッ________ザ_______
「...え?」
お姉ちゃんはちゃんと存在している。
存在しているはずなのにどうして________
____また顔にモヤがかかって、思い出せない。
「...かわいそうに。もう何も思い出せないのね」
彼女は私の頬を優しく撫でた。
それはまるで死んだはずの姉のようだった。
「わかるわ、その気持ち」
「辛い...苦しい...そんな気持ちが日夜問わず通り魔のように私達の脳を蝕み犯していく」
ギュッ
彼女は銃口を掴み、自らの額へと引き寄せ
「それでも、あなたは自分でなんとかできる力を得た」
「それでどうか...あなた自身を助けてあげてね」
「_____私は先に行く。健闘を祈ってる」
カチチ...
バギョヨンッ
「_________」
びゅっ、びゅ....
「...」
「...は...はははっ」
「く...くっ...」
「....」
ぐぐっ...
...コツっ
...コツっ
...コツっ
...コツっ...




