[ルートZ] Volkdolalk 2
「________ん」
「どうした?紫呉」
「第伍の少女が覚醒したらしい。これを見てみろ」
「草間とペシューコフのアパートに仕掛けた小型カメラからだ」
「ふぅん...まさに遅咲きの白樺ってわけね」
「でもまだ鬼人とは言えない状態の不完全体といったところか」
「こいつとフキはいい仲だ。いずれここに到達するだろう」
「第壱の少女をぶつける。結局、そのために高い金額を払い続けていた訳だ」
「彼女には私から連絡しとくよ。全く...」
「______高い実験材料だった」
______________________
一晩寝たつもりだった。
私が私有ジェットで日本にきてから1日目の朝。
もやもやとした頭をすっきりとさせる為に枕横の眼帯を何とか取り付ける。
すると玄関先から音が聞こえてきた。
ギィ...
そこには照り輝く朝日を後ろに、夏というのにベージュのトレンチコートを着たペシューコフ・ガチャが靴を履いていた。
相変わらず、分かりやすい馬鹿な女だ。
そんな女に侮辱を覚えわざと皮肉をこぼしてみる。
「______よう、死にに行くのか?」
「...」
「あんた、起きてたんだ」
「別に無理に付いてくる必要はないわ。あんたはまだ草間フキの水準に達していない」
「...」
「別に止める気もないし、わざわざドイツから私を呼び出した癖に戯言抜かしてることに関しても何も言ってやらない」
「ただ一言、別れの手向けを遺してやるだけさ」
「"ベラルーシでお前を助けたのが間違いだった"」
「ただそれだけだ」
「...」
心に刺さっている、やはり暴言というのは最高だ。
こういうカスに一発言ってやると胸がスカッとする。
そいつがどんな思いで何をしようと考えていても真理を突くと黙って考えを改め始める。
考えが甘ぇんだよ、クソガキが。
「...」
「そう、それは悪かったわ」
「でも状況が変わった。私はフキに成り、あんたは違う。それはどう足掻いても変えられない事実だし」
「...あんたまで失ったら私は...」
「...」
ガチャから予想も出来ない程の弱々しい声を聞く。
刹那、ガチャの目元から大量の血液が流れ出したのを目の当たりにした。
「ガチャ、お前...っ」
「...もう私は、とっくに人間じゃない...きっと別の何かなんだ」
「本当は怖い。真実を知って、私がどういう存在なのか知るのが怖い」
「それでも...私はあの人を助けに行かなければならない」
「_______だから行くよ、私_____」
「.....」
それから先、私は何も言わずただ彼女が立ち去るのを眺めていた。
それ自体に、特に意味は無い。




