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killer of one eye (一つ眼お化け)



_____メキシコシティ国際空港 東出口




「...」





ピーンッ




カチャッ




ピーンッ




カチャッ




その日のメキシコは涼しい方だった。


温かな程よい気温に、気持ちのいいそよ風。


太陽こそさんさんと出ているがシャツ一枚で過ごせる日だった。


私、花崎紫呉は集合場所、東出口の向かってすぐのオブジェに寄りかかっていた。


私の目の前を行き交う顔つきの違う人々を見て、やはりここは空港だ、と感じさせられた。


しかし耳が痛くなるほどの騒音も感じられなくそこでは静かな時をすごした。


私はまだ仲間の誰も来ないで暇だったから、昨日貰ったZIPPOを取り出して、開けて閉めての繰り返しをして暇つぶしをしていたわけだ。







「(あいつ、遅いな...)」


「(...このジッポ。150万円とか意味わかんない数字ついてるし。なんでそんなものもってんだろ)」


「(ノリちゃんと遊んでるところ見られたし...)」




「紫呉」



「にょわあああッ!!!」




ガキーンッ



150万円のZIPPOを落とす。




「お前...大事にしろって言っただろうが」



「いきなり耳元で声かける方が悪いだろ!」


「まったく...これから仕事だってのに...」


「てかあんた...」



「あぁ、黒Tシャツに黒スキニーだ(伸縮自在)。目立たないだろ」



「...」


「(最初見た時は正装姿だったから華奢に見えたけどけど、こうして見るとすごい筋肉...)」


「(特に太もも。サッカーやバスケをしていた人間の太ももをしてる)」



「何見てる」



「...なんでもない」


「まぁ、目立たないならいいんだけど」



「...ずっとここに居るつもりか?」



「いいえ、人を待ってる」


「今回は4人編成でいくの。流石にペアじゃ荷が重いからね」



「...そうか」




「tengo algo que quiero preguntarte.¿Dónde está la salida este?」



「...っ」




人が雑踏する中、どうも気になる声がした。


私は紫呉から目線を外し左に目配りをする。


どうやら黒のタンクトップに白シャツを着た女がハットを被った現地の小太りの男に話しかけているようだった。


気になる正体はその不自然なスペイン語だったらしい。





「...」



「あぁ、そこに居たか」


「...ペズ!」



「お、いたいたっ!」




その女はこちらに気づいて軽快な明るい声と共に爽やかな笑顔を向けてくる。


すると女の顔全体が見えた。



「(...眼帯?)」




女はその白い肌に黒い眼帯を右眼に付けていた。


その女がとたとたと軽快にこちらに駆け寄ってくる。



...が。





ガシッ







「...ん?」



「姉ちゃん、人前でそのエロい肌を見せちゃいけないよ」


「特に外国じゃあな」



スキンヘッドの巨漢が眼帯女の左腕を掴んでいた。


女は少し戸惑いながらも、笑顔で対応する。




「あー...これクールビズクールビズ!」



「あ?下手くそなスペイン語話してんじゃねぇよ」


「とりあえずこっち来いよ」






グイッ







「...」



その光景を見ていられなかった私は、その女の方向に歩き出そうと右足を出した。



「助ける必要ないと思うよ、フキ」



呆れた顔で腕組みをする紫呉。


それに反応して、体が静止する。




「...」




片足を戻し、女に視線を向ける。



その眼帯女は相変わらず左腕を引っ張られたかと思えば...







「...っは」



ニヤッ





眼帯女は凶悪な笑みを浮かべる。




次の瞬間、グイッと引っ張られたのは男の右腕だった。





「うぉ...ッ!」




ベグォッ





「やっぱり暴力ってのはいいもんだなぁ...なぁ、ツルピカくん」


「世の国際共通語ってのはこうでなくちゃ」



男はそのまま地面に押さえつけられ、首をグギュウと右手で締め付けられていた。



「ぐ、ごぇ...!」



「...」



男の太い首が充血してピンク色になっていく。


どうやら眼帯女は計り知れぬ腕力を持ち合わせているらしい。


勝敗が決したところで紫呉に目を移すと、目を閉じため息をついていた。


ある程度このことは予想出来ていたようだ。


するとようやく紫呉は眼帯女の方へと歩き出す。


しかし紫呉の表情は、タバコ屋で初めて会ったあの時のような真顔に鷹のような目という厳しいものだった。


どうやら紫呉は場合によって立ち振る舞いをスイッチのように切り替えているらしい。


先程までの喋り方までもが可愛らしい少女の姿、あれが表の姿。


そして今の威圧的な姿が裏の姿。


それでも少女特有の声の高さではあるのだが。


私はその裏の紫呉の後を歩いて追った。


そして眼帯女の元へと到着する。





「おい、ペズ」



「あ?」


「...あぁ、シグレか」



「あんた、空港で人殺すつもり?」



「まさか。国境を超えた対話ってモノをしていただけさ」



「そんなのいいからさっさと空港出るぞ。警備員が来たら私たち拘束されちまう」



「...はいはい、シェフ」


「...おや、君は...」



「紹介する。この黒ずくめは新しく雇った草間フキ二士だ」


「元は陸上自衛隊所属。銃火器に関する知識はそれとなく深い」



「へぇ...」



「...」



「そしてこいつが部隊3人目のクロズコップ・ぺズーヘ。略してペズ」


「この笑顔で善人オーラ出しまくってるが本性は大量殺人鬼。アフガニスタンで敵兵67人を殺した」



「...」




相も変わらずペズは笑顔を絶やさない。


それを私はじっと覗き込む。




「はじめまして、ヤーパンのルーキー。そして一つだけ教えてあげるよ」


「ここは学校を卒業して安心して就職するところでも、なにか技術を磨くところでも、何かを成し遂げる所でもない」


「人を殺して金を稼ぐ所だ」


「君がどこまでやれるか、またどこまで生きていられるか」


「楽しみだね」



女は蛇のような湿った、しかし軽快な口調ですれ違い様に私に語りかけた。



「行こっ、シグレ」




コツ コツ コツ コツ...




「____クロズコップ」


「あんたのその殺した敵の数67人。それに一体なんの意味があるんだ?」





コツ コ....




「...」



足音が止まる。


クロズコップは歩みを止めた。




「フキ...?」




紫呉は疑問をうかべた顔をする。




「...」


「教えてくれ。あんたから殺人という言葉を取れば、一体何が残る?」




「...」


「何も残らない。そして残すつもりもない」


「しかし67人分の血の生暖かさというものは、一生残るかもね」




「...」






コツ コツ コツ コツ





再びクロズコップは歩みを進める。


それは地獄の門を通り抜ける罪人のようにも見えた。












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