[ルートZ] 浦賀村42人殺し
コツ コツ コツ コツ
「久しぶりだ。またこうやって、お前とタバコ屋に行くのは」
「久しぶり...?」
熱された路上の上、紫呉の後ろをついて行く。
灼熱の太陽に照らされた明るいその道路の横には子供たちが遊ぶ小さな公園があった。
それが、私の記憶を呼び覚ます。
「ッ...!」
ズキリ。
また私の脳内に電撃が走る。
視界もグラグラで、歩く紫呉の残像が揺れて歪む。
「2011年12月5日。下校途中、公園で遊んでいた小学3年生の品川隆二8歳を雪に埋もれていた直径10センチ程の石で殴殺」
「被害者の脳は打撃の衝撃で完全に破壊され、救急車が到着した頃には地面の砂利と一体化していた」
「お"ぉええッッ...!!」
びちゃびちゃ...
「どうした?今のは本当にあったことだぞ。新聞にも大々的に載せられた」
「まさかその事実を密かに忘れようとしていたわけじゃないだろ?」
「______被疑者、草間フキ」
「ぅ...げ...」
「安心しろ。その事件は何者かによって揉み消された」
「"何者か"にな」
「その揉み消した理由、それは被疑者が持つ潜在的な鬼人としての素質だ」
「銃で射抜かれても、毒を打たれても死なない鬼人としての素質」
「それが...それが喉から手が出るほど羨ましかったのさ」
私は吐きながら歩いた。
ぐらぐらと揺れる紫呉の小さな背中を追いながら。
しかし、逃げ出せばいいものの体が言うことを聞かない。
なぜ...なぜ彼女の背中について行ってしまうんだろう。
これから先、不幸しか待ち合わせていないと予想できるのに。
「だがまぁ、それは終わったことだ。しかもたかが1人殺しただけで気に病む必要は無い」
「...は?」
「私も小さい頃結構殺したよぉ。最初は社会からの目も怖かったけど」
「それも後々慣れたものだ。だから気にする必要も無い」
紫呉は腕を伸ばしながらそんな残酷なことを言う。
その底知れない恐怖が私を更に過呼吸にする。
「お前は...なんだ...?」
「私はシグレ。それは以前と変わりない」
「さぁ、着いたぞ」
「...っ」
______________________
私は紫呉に手を引かれタバコ屋に入った。
いつものレジ前には山積みの紙タバコがあった。
これは...恐らくベラルーシ産の密輸品だろう。
やはりガチャの予想は当たっていた。
そのまま裏の事務所へと入る。
そこから先、プリンターを動かすと壁に小さな正方形の枠が現れる。
シグレはその壁紙を破き、指をひっかけ開けた。
それは丁度人が入り込める穴で、シグレが入った後に私は穴に引っ張られた。
それは案の定暗い空間。
シグレは出会った時と同じようにマッチを擦った。
ぼわっと赤橙色が空間を照らす。
そこには壁一面に貼られた無数の新聞用紙。
所々赤い塗料のようなものがぶちまかれている。
_____私は好奇心からか、その内容を見た。
________浦賀村42人殺し______
「42...人...?」
全ての記事がそのタイトルで大々的に貼られていると気づく。
「_____2015年6月3日、花崎紫呉10歳が浦賀村にて近隣住民42人を拳銃で殺害」
「それは事実。類まれなる事実」
「だから...」
「...いくぞ」
シグレはまたマッチを1本擦りその空間を通り過ぎる。
まるでここはシグレの記憶のようだった。
混沌とし、それでいて________
「_______破滅している」
シグレが何か壁に触れると、黄色の明かりが私らを照らした。
バチンっ
光が連続して奥に続く。
それは狭い通路とは裏腹に、3畳半の部屋のような空間が顕になった。
実際に畳が敷かれており、勉強机、本棚が置かれている。
その勉強机の座椅子に人の呼吸が______
「...っ」
「お、やっと連れてきたか」
「______待ってたよ、フキちゃん」
白衣を着たその女は白々しくも手を振っている。
脚の長いその女は_________
「________軌ぃ...!」




