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[ルートX] 鬼人

ガチャは走った。


暗闇の過去を。


一筋の希望という光を道標に、とうとう廃工場の梯子を登った。



そして外に出る。




________しかし、






ガチャッ



ジャキッ








「ッ!!」





白樺を靡かせる風と共に、クラシコフそっくりのベリョーザ達に囲まれ、銃を向けられる。


それはあの空間にいた全員分の銃口だった。







「_______あ」





ガチャはただ一言、そう発した。


1人ならまだしも数十人のよく訓練された特殊部隊員を相手するとなるとガチャの運命は決まったも同然だ。



頭に過ぎるのは"死"、一つのみ。



「...やっぱり...こうなるのか...」


「ごめん、フキ。あなたの帰りを待つのは....やっぱり...」










バシュンッ








「__________えっ」





突如鳴り響いた一閃の鞭を叩くような音。


その銃声の方向を向き、一斉射撃を叩き込むベリョーザ達。


しかしその抵抗虚しく次々と床に打ち付けられていく。



その視線の先には___________








ジジっ





[______なんだ、まだ生きてたのか。ガチャ]





「ペズっ!」






黒眼帯に黒髪の女。


遠くの丘の上に居たのは間違うはずもない、クロズコップ・ペズーヘだった。







[私の任務は君らの護衛だ]


[...よく頑張ったな。ガチャ]




「...っ」





ガチャはクロズコップが普段言わないようなことを口にしたので、心の奥に、なにか雫のようなものが落ちた感覚がした。


"感動"というやつである。






「っ!」


「それより、フキが...!」




[フキの事は任せろ。お前は速やかに私の車の元へ来い]


[先程陸軍がこちらに特殊部隊員を乗せたヘリを要請したと言った]




「な、なんでそんなこと...!」




「政府と取引したまでだ。早く車に戻ってこい」




「(今回の作戦の目的はやはりベラルーシ産のタバコ...っ!)」



「ふざけるなッ!私がフキを連れ戻すッ!」






タッタッタッタっ





[ガチャ、貴様命令を無視する気か...ッ!]


[ガチャッ!]




_____________________





タッタッタッタっ...





「(フキが居たのは確か...っ)」


「居ない...」


「...この血痕...まさか...ッ」





ダダっ






「フキッ...!」





そこには2つの死体が落ちていた。


ひとつは軍服を着た憎き青年。


もうひとつは、自分自身が愛した無惨にも穴が大量に空いた黒髪の女だった。





「フ...キ...っ」





それが誰であろうが、死体には変わりがない。


口から大量の血液を吐き出して居るのが大きな証拠であった。




「やだ...やだよ、こんなの...」


「あなたの帰りを...待つって...」


「言ったのに________ッ!」


「嘘つきッ!嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきッ!」


「この大嘘つきッ!!」







...カリッ







「...え?」







瞬間、死体の指が動く。


気の所為なんかじゃない。







「...全く...お前ってやつは...我儘なお嬢様だ」





___________奇跡。



ガチャは瞬時にその言葉が脳裏に過った。





「フキッ!!」


「良かった...死んでなんかいなかった...!」





「こんなもので...死んでたまるか...」


「ごべぇっぁあッッ!」





その言葉の後に、フキは盛大に血を吐いた。




「まずい、まだ神経毒が...ッッ!」






ピッ





「シグレッ!!早く血清を...!」




「(これは...意識が...)」


「(流石に...死ぬ...)」




_____________________







「______出席番号12番、草間フキです」





懐かしい情景が目に入る。


と同時に、暑いセミの合唱も聞こえてきた。


熱波を放つ太陽に照らされた壁際のカレンダーには2018年7月19日と書いてある。


この白いカーテンと茶色のタイルがよく映える空間は母校の保健室である。




「はい、貴女がフキちゃんね」


「上着を脱いでこっち来て」



「...」


「なぜ、私1人だけなのでしょうか」



「あなたね、先週検診の日休んだでしょ」


「そのツケが今日回ってきたのよ」


「さぁ、早く服を脱いで」





する する....







私は着ていた体操着の上着を脱ぎ、スポーツブラと短パン一枚になり灰色の回転椅子に座った。



保健室の先生はいつもの太った女の先生とは違う。


なんというかすらっとしてて、それは足の長さが特徴の某ファッションモデルのような容姿をしていた。


白衣を着たその姿はまさにそれだ。


そして聴診器を胸に当てられる。





「気分はどう?緊張してない?」



「...少し冷たい」



「ははっ...!冷たい、か」


「君は淡白な子だねぇ」


「...ひとつ、聞いてもいい?」



「...なんですか?」





先生は聴診器を外して脚を組む。


じっと私の顔を見た後、顔に手を当てこう言った。





「フキちゃん、あなた...」


「_______鬼人ね」



「...きじん?」




私は聞き慣れない言葉に困惑した。


何故心臓の音を聞かれただけで"きじん"と言われるのか。


多分そういう気持ちで聞いたのだと思う。




「あなたの心拍音、一般の人よりとてつもなく大きいわ」



「病気...ですか...?」



「ははっ...!いやいや、そんなんじゃないよ」


「体質...って言えば分かりやすいかな」




女がニヤリと笑う。




「フキちゃん。この世にはね、鬼人って言われる人体を超えた存在の人間がいるの」


「それはただの体の強さじゃない。衝動性を兼ね備えた言わば"鬼"」


「テレビに出てる金メダルアスリートとか、格闘技世界王者だとか、ああいう人達」



「それじゃあ、この世にきじんってありふれてる」



「まぁ現代じゃ金メダルとっても鬼人じゃない人しかいないからねぇ」


「本当の鬼人ってほら、ナイフで斬られようが毒飲まされようが死なないからさ」



「...物騒ですね」



「さぁ、物騒なのはどっちかな」


「_____フキちゃんあなた...同い年の男の子の頭潰したでしょ」



「...うっ...!」





頭に電撃のような痛みが走る。


ズキズキと痛む...嫌な痛みだ。


思わず顔に手を抑える。





「冬の日の学校帰り、雪合戦してた男の子と...」



「_____やめろっ!」



「...」


「フキちゃんは自分のことを知る必要がある。いや、知らなければならない」


「まぁまだフキちゃんには時間がいるみたいだけどね」


「私の名前は蝶番軌(ちょうつがいわだち)。また会える日を楽しみにしているよ」


「_____草間フキちゃん」



























































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