[ルートX] 傭兵の思い出
キキー...
「ここから先は自分たちで歩け。廃工場はこの先2キロ歩いたところにある。私は無線にて作戦に参加する」
「_____今回も生きて帰れ」
「以上」
ガシャガシャ
私はトランクから89式を取りガチャにアバカンを渡す。
自分の背丈の何倍もある白樺達をかき分けようとしたその時。
ビュッ
バシッ
「これは...」
「海軍式軍刀、横須賀江だ」
「銃弾より音が出なくて良いぞ。それじゃ」
ギィ...
「ちょっと、待て...!」
バタンッ
「...」
両手に重さを感じたそれは鞘のついたまさに日本刀。
鞘は傷のついた茶色、薄茶色の柄。
猿手には赤い装飾品の紐がぶら下がっている。
「...これをどうしろって...」
「背負うくらいなら問題ないよ。行こう、フキ」
「...」
そう言って、私らは白樺達をかき分け30分歩き続けた。
____________________
ザッザッザッザッ...
歩くこと30分。
とある白樺が開けた空間に出る。
何か短い草っぱらのど真ん中に、ヒビの入ったくすんだ井戸のようなものがあった。
ザッザッ....
「ぁ...」
「...ガチャ?」
「地獄の...声...」
「...は?」
「この穴、地獄の声が...」
ザザ________
「き...こえる...」
ザザ______ザ______
突如走馬灯のように流れ出る悪夢。
白黒のそれはガチャの脳内を掻きむしった。
ザザザ_____ジ_______
「う、うぁッ...」
ジジザザザザジジジザジ___________!
「ひっ...ッ!」
「(変わる...ッ変わっちゃう...ッ!)」
「(お姉ちゃんの顔...顔が...ッ!)」
________ぽんっ
______私はガチャの白い頭に手を乗せた。
「______ガチャ、聞こえるか」
「_______私だけの声に集中しろ」
「ここにいるのは...君と私だけだ」
「ッ!」
しゅううぅぅ....
_____視界の走馬灯が消えてゆく。
そこは、美しいベラルーシの大地へと変貌した。
「_____ここが君のトラウマの場所だとしたら」
「私との思い出の場所にすればいい_______」
「はっ...」
ガチャは息を吐いた。
「...ここが...あなたとの...」
その時、心地よい春の風がガチャの頬を撫でた。
透明の澄み切った緑色の風だ。
それがぶわっと吹き荒れて、白樺のように白いガチャの髪が巻き上がる。
木というのは傷がつけば自分でそれを塞ぎ込んでしまう。
...そうだ。
このペシューコフ・ガチャという白樺の傷は私が修復してやればいい。
______私が死なない限り。
「____さぁ、行こう」
「この物語の終わりへと________」
_____________________
更に15分歩く。
すると禍々しいほどにくすんだ、今にも崩れそうな廃墟があった。
いや、廃工場と言うべきか。
...ガチャの手が震えている。
「...ガチャ」
「分かってる」
「行こ、フキ」
「楽しい思い出のまま終わらせよう」
キィィィンッ
_______私は5つ目のナイトスコープを起動させた。
_____________________
私らは建物に侵入し地下室の入口を探した。
「(どこだ。センサーは反応していない)」
________ピッ
「(センサーがなったッ)」
「(もしや...)」
ギギギ...
錆び付いた扉をこじ開ける。
「(やはりボイラー室。そしてここに隠されたように設置された小扉が...)」
ガバァッ
現れた地下室へと続く黒鉄の梯子。
ここから先は地獄だと、そう言っているようだ。
______地獄の穴?
「...」
私は錆び付いた、血なまぐさい地下室へと降り始めた。
_____________________
音のなる方へ行く。
悲鳴とカーンカーン、という何かを叩く音の鳴る方へ。
ピッ ピッ ピッ ピッ
「(センサーが反応している...2人か)」
「紫呉、この奥に2人いる」
「殺るぞ」
[了解、死体は簡易的に隠せ]
「...待って」
「______何かおかしい」
「行くぞ」
ばっ
私はSFP9を握り壁から表に出る。
そして後ろを向いて作業をしている兵隊2人を____
パシュパシュッ
ザッシャアッ...
片方に銃弾を2つ、もう片方を銃剣で首筋を一回刺す。
兵士は作業の手を止め膝から崩れ落ちてゆく。
私はそれを受止め、銃弾を顔に受けた男の方をガチャは静かに捕えた。
「紫呉、2人を殺した」
[了解。その先慎重に進め]
左にいるガチャに目を移す。
「...ガチャ?」
彼女の額から鼻に汗が伝う。
____おかしい。
私は妙に悪寒を感じ左方向の奥に続く通路をじっと見つめる。
...ピッ...ピッ
ピピピピピピピピピピピピピピッッ
「なっ」
_____無数に広がる甲高い音。
_____何か
_____なにかまずい
目の前に存在しないのに...音が...
ゴッ
「づッ」
それは背後だった。
後頭部から鈍い音が聞こえ耳鳴りが始まる。
床に倒れたらしい私は、横目にガチャを眺めていた。
ヴィーチャシナイフを取り出したが、闇から現れた背後の兵士が銃床でガチャを殴る。
「_____」
意識が_______消える______




