[ルートX] The wolf dog
______時を回す。
ただ、懐中時計を巻くように。
すると晴れた心地の良い、とある屋敷が目の前に広がる。
色んな色の植物が生い茂った庭、狼犬のベチカの小さな小屋。
_______ああ、私の家だ。
「ただいま、ベチカ!」
バッグを背負った、とある白い髪の少女が狼犬に駆け寄る。
パタパタと小さな足を必死に急ぎながら。
ベチカは少女を見るといつも、寝ていても、餌を食べていても、怪我をしても私に嬉しそうな顔で駆け寄ってくれた。
そのもふもふの白と灰色の毛並みもまた私は好きだった。
一通りベチカを撫でると少女はレンガ造りの屋敷に走っていった。
______そう、走っていった。
それは楽園の毎日だった。
最高の楽園。
...楽園。
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______ベラルーシ ミンスク第2空港
私は今回ガチャ、紫呉と3人で国際便に乗った。
空港に着いて外に出ると、そこは気持ちのいい春の風が私たちを包み込んだ。
「______ここが、ベラルーシ...」
そこは白が基調とされたカラフルなレンガ造りの建物がたくさん陳列している。
まさに西洋に来た、という感じだった。
目の前にはタクシーの列。
ガチャと顔の似た人間がたくさん歩いていた。
「さ、早いとこ移動しよ」
ガチャは先陣を切って歩き始める。
「移動するって...どこに?」
「私の家」
「...ガチャの家?」
「そ、今日はそこに泊まる。もう残ってるか分からないけど」
「ね。泊まろうよ、みんなで」
ガチャは不思議と楽しそうな笑みを見せた。
白いワンピースがあまりにもガチャに似合いすぎて溶けて消えそうに見ててしまう。
「紫呉。そこは安全なのか?」
「まぁ、問題ないでしょ」
「ガチャは追われる身なんだぞ。もしベリョーザが来たら...」
「もし来たとしても、奴らは手を出せないよ」
「...なぜだ?」
「_____後ろ」
「...」
後ろを振り向く。
そこにはまた、下手くそなロシア語だか何だかを話している黒髪の女がいた。
「あれは______!」
「ばか...!前向きなって...っ!」
「あれペズじゃないか...!」
「今回ペズは部隊に参加していないことになっている。少将に気づかれないように行動するためにね」
「だからガチャの家で寝泊まりしてても問題ない。来たとしても私らを守ってくれるってわけ」
「...あ...あぁ」
少し嬉しいような歯痒いような。
ペズは好きだ。
だからまた会ってゆっくり話したかったのだ。
「今度、タバコ屋に呼んでもいいか?」
「良いけど...なんで?」
「ペズのこと好きなの?」
紫呉は悪戯に聞いてくる。
「ああ、好きだ」
「大好きだ」
「へ、へー...」
「私の部屋にでも呼んで」
「語り合って_______」
「わ、分かったから!」
紫呉はその時、赤面しながら唾を撒き散らした。
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____車を走らせること1時間弱。
シルバーのパジェロに乗った私らはとある草原地帯へと飛び出た。
それはとても雄大で、黄土の一本道を走っているところ。
その先に、赤の屋根を基調としたレンガの大きな屋敷が見えてきた。
「あれか」
「安心しろ、屋敷は既にペズが調査している。誰も立ち入らせていない」
「そ。よかった」
キキィ...
屋敷の門前に車を止める。
庭と見られる場所は既に雑草が生い茂げっていた。
そこで私は、とあるものに気を引かれる。
「ガチャ、あれはなんだ?」
「あぁ、あれは飼っていた犬の小屋。今じゃボロボロだけどね」
「...」
ガチャはどこか寂しそうに笑い、その犬小屋へと歩き出す。
「ベチカっていう名前でさ。狼犬なの」
「帰ってきたら私の顔を舐めてきて_____」
「ッ...!」
「...ガチャ?」
「ベチカが_____」
「______居る」
ガチャが小屋を覗いた先には、顔の凛々しい白と灰色の子犬が丸まって寝ていた。
とてももふもふである。
「でもベチカは...年齢的に成仏したんじゃないのか?」
「多分子供かな...」
「その証拠に、ベチカにはない耳の黒斑点がある」
「雑種か...」
横を見てみると、紫呉が何かソワソワしている。
真面目な顔して何堪えてるんだこいつは。
「ん〜かわいいね〜!ミーリェンカヤ!」
ガチャはその子犬を抱えあげ頬を擦り付ける。
犬は突然起こされてキョトンという顔をしていた。
「紫呉、触りたいなら触りたいと____」
「ふんっ...早く中に入るぞッ」
「...言えばいいのに」
そうして私らは、屋敷へと歩き始めた。




