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ZIPPO made in 1939



この世で私を突き動かす存在、それは強烈な刺激だけだった。


それに気がついたのは、201x年のとある冬の日である。



____________________




「おーいフキ!いくぞー!」



小学生低学年。


友人F君、K君、Gちゃん、そして私。


ある日、空から雪が降ってきた。


学校の帰り道で雪合戦をしようということになって、近くの広い公園のグラウンドで雪玉を投げあった。


私は乗り気ではなかったが、Gちゃんの説得もあり渋々参加した。


どうやら女の子ひとりでは心もとないらしかった。


チームはF君とK君、Gちゃんと私という組み合わせに勝手に決められた。


女子が逃げる姿を面白がって見たかったのだろう。


お互いある程度感覚を保った状態で、F君が私目掛けて雪玉を投げた。






スカッ






「っ!」






眉間目掛けて飛んできた不細工な雪玉を私は避けた。


容易く避けられた事に驚いたF君は同時に男としてのプライドを汚されたらしく、顔をクシャッとさせ背中を見せしゃがんだ。




次にK君の雪玉が飛んでくる。


それもまた、しゃがんで避けた。


K君はすぐ次の玉の用意にかかった。




「すごいよ...!フキちゃん!」




Gちゃんは目を輝かせ私を見ている。


私は、またなぜこんな表情をするのだろう、と思いながらGちゃんを見ていたがその時



ぐんっという鈍い音と共に写った光景は彼女になにか黒いものが侵略されている光景だった。


訳が分からなかった。


Gちゃんの輝いた顔は目を見開いた真顔になり、今にもなにか叫び出しそうな状況である。



「あ、あ....」



顔の右側からなにかがポロッと落ちた。


なんだろう、と思い下を見るとそれは雪玉の中に入った黒い石だった。



Gちゃんが叫ぶ。



あぁ、私は目に石を投げられたのか。


でもこのGちゃんの叫び声が心地いいのは何故だろう。


胸がすく思いで、私は地面から雪をかき分け冷えきった石を取り出した。


それもとりわけ大きな石。


それを片手に持ち、ぐぐっと体をカタパルトのように曲げた。


いつも以上に力が入る。


苦悶の表情のF君の眉間目掛けて、それを投げたところで記憶映像はぷつりと途切れている。



後にGちゃんと再会し、当時の話をしたことがある。



その後はどうなったか、というとGちゃんは困った様子で私に打ち明ける。



「どうなったかは...ちょっと言いたくない」


「でも、フキ。あなた_______」


「________笑ってたんだよ?」








____紫呉とあった日の翌日_______







カランカランッ





「んっ!ノリちゃんはどーしてそんなにかわいいんでしゅか〜?」



「...」



「...はっ!」



「...」




お互いが固まる。


そして空気までも。


どうやら紫呉は猫とじゃれあっていたらしい。


それも、店の床にゴロゴロと転がりながら。




「...紫呉...?」



「い、いや!ちがっ...!」




紫呉はびくっ、と瞬時に四つん這いになり体を起こした。


さながら猫のようである。



紫呉はスっと立ち上がり体をパンパンとほろった後、顔を赤らめながら"おほん"と咳払いをして見せた。



「...」


「今日は帰ろうか?」



「いやいや帰んなくていいから!どうぞごゆっくり!」



「...」


「邪魔するぞ」




それからしばらく紫呉は引きつった笑顔を保っていた。




______________________



___店のバックヤード_____




暗い通り道を再びマッチをつけ歩いた後、事務室のような明るい部屋に辿り着いた。


プリンターやパソコンがLEDの白い光で照らされている。


前回入った武器庫とは大違いだった。





「なんだ、普通の部屋もあるじゃないか」



「当たり前でしょ。ここは店の管理室なんだから」


「ここで仕事の話するだけ」



「警察に気づかれないのか?」



「ただ話をしてるだけなら問題ない。本格的に傭兵として活動するならそれ専用の部屋があるし」


「雇い主との連絡交換。仕事内容の確認。現地の状況を調べたりだとかそういうの全部そこでやるの」



「...そんなので本当にバレないのか?」



「生憎、何十年この店経営してるけど1回もバレたことないよ」



「...」



「疑ってるなら、警察にでも聞いてきたら?」



「...」


「わかった。信じよう」



「...そう。じゃあ仕事の話に入るよ」


「1か月前、南米のホルヘという男から仕事の依頼が来た」


「この男は南米でも絶大な勢力を率いるマキージョ・カルテルの幹部だ」




紫呉はその男の顔写真を私に渡す。


長い口髭、短髪の頭髪、キリッとした目元。


それら特徴を瞬時に記憶する。




「今現在、メキシコではマキージョ・カルテルが領土の3分の1を独占しているらしい」


「でもマキージョと同等の力を持つ組織があって、その組織もまた領土3分の1を支配してる」


「それがミゲル・ホセ・フェルナンデス・ガルシア率いるノガー・カルテル」


「主にこの2つの組織が縄張りを巡る勢力争いをした結果、他の比較的小さな10程の組織も勢力を拡大するために潰しあって現在の麻薬戦争が起きている」



「その二強に匹敵する力を手に入れるため、お互い潰しあって縄張りを取り込もうとしているということか」


「縄張りを取り込めば取り込むほど麻薬の生産拠点を増やすことができ、密輸する麻薬も多ければ多いほど武器を調達する資金も増やせる」



「それはこの2つの組織にも言えること。特にマキージョは傭兵を雇うほどこの戦いに執着しているし」


「まとめると、私らは今回マキージョ・カルテルに傭兵として加担しノガー・カルテルを打倒すること。これが任務だ」



「メキシコ政府はどう出る?」



「相変わらず沈黙を守ったまま特に動きは無し。未だ薬物に関しては否定的だけどね」


「"麻薬戦争は終わった。だから争う理由もない"だそう」



「...」


「...動きなし、か」



「...フキ?」



「いや、なんでもない。それより銃を見せて欲しい」



「いいよ。こっち来て」



_____________________



______武器庫







「銃は適当にこの中から選んで」




ガチャガチャ




「...」


「89式?」



「それはドイツの職人に作らせたコピー品。最近仕入れたものだから、劣化も少ない」


「フキにはちょうどいいんじゃない?」



「...」


「(官給品のマークと製造番号がないのを除けば実際の89式とほぼ同じだ)」


「じゃあ、これに」



「89式ね。あと装備は」



「装備は自分のを使う」



「...そう。あんまり派手なので来ないでよ」



「私はトラヴィス・ビックルじゃない」


「...それと、マッチは控えろ。火薬に火の粉が飛んだら爆散致死じゃ済まない」



「じゃあランタンでも買えと?」



「これを使え」





ピーンッ






「...これ、ZIPPO?」



「1939年物のビンテージ品だ。無くすなよ」



「え、これくれるの?」


「ちょっと!ねぇって!」




そういうと、私は灯りも無い暗闇に向け歩き出した。





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