博士と立野くん〜決戦〜
「博士、今度は何を作ってらっしゃるんですか?」
いつもの如く、異常な集中力で何かの機械を組み立ててゆく博士。立野くんが声をかけると、キリのいいところで手を休めた。
「レーザーカッター出力装置じゃよ」
「何に使うんですか?」
「硬いものを切断するんじゃ」
「たとえば?」
「ダイヤとか」
「ダイヤを切断してどうするんですか?」
「ええい、うるさいやつめ!それは装置が出来てから考えるんじゃ」
またか……。立野くんは天を仰いだ。いつも後先考えずにいろいろ作って問題起こすんだから!
「Amazonで人工ルビーを大量に注文したのは誰?」
博士の奥さんが研究室に顔を出した。
「わしじゃ」
「まあ、あなた!私の誕生石覚えてらしたの?でもちょっと多すぎますよ!」
「お前さんに何個かあげてもいいが、ほとんどは装置のレーザー集約点に必要なんじゃ」
博士の奥さんは立野くんに「何の装置?」と耳打ちした。
「レーザーカッター出力装置とかなんとか。やめさせた方がいい案件ぽいですね」
その時。みんなのデバイスから緊急速報のチャイムが鳴り響いた。
「なんだ、なんだ」
日本時間14:00時。謎の飛行物体が宇宙より飛来して、全長90mの生物を各地に落として行った。生物は民家を壊し、発電所に向かっている。
「原子力発電所の炉に向かっておるんじゃろ」
博士が言った。
「なんてこと!」
奥さんが蒼白になって立野くんを見た。
「博士。これが来ることを知ってましたね?!」
「まあな」
「タイムマシンに似た装置を使って何度か過去と未来を行き来したんでしょう?」
「そうじゃ」
「それならそうと、なんで話してくれなかったんです?」
「いく度目かの過去で話したら立野くんに阻止されて手遅れになったからのう」
「げ」
俺のばかばか!いつもの調子でいたらかなりやばかったぞ。
「大丈夫。何度かやってみとるから。今度はうまくいく」
「博士、すごいです」
立野くんは博士を見直しました。
機動隊と連絡をとって、出来立てのレーザーカッター出力装置を運んでもらい、謎の生物を阻止できた。
生物の体表面はちょうどダイヤの硬さくらいあったそうだ。