律儀な四天王が戦闘前に全回復してくれるらしいので、重病を患う妹を連れて行ってみた。
「ククク、貴様等の快進撃とやらもここまでだ」
「その声は……魔王四天王アビカンデ!!」
青い炎に包まれ、勇者達よりも遙かに巨大な身の丈を持ち合わせる魔神が姿を現した。
「我々は貴様等の力を見くびっていた。故に、全力で相手をしようではないか!」
「クッ……! なんて圧だ……!!」
勇者一行は四天王最強と称されるアビカンデの圧に負けじと気合を入れたが、連戦に次ぐ連戦でその体力は心許ない状態であった。
「ふむ、しかし見たところ貴様等は万全ではないようだ。どれ、全力で叩き潰すために回復してやろうぞ」
「なんだと……!?」
アビカンデのかざした手から魔力が注がれ、勇者一行の体力は全回復。傷も癒え万全な状態である。
「なんという余裕! これが四天王最強か……!!」
自ら敵を回復してしまうアビカンデに、勇者は恐れおののいたが、それでも尚立ち向かうべく剣を握った。
「──あ」
が、すぐに何かを閃き剣をしまった。
「む、どうした勇者よ」
「タンマ。一回帰るわ」
「なんだと!?」
「セーブしてくる」
「……セーブは大事だからな。すぐに戻れよ」
「わりぃな!」
勇者一行はダンジョンから一度離脱し、故郷の村へと移動魔法で飛んだ。
「──お兄ちゃん!?」
「説明は後だ。戦士、ベッドのそっち側持って」
「任せるでござる」
勇者は自らの妹をベッドごと運び出し、今一度アビカンデが待つ洞窟へと向かった。
「待ちかねたぞ勇者よ!」
「きちーわ! ここまで来るのマジきちーわ!」
「むむ、よく見れば傷を負っているようだな。どれ、回復してやろうぞ……」
自ら壁に頭を打ち付け作った傷とはつゆ知らず、アビカンデは手をかざして魔力を注ぎ始めた。
「む、その娘はなんだ……!?」
「コイツも仲間だ。回復してやってくれ」
「寝たきりじゃないか……」
アビカンデは躊躇したが、一度回復してやると言ったばかりに、仕方なく同じように魔力を注ぎ始めた。
「……クッ! この娘、スグアゴハズレル病か!!」
「そうだ……医者には不治の病と言われ、見捨てられた」
治すのには相当なる魔力を要するが、四天王最強と称されたアビカンデには自信があった。
「か、回復してやろうぞ……!!」
力を込め、更なる魔力を注ぎ込む。
次第に妹の容態は良くなり、顔色もみるみるうちに明るくなった。
「……ぜぇはぁ、ぜぇはぁ……!! ど、どうだ……回復したろう……!!」
「どうだ!?」
「お兄ちゃん……治ったよ!!」
がっしりと抱き合う勇者と妹。
二人は涙を流して喜んだ。
「よし! 殺れ!!」
「ウォーッ!!」
「シャーッ!!」
勇者のかけ声で一斉に襲いかかるメンバー。
「ちょっ! ちょっと待て……魔力の使いすぎで辛い……!!」
「知ったことかー!!」
魔力をほとんど使い切ったアビカンデはものの数秒で倒され、勇者一行は魔王城へ向けて歩き出した。