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52着目 またまた登場!? 新たな光魔法兵器!!

 翌日、シュピーケルマン大公軍はヴェラセネ・キンダーへの反攻を開始した。

 当然、オレ達もその作戦に参加している。


 この反攻作戦は、敵が暗殺戦法を使えなくなったこともあり順調に進んでいた。


「ここの戦いも、もうすぐ終わりかな?」


「そうですね。この勢いを保てば、二、三日以内には終わるのではないでしょうか」


「でもなぁ~、なんか進行ペースが速すぎる気が……」


 オレがそういった瞬間、オレのすぐ左に何か光る物が通った気がした。

 そして次の瞬間、光が通った場所が燃えた。


「なっ……?」


 光が出た方向を見ると、巨大な望遠鏡のような物がその姿を覗かせていた。


「新兵器かよ……」




~ヴェラセネ・キンダーside~


「どうかな、ユルゲン? この『光線砲』の威力は?」


 『光線砲』。それが、この兵器の名前だった。

 強力な光を放つ魔道具を搭載し、それを、レンズを使って威力を増加。その結果、光が通った場所が焦げ、炎上するという破壊兵器となった。


「この魔道具の開発には、光魔法使いを始め光に詳しい人達の力があったからだよ。今のアカデミアでは、そんなことしないだろう?」


 この世界の研究活動は、基本的にスタンドプレーだ。一人でテーマを決め、研究を行う。

 時々チームを組むこともあるが、似たような専門で固まってしまう。


 ところが、エドゥアルトの場合は違う。全く異なる分野の人材を招聘し、研究開発を行っているのだ。

 音波兵器を始めとした音を使う魔道具は、全て四天王の一人であるマルガレーテの協力を得て作られている。

 彼女は音を武器にするジョブであるため、音について

詳しいのだ。


 そのようなスタイルを持ち、しかもスポンサーであるボスからは口をほぼ挟まれていないため、エドゥアルトはその才能を遺憾なく発揮した。

 その結果、この世界の基準から数十歩先を行くような魔道具を完成させたのだ。


「さて、この前代未聞の兵器に、ユルゲンはどう対応するのかな?」




~レオナside~


 敵の光線攻撃に、オレ達は全く為す術が無かった。

 光魔法を使う人自体が比較的少ない上に、そもそも光魔法は回復魔法やアンデッド系の魔物に対する有効打として使用する場合がほとんどで、あんな対人攻撃魔法として放つ人なんてまず聞いたことがない。


「いえ、正確に言えば違います。実は普通の攻撃魔法も光魔法にはあるのですが、使用する魔力の割に威力が低いのです。なので、回復魔法や対アンデッド魔法を得意とする人が多いのです」


 ローザから訂正を入れられてしまった。

 さすがは学者系の貴族家出身だけある。


「それよりも、私に考えがあります。レオナさんとエルマさんには、援護を頼みたいのです」


「勝算があるんだな?」


「はい。手順は――」


 説明を受けたオレ達は、完全に納得してしまった。それくらいローザの提案は理路整然としていて、説得力のある物だった。


「わかった。この作戦に欠けよう」


「援護はあたし達に任せて、思いっきりやって来て!」


「ありがとうございます。では、行ってきます」


 そしてローザは、一直線に敵の光線兵器へ向けて走り出した。

 一見すれば無防備に見えるその行動。当然、ヴェラセネ・キンダーはローザに狙いを定め、光線を放つ。


その光線はローザに向かい――はじき返された。

 よく見ると、ローザの肌は金属のような光沢を放っている。


「皆さんはまだご存じないようですね。この『構造色』を!!」


 実は、ローザは冒険者業の傍ら、個人に出来る範囲ながら研究も行っていた。

 ジョブ能力もあり、ローザの興味の対象は生物全般に及んでいた。


 その中でローザは、一部の虫が持っている金属光沢を持った色の正体を探ろうと、虫を捕まえては色素を抽出しようとしていた。

 だが、金属光沢の素となる色素は抽出できないでいた。


 それを見たオレは、前世の知識から『構造色』を思い出し、それとなくローザにヒントを教えた。

 構造色とは、物体そのものが色を持っているわけでは無く、表面の微細構造によって光が反射し色を発しているように見える現象のことだ。

 虫の金属光沢は、大抵この構造色によって発しているのだ。


 この世界、ようやく原始的な顕微鏡が現れたばかりで、とても構造色を呈する表面構造を観察出来るような性能ではない。第一、いくら大公家の嘱託冒険者でも躊躇してしまうほど、顕微鏡は高い。

 そこでローザは、自分の目をジョブ能力で改造し――ついに構造色を証明するに至ったのだ。


 そして現在のローザは、あらゆる光を反射するように自らの皮膚を改造しており、あの光線攻撃を一切受け付けていなかった。

 その代わり、身体が金ピカになって目立つことこの上なかったが。


 当然、いい的になるのでオレとエルマでローザを狙う敵を排除していた。

 そして、遂に。


「食らいなさい! ガラスの枝です!!」


 植物の中には、ガラス性の物質を持っている種類が存在する。イネもその一種で、籾殻に含まれている。

 ローザは、持ち歩いている木の苗を遺伝子改変し、枝に大量のガラスを含むよう改造。

 そのガラスを大量に含み硬くなった枝を伸ばし、敵の光線兵器のレンズを破壊した。


 この瞬間、ヴェラセネ・キンダーの光線兵器は無力化された。



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