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47着目 早替え! ドレスアッパーの成長!!

 翌日も、昨日と同じく竜騎士の衣装で敵を焼いていた。

 だが、しばらくすると戦場の様子がおかしくなる。


「あいつらが来た!」


「とにかく抑えろ! 城壁にとりつかれたらマズイ!!」


「おい、攻撃が来るぞ!!」


 次の瞬間、爆発が起きた。

 その爆発した方向を見ると、ヤツが居た。


「ヴェラセネ・キンダーの四天王、カスパルと妹のユリア……」


 オレが近づくと、カスパルが話しかけてきた。


「今回は竜騎士になったのか」


「それがどうした?」


「お前は能力をころころ変えられるらしいな。そして戦闘中は能力を変えられない」


 すごいな、ヴェラセネ・キンダー。もうオレのジョブ能力についてそこまで調べ上げているとは。


「だったら?」


「能力に関して当たりが付けられれば、対策もしやすいんだよ。ユリア!」


 すると、ユリアが大ジャンプを繰り出し、オレに向かって殴りかかってきた。

 オレはすぐさま回避したが、クレハにかすってしまった。

 しかも、かすっただけなのにその場所の鱗が破壊されてしまっていた。


「今、ユリアに憑依させているのは『ドラゴンスレイヤー』のジョブを持った霊だ。竜に乗ってるお前には相性が悪いんじゃないか?」


 『ドラゴンスレイヤー』。珍しいジョブとして知られているものの一つだ。

 その名の通り、ドラゴン系の魔物に対して絶大な攻撃力を持つ。

 だからドラゴンになったクレハに乗る今のオレには、相性が悪いはずだった。


「ああ、そうだな。だから、こうする!」


 オレはクレハから飛び降りた。

 そして着地と同時に光を纏う。


 その光が解けると、オレは『魔法戦士の衣装』を身に纏っていた。


 少し前のオレならあり得ないだろう。事実、この光景を目の当たりにしたカスパルは目を丸くしていた。ユリアは全く表情を変えていないが。


「お、お前……戦闘中に服を替えられたのかよ!」


「つい最近だけどな。オレのジョブ能力も、成長しているって事だ」


 実は帝都での事件が終わった後、オレのジョブ能力は成長していた。

 竜騎士の衣装を始め強力な衣装がラインナップに加わった事もあるが、衣装の登録機能が使えるようになったのが大きい。

 この機能は、あらかじめ衣装とインナーのセットを四つまで登録でき、戦闘中でも登録したセットであれば替えられるのだ。


 登録機能を使えば、敵に合わせてその場その場である程度柔軟に能力を変えることが出来るし、衣装へのダメージは各セット固有なのでボロボロになり次第予備のセットに交換するという戦法も可能だ。


「さて、今度はこっちから行くぞ!」


 オレは剣を抜き、炎の斬撃をユリアに飛ばした。


「ユリア! 霊を変えるぞ! 対応するんだ!!」


「……わかった、兄さん」


 ユリアが正拳突きをすると、水魔法が打ち出され、炎の斬撃と相殺してしまった。

 どうやら魔法使いの霊を憑依させたらしい。


 何度か魔法の撃ち合いをしたところを見計らい、オレはさらに衣装セットを交換。

 ガンマンの衣装になり、拳銃を発砲しながら近づく。


「また変わった……。対応するぞ、ユリア!」


 ユリアに憑依した霊を変えたようで、ユリアは腕を交差させた。すると、オレの銃弾の弾が弾かれる。

 どうやら物理防御に特化したジョブの霊を使ったらしい。


 それこそがオレの狙い目だ。ガンマンの衣装に対応した霊を憑依させた瞬間、魔法戦士の衣装に戻って魔法攻撃を繰り出す。

 また魔法攻撃に対応されれば、ガンマンの衣装なり竜騎士の衣装なりで攻撃する。


 こうやって揺さぶりをかけ続ければ、相手の対応力も限界がやって来る。

 事実、ユリアは憑依による対応ではなく回避行動で攻撃を躱すことが多くなってきた。


「ダメだ、俺の憑依が追いつけない……。すまない、ユリア! 奥の手を使うぞ!!」


「……大丈夫。兄さんを信じる」


 すると、ユリアは猛スピードで俺に接近した。


「勝負に出たか。なら、オレも!」


 オレは武闘家の衣装のセットに替え、近接戦に備えた。


 そしてお互いに打ち合ったのだが……三秒と経たず劣勢に立たされてしまった。

 明らかにユリアの方がスピード・威力共に大きくオレを上回っている。オレはヌンチャクやトンファーといった武器を織り交ぜて攻撃を仕掛けているが、全て見切られてしまい、逆にカウンターを入れられてしまう始末だ。


「ユリアが強くなったのも無理は無い。今ユリアに憑依させたのは、ユリアと同じ『拳闘士』のジョブを持った霊だ。同じジョブを持った霊を憑依させると、能力が何十倍にも上がるからな」


「……あなたの能力に合わせてこっちの霊を変えても、埒が明かない。だから……力尽くで叩き潰すことにした……」


 カスパル・ユリア兄妹がそう言った。

 つまり、もう彼女の能力は相性云々で解決出来る相手じゃ無い。そんなのを歯牙にもかけない格上の存在になってしまったのだ。


 こういう時は一旦逃げて体勢を立て直すべきだが、おそらく彼女のスピードでは許してくれないだろう。すぐに追いつかれる。

 そうしている間にも、すでにオレの衣装は全て破壊され、インナーもあと少しで全壊するところまで追い詰められてしまった。他の衣装セットに替える隙すら与えてもらえない。


 ところが……。


「かはっ……」


 ユリアが突然吐血した。よく見ると、彼女の胸から剣が生えていた。


「悪いわね。お姉様にはまだ聞きたいことがあるの。死なれたら私が困るから」


「……兄、さん……ごめん……なさい……」


 そして、ユリアはその場に冷たくなりながら崩れ落ちた。


「クリスタ……? どうして、お前が……?」


 ユリアを討ち取ったのは、オレの実妹のクリスタだった。


「さっき行った通りよ。まだお姉様から私が無事でいられるような作戦を聞いていなかったから。それにしても、暗殺が上手く行って良かった。アサシンのジョブほどじゃ無いけど、勇者でもある程度暗殺の腕前があるらしいからぶっつけ本番でやってみたけど――」


 そこで、クリスタとの会話は途切れてしまった。


「よくもユリアを、ユリアをーーーーーー!!」


 ま、そらそうなるわな。最愛の妹を目の前で殺されたんだから、たとえ戦場という場所だとしても現実を受け入れたくは無いだろう。

 ただ、結構マズイ状況になっている。カスパルが霊を無尽蔵に集めているらしく、かなりヤバい空気が蔓延してきている。

 事実、近くにいるヴェラセネ・キンダーの構成員すら、その瘴気に当てられて泡を吹いてバタバタと気絶している。


「お前ら!! あの世に行って、ユリアに詫びろ――っ!?」


 だが、オレ達の横を銀色の何かが通り過ぎたかと思うと、瘴気がいつの間にか霧散した。

 そしてカスパルの胸に剣を突き刺している人物の姿が。


「アルテンブルク大公……?」


 その人物とは、なんとアルテンブルク大公だった。


「……すまない。私も父も間違っていた。私は父を必要以上に偉大に思ってしまった。だから無理に父が考案した制度を維持しようとしてしまった。その結果がこれだ。これからは全てを見直し、お前達のような者を生まないようにする。だから……安らかに眠ってくれ」


「……気付くのが遅すぎるんだよ、バカ領主が……!」


 そしてカスパルは、アルテンブルク大公に寄りかかるように倒れた。



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