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35着目 準決勝! ウエポンマスターの脅威!!

 ジョブの中には『最高峰』と称されるものがいくつかある。

 文字通り、その分野で最高レベルの活躍を最も期待される能力を持つジョブだ。


 戦闘系のジョブの一つ『ウエポンマスター』も最高峰とされるジョブの一つ。

 剣、槍、斧、盾、弓と人力で扱える武器を全て達人レベル以上で扱うことが出来るジョブだ。


「……十秒もかかっていなかったな」


「はい。相手も本戦に出場する以上、決して弱くは無いと思いますが……圧倒的ですね」


「しかも、かなり冷静みたいだよ。一撃目を相手に譲ったのに難なく捌いて、さらに的確に相手の弱点に攻撃してた……」


 オレの次の対戦相手の試合を見ていたのだが、すぐに決着が付いてしまった。

 この圧倒的な勝利を手に入れた男こそ、アルテンベルク大公家の嘱託冒険者、ハルトヴィヒだ。

 そのハルトヴィヒのジョブが『ウエポンマスター』なのだ。普段はそのジョブ能力と、それを下地に鍛錬を積み重ねた達人レベルのさらにさらに先にあるレベルの武芸で魔物や犯罪者相手に戦っているらしい。


 そして最も注意しなければならない点は、その冷静沈着さとどんな状況でも対処できる対応力だった。


「レオナさん。何か作戦を思いつきましたか?」


「まぁ、なんとか。それでも勝てるかどうかは五分五分と言ったところだな。付け入る隙があるとすれば、あいつは必ず初手を相手に譲る所だな」


 どうやらハルトヴィヒは、自分が(ジョブ能力に寄るところもあるが)高い対応力を有していることを理解しているし、それは紛れもない事実だろう。

 だからこそ、初手を相手に譲るというのは彼にとって非常に理にかなった戦法であるし、自身の勝利に近づけるのだ。


 逆に言えば、そこを崩せばオレにとって有利になる。

 それが出来る衣装を思いついたのだが、その衣装は防御力が低く、ウエポンマスターたるハルトヴィヒの攻撃をそう何度も受けられないというリスクがつきまとうのだ。


 だが、勝利をつかむにはそれくらい飲み込まなければならないだろう。


「ところでローザ。次の試合のために、ちょっと教えて欲しいことがあるんだけど、いいか?」


「はい、もちろんです。レオナさんの勝利のためならいくらでもお手伝いします」




 そして翌日のオレの試合。


「試合、開始!」


「一撃目はそちらに譲ろう。年少の少女に対して最初から全力なのは、大人げないというもの」


 試合開始の合図が審判からされるのと同時に、対戦相手でアルハルトヴィヒからそう言葉をかけられた。

 もちろん、そんなのはったりだ。むしろハルトヴィヒの有利になる展開しか無い。


 だが、これを予期してオレも準備してきたのだ。


「そうですか。では、お言葉に甘えて」


 オレはビンをいくつも取り出し、ステージ中にそれをばらまいた。

 ビンはステージに落ちると割れ中身が飛び散るが、すぐに霧散してしまう。


 最初は訝しんでいたハルトヴィヒだが、すぐに剣を構え振り回し、旋風を巻き起こした。


「はぁ……はぁ……。お前、毒を撒いたな!」


「正解」


 そう、ビンの中に入っていたのは、揮発性が高く、透明無臭な毒。蒸気を吸い込めば呼吸器にダメージを与える。

 もちろん試合用に合わせて作った、回復魔法が通用する毒だ。後で完全に治すことが出来る。

 そして試合中にこの毒を少しでも吸えば、常に息苦しい状態が続き、全力で戦闘をこなすなど不可能になるだろう。


 この毒を扱う能力を持つ衣装こそ『ポイズンハンドラーの衣装』。ポイズンハンドラーとは『毒使い』の意味だ。

 見た目は毒々しい紫色のドレス。当然ながら丈は短い。ドレスメダル四五〇枚で購入した。


 ポイズンハンドラーの衣装の能力は、毒を生成すること。さらに生成した毒を収めるビンも作り出すことが出来る。

 さらに、毒への耐性が高く、自分で作った毒はもちろん通用しない。

 なので、オレがどんなに毒をまき散らしても自分が毒に蝕まれることは絶対に無いのだ。

 その代わり、防御力が低い。特に物理攻撃に対する防御力が皆無で、腕利きの攻撃を一撃食らっただけで下着姿にされてしまうだろう。

 オレはこの能力を使いこなすため、ローザに毒についてレクチャーして貰っていたのだ。


「さぁ、まだこれからだ!」


 オレはビンを取り出すと、剛速球でハルトヴィヒに投げ付けた。

 しかも暴投せず、正確にハルトヴィヒに吸い込まれる。


 オレは前世含め、野球の経験は一切無い。なのになぜこんなに投擲が上手く、早いのかというとインナーの効果だ。

 今回、オレはドクロがスタンプのようにたくさんプリントされているデザインの『スカル・スタンプ・パンツ』と『スカル・スタンプ・ブラ』を着ている。

 それぞれ投擲の精度を上げる『投擲技術強化』と速度を上げる『投擲速度強化』を付与している。

 なお、値段はそれぞれドレスメダル三十枚。


 だがしかし、ビンは命中する前に、ハルトヴィヒが剣で粉砕してしまった。

 やはり毒で十全の実力を出せなくなったとはいえ、この程度で倒せるわけが無いか。


「……この程度で、どうにかなると思ったか……な!?」


 ハルトヴィヒが驚くのも無理は無い。なぜなら彼の鎧や武器など、あらゆる装備が解けてしまったのだから。


オレがビンに詰めたのは『酸』。大抵の金属を溶かすほどの強力な毒だ。

 オレはビンを投げてもすぐ破壊されてしまうと思っていた。だから、最初から破壊されることを前提に、中の液体を浴びせるだけで相手を弱体化できないかと考えた末の作戦だ。


「もう武器は無いぜ? 降参をおすすめする」


「……俺の武器が、いつ装備したものだけだと言った……?」


 すると、なんとハルトヴィヒの手から光の刃の様なものが姿を見せた!


「ハァ、ハァ……ウエポンマスターは魔法を使えないと思われているが……実際は違う……。このように、武器を魔力だけで作り出せる……。恥ずかしい話だが、俺はまだ短剣程度しか作れない……。だが、これで勝負を決める!」


 マジかよ。ウエポンマスターにそんな能力があったとは。

 だが、この一撃で勝負が決まるのは確かだ。相手は毒を浴び続けすでに満身創痍。最後の力を振り絞って襲ってくる。


 今のオレに回避する能力は無い。

 ならば、その思いに答えるまで!


「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」


「おらあああああぁぁぁぁぁ!!」


 オレはハルトヴィヒがすれ違うタイミングでビンを振り下ろす。

 一瞬の交錯の末……ハルトヴィヒが吐血して倒れた。

 それと同時に、オレはドレスが一瞬にして切り刻まれ、下着姿をさらした。


「ハルトヴィヒさん。あんた、確かに強敵だったぜ。ここまで衣装をバラバラにされるなんて思ってもみなかったからな」



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