31着目 開催! 三大公会議!!
「うわぁ~。ここが帝都かぁ~!!」
街に入るなり、エルマがはしゃいだ。
それに比べ、オレとローザは微妙な表情だ。
何せここは、オレとローザが追放された、各々の実家がある帝都アイレンシュテットなのだから。
なぜここに来たかというと、三大公会議が開催されるためだ。
三大公会議とは、アイレンベルク帝国の三人の大公と皇帝が顔を突き合わせて話し合う、この国にとって最も重要な会議だ。
以前リリエンタール大公が話した失態が起こったのも、この会議での事だ。
三大公会議が開催される理由は、もちろん世間を賑わすヴェラセネ・キンダーに対する対策のため。
これまで各大公領の中心地である都市全てがヴェラセネ・キンダーにより事件を引き起こされており、いつ帝都で騒動を起こすかわかったものではない。
最悪、国家転覆と言うことも考えられる。
それらを未然に防ぐため、急遽三大公会議を開くことになったのだ。
オレ達三人もリリエンタール大公に着いていく形で帝都に向かうことになった。
一応リリエンタール大公の帝都での宿泊地兼仕事場となる屋敷があり、帝都に滞在中はそこにずっと居ていいことになっている。
ここはオレとローザにとって因縁がある実家がある街だし、ずっとリリエンタール大公邸に引きこもっていようかと思ったが、エルマのはしゃぎっぷりを見るに一度は街に出ないといけないかな、と思っていたりもする。
~リリエンタール大公side~
数日後、アイレンシュテットの中心部にある城の会議室で三大公と皇帝が集まった。
この城は当然、皇帝とその家族の生活の場にしてアイレンベルク帝国の政治の中枢として機能している。
「ではこれより、三大公会議を開催する!」
美しい女性が会議の開催を宣言した。
この女性こそ、アイレンベルク帝国の現皇帝『アレクサンドラ・アイレンベルク五世』。その美貌により若く見られる事が多いが、実は四十五歳である。
皇帝として政治手腕や交渉術に長けており、さらに自身のジョブ『指導者』によってかなり高いカリスマ性を持ち合わせている。
正に、皇帝になるために生まれたような人物だ。
「今回の議題は、昨今帝国内で活発な活動を行っているテロ組織『ヴェラセネ・キンダー』に関する現状の確認とその対策についてである。まずは現状について、アルテンブルク大公、報告を」
「はい。ヴェラセネ・キンダーは活動宣言からリリエンタール大公領のリリエンシュタット、我がアルテンブルク大公領のアルテンブルクで大きな混乱を起こすほどの活動を行っております。また不確定ながら、シュピーケルマン大公領のシュピーケルンにおける事件もヴェラセネ・キンダーが関わっているのでは無いかとの疑いがあります」
「ご苦労。では、各々ヴェラセネ・キンダー対策に何か意見を述べて欲しい」
すぐさま意見を表明したのは、現状報告を行ったアルテンブルク大公だった。
「ここはやはり、取り締まりをさらに厳しくするべきだと思います。怪しい人物をひたすら捕まえていけば連中に対する圧力にもなりますし、バカな行為を行う意欲を失わせる効果も期待できます」
しかしリリエンタール大公は、それに疑問を呈した。
「『怪しい連中』とアルテンブルク大公はおっしゃいましたが、私はあまり効果が無いと思います。ヴェラセネ・キンダーは意外と慎重な部分が見受けられますし、簡単に捕まるような輩とは思えませんね。それに、ああいう組織に参加すると言うことはそれなりに覚悟が決まっている連中だと思いますので、犯罪抑止効果は限定的になるかと」
「おや、取り締まりの厳格化を支持したのはリリエンタール大公だと、父が申しておりましたが?」
「あの、少しいいでしょうか?」
言い合いになりそうになったその時、シュピーケルマン大公が声を上げた。
「我が領内にあるシンクタンクの報告によると、取り締まりの厳格化は短期的には効果がありますが、長期にわたって実施すると返って悪影響を及ぼしかねないそうです。そうだとすれば、アルテンブルク大公が実施されている政策はすでに賞味期限切れになっていますね。
加えて、アルテンブルク大公領では監獄の過収容が問題になっていたそうではないですか。この状態では監獄の更正機能が麻痺し、より凶悪な犯罪者となってしまうそうです。事実、アルテンブルク大公領内の監獄もそうだったんじゃないですか?」
「なるほど。シュピーケルマン大公がそうおっしゃるのであれば、信憑性は高い。であれば、私がかつて発言した主張も、すでに期限切れになっていますね」
シュピーケルマン大公はリリエンタール大公を擁護するかのような発言をしたが、これは以前の借りを返すためだ。
彼はリリエンタール大公がシュピーケルンに滞在しているとき、大事件を起こされてしまった。しかもリリエンタール大公の嘱託冒険者であるレオナ達三人の活躍で事件の終息の鍵を見つけて貰ったも同然な状況だった。
そこで今回の三大公会議に合わせシンクタンクに指示を出し、リリエンタール大公の援護射撃になるような研究をさせていたのだ。
これにはアルテンブルク大公にとって大打撃となったが、若いとは言え彼女も大公。やられてばかりはいなかった。
「シュピーケルマン大公のご意見はわかりました。しかし、今回の議題はヴェラセネ・キンダーへどう対処するかということ。当然、その案はお考えになられているのでしょうね?」
「とにかく情報が必要です。問題は、どうやって情報を得るかですね。諜報員を派遣するにしても、どこに派遣したらいいか検討を付けなければ……」
「それなら、商人の情報網を使いましょう。彼らの情報網は凄まじいものがあります。私のツテを使って声をかけ、怪しい情報を集めるとか……」
情報の集め方について議論しかかった所で、突如皇帝が笑い声を上げた。
「ハッハッハ。なるほど、情報。確かに重要だ。そしてそれを聞いて手っ取り早く足がかりを作る作戦を思いついたぞ。しかも、ヴェラセネ・キンダーの活動で不安が渦巻いている帝国臣民を鼓舞できるという、一石二鳥な作戦をな」
そして皇帝は、高らかに宣言した。
「『第一回帝国武術大会』の開催を宣言する!!」




